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孤独なき社会へ 産後ドゥーラが母親を救う

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出産年齢・親世代の高齢化で 一層高まる“産後ケア”

塚原さんがサポートを行う母親の多くは30代後半〜40代前半。出産年齢が上がるにつれ、産後の身体の回復には時間を要すという。「産後の疲れが拭い取れないと、どこかでひずみが必ず出る。最悪の場合、赤ちゃんが可愛いと思えなくなって自己嫌悪になり、その結果、産後うつを発症したり、虐待に繋がることも。まずは母親の身体が満たされることが何よりも大切。少なくとも産後3週間は家のことを任せて、健康な身体を取り戻すことだけを考えて欲しい。母親が満たされることで育児はもっと楽しくなるから」。

出産は命をかけた大仕事。見た目にはわからなくても、身体は大怪我を負ったのと同じ状態だ。胎盤が剥がれた後の子宮壁は大きく損傷。加えて、後陣痛や悪露、授乳・抱っこによる肩こりや腱鞘炎など、満身創痍の状態から育児はスタートする。さらに、ダメージを受けているのは身体だけではない。妊娠中に分泌されていた大量の女性ホルモンが出産により一気に減少し、急激なホルモン分泌の変化によって心も不安定になるのだ。

塚原さん自身、産後の生活に苦労した。「2人目が生後1ヶ月で風邪をひき、入院することに。完全母子同室でお世話につきっきりになり、疲労でお乳が出なくなった。なんとか退院して自宅に戻ったものの、銀行員の夫は激務で毎日午前様。週末は接待ゴルフで全く家におらず、実母は体調を崩していて頼れない。再び風邪をひかせてしまったらどうしようと、買い物に行くのも躊躇うような状況。毎日生活を回すのがやっとで、今思い返すと完全にワンオペ育児だった。『いつになったら楽になる?』と泣きながら夫に尋ねたら、『仕事はこれからますます忙しくなるよ』と返ってきて、もう限界だと思った」。

日本には“産後の床上げ”と呼ばれる風習がある。母親は布団を敷いたままにして赤ちゃんのお世話だけに集中し、家事は気にせずゆっくり休むように、という習わしだ。農業が日本の中心産業だったその昔、産後すぐに農作業を手伝っていた女性の身体が回復せず、体調不良になる事例が多かったことから、産後3週間程は身体を休ませる期間として“床上げ”が生まれたとされる。

かつては二世帯・三世帯が一つ屋根の下に暮らし、様々な大人が母親の代わりに家事・育児を行うことが可能であった。しかし、核家族化が進み、両親も現役で働いている、もしくは親が高齢で産後にサポートできる余裕がない、近隣に頼れる親族がいないという家庭は増えている。

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