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sioと博報堂ケトル、新会社「シズる」で新しい食文化をつくる

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代々木上原のミシュラン1つ星店「sio」のオーナーシェフ・鳥羽周作氏が4月26日に立ち上げた食のクリエイティブカンパニー「シズる」。博報堂ケトルをクリエイティブパートナーとして迎え、「料理は、クリエイティブで、もっとおいしくなる。」をコンセプトに、“飲食”と“広告”という業界の枠を超えたチームだ。同社が生まれた背景や事業戦略、会社が目指す未来について聞いた。

(左から)シズる代表取締役社長兼「sio」オーナーシェフの鳥羽周作氏、博報堂ケトルの皆川壮一郎氏・井手康喬氏。

会う人を全員仲間にする

——まずは、みなさんの「シズる」での役割について伺えますか。

鳥羽:僕は代表取締役を務めていますが、営業部長という感じです。「この人たちと仕事がやりたいな」と思ったら先陣切って会いに行く。あとは「こういうことをやりたい」ってアイデアをたくさん出して散らかす役目というか、みんなを困らせる役を司っております(笑)。

井手:鳥羽さんは周りに与える影響力が本当に大きいですよね。案件が2〜3日に1件ペースで入ってきます。多い日だと1日に2〜3件入ってくることも。

皆川:「会う人を全員仲間にする」っていうのが口癖ですもんね。

僕は、鳥羽くんとは“服好き仲間”として個人的な付き合いが長くて、ずっと一緒に仕事ができないかという話はしていたんですが、今回クリエイティブディレクターとして「シズる」に参画することになりました。

シズるでは、日々の会話からアイデアやプロジェクトが生まれていくので、それらを整理しながら、もっとシンプルに世の中に伝えるにはどうすればいいのかを考えたりする役割を担っています。

鳥羽:皆川くんは会社の舵取り役。僕らが前のめりになったとき、「ちょっと1回立ち止まろうよ」「本当にそれでいいのか」って言ってくれる貴重な存在です。そして皆川くんからつながったのが井手くん。

井手:僕は博報堂ケトルでクリエイティブディレクター兼コピーライターをしていますが、シズるでは思いを言語化していくコピーライターを担当しています。

鳥羽さんは元々論理的な考え方をするので言語化もすごくうまいんですが、それでもコピーライターの視点が役に立つみたいで。みんなの感覚的な部分を言語化したり、体験をつくる際に言語化して共有したりしています。

飲食と広告業界が“乳化”していく

——コロナ下で「シズる」を立ち上げた経緯についても教えてください。

鳥羽:僕は今まで「sio」をはじめとするレストラン経営に軸足を置いてきましたが、コロナ下で、予期せぬ事態で売上が落ちれば会社のダメージにつながることを身をもって感じました。それなら経営の軸足をストックビジネスやEC サイト、プロデュースといった事業を展開する会社に置いて、ショーケースや体験の場所としてのレストラン事業を持つべきじゃないかと考えたんです。

1人で動くことの限界も感じていたので、次のチャレンジはチームでやろうと決めました。コロナ下で多くの人が食の尊さを感じているタイミングだからこそ、食の体験価値を高めるにはクリエイティブが得意な人たちと組みたいと思って、友人の皆川くんに連絡しました。

皆川:僕も井手くんも飲食業界の広告制作/PR経験はありますが、クライアントが完成させた商品に対して、後付けでコミュニケーションを設計するケースがほとんどでした。パッケージやネーミングといった佇まいだけではなく、ブランドや商品そのものの開発段階から加わることでさらなる話題づくりができるかもしれないという思いがずっとありました。

一方で、飲食のプロではないので、原価や味付けといった開発の部分は僕らには全然分からない。でも、鳥羽くんと一緒なら、商品の中も外もシームレスにつくっていけるなと思い、博報堂ケトルがクリエイティブパートナーとして参加しました。実際に「シズる」が始動して、商品開発における鳥羽くんのひらめきや瞬発力に感銘を受けています。

井手:料理人は体験そのものを提供できるけど、広告は真逆で、実物を届けられないからこそ表現で伝えようと頑張ります。実物を提供できる人たちと、実物がない状態で表現を伝える人たちが組むことで、足りない部分を補い合えるってすごい強みだなと感じますね。

鳥羽:「シズる」をスタートしてから、2人の食に対する理解もどんどん高まっているし、僕も広告のことが少しずつ分かるようになってきて。軸足はそれぞれあるけど、一緒に過ごすことで、リテラシーや解像度が高まり境目が“乳化”していくから、チームとしてめちゃくちゃ強いんですよ。食を多角的に捉えられるから隙がない。

「シズる」は、多様な人材で食を多角的に捉えられる点が強み。

次ページ 「「それ、シズってる?」が合言葉」へ続く