「フィットネス」自体をアップデート
続いて行われたのは、PelotonのDara Tresederさん、TwitchのDoug Scottさん、Snap Inc.のJeremi Gormanさんとのパネルディスカッションが行われました。
Pelotonは、自宅用フィットネスバイクを販売する企業ですが、ポイントは、定額制でさまざまなフィットネスコンテンツを配信している点です。自宅でエクササイズしたい生徒と、先生のマッチングを図るという意味では、Tinderのカテゴリー違いの事業と言ってもいいかもしれません。
2011年創業の企業ですが、コロナ禍で利用者数が増加するなど、ビジネスの成長を加速させています。そして、その成長に満足することなく、フィットネス事業を再定義しようとしているようです。つまり、フィットネスは従来、運動やその支援をするサービスでした。しかしPelotonは、フィットネスのユーザーコミュニティーの組成までをビジネスの目的にすることで、「フィットネス」自体をアップデートしようとしているのです。
その具体的な例として、直近で話題になったのは、2020年11月、人気歌手のビヨンセと複数年にわたる契約を結んだことがあります。Pelotonは彼女の楽曲を使用したオンラインエクササイズ講座を配信したのですが、これは単なるコラボレーションにとどまりませんでした。毎秋開催されるHBCUs(歴史的黒人大学)のホームカミングに合わせて実施されたからです。さらにPelotonはHBCUs10校の学生に2年間にわたる会員権を付与したほか、採用においても各校との連携を強めるとしています。
ホームカミングは、卒業生が母校を訪れ、教員や同窓生、在校生と交流を深める行事です。日本の大学でも開催されていますが、南北戦争以後、主に黒人のために創設された大学群であり、黒人コミュニティのシンボルのひとつであるHBCUsにおいては、一層重みを増します。
フィットネス事業は、もちろん健康や審美の追求という側面はありますが、Pelotonは、人々がフィットネスにコミュニティ、他人とのつながりを求めていると考えているようです。Peloton創業者でCEOのJohn Foleyさんは以前講演で、「人々がかつて日曜日に教会に集まったのと、インストラクターの下に会員が集まってフィットネスに励むようすには類似性がある」と話しています。コロナ禍においてHBCUsにこうしたサービスを提供するのは、人と人とのつながりを重視しており、オンラインフィットネスサービスに単に健康以上の価値を見出しているからではないでしょうか。
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