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リアルな顧客接点の重要性がコロナ禍を経て明らかに

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グッデイ×ルクア大阪

コロナ禍を受け、店舗を持つ企業は、接触機会の減少などの感染防止策を講じつつ、新たなチャレンジを続けている。これまで消費者ニーズの変化に敏感に対応し続けてきた小売2社が、「店頭体験の向上とオペレーションを両立させる販促の現場」をテーマに議論。コロナ禍における本部と現場の連携の状況とその中で新たに生み出された顧客体験を通し販促の現場を説明し、これからの店舗について語った。

グッデイ
1978年、福岡県大野城市にホームセンター・グッデイ1号店を出店。福岡や大分、佐賀、熊本、山口の各県など、北部九州を中心に64店舗を運営する。データ分析やAIを仕入れの際などに活用していることでも知られ、エンジニアなど専門人材の育成に注力。近年は他社にデータ活用のノウハウを指南する事業も展開している。

ルクア大阪
JR大阪駅の大規模リニューアルを機に、2011年に開業した複合商業施設。2015年には既存の「ルクア」に加え、旧JR大阪三越伊勢丹を衣替えし「ルクアイーレ」が開業した。テナントは約400店舗。ルクアは20〜30代の働く女性がメインターゲット。ルクアイーレはファミリー層も取り込む。百貨店やファッションビルがひしめく梅田地区で有数の集客力を誇る。

デジタルツールで情報共有

—コロナ禍では本部も現場も直接会ってコミュニケーションをする機会が減ったと思われますが、皆さんは本部と現場の連携をどのようにしていますか。また、コロナ前と現在とで変化したことや気づきなどお聞かせください。

河原畑:JR大阪駅に隣接した大型商業施設「ルクア大阪」の運営を担当しています。会社自体は小さな組織で現場の中に本部があるような組織のため、当社の場合は本部と現場の距離は感じません。一方で、出店いただいているテナントは東京の会社が多いため、そこでの本部と現場の距離はあります。

コロナ禍で私たちが留意しているのは、各社の状況が変化しているので、オーナーや経営層も含めて、皆さんとのコミュニケーションをより密にして、どういうかじ取りを考えておられるのか、今まで以上にコミュニケーションを心がけています。さらに現場で起こっていることをオーナーにお伝えするなど、テナントの本部と現場をつないでいく役割も担っています。

市川:福岡県ほか北部九州をメインにホームセンター「グッデイ」を店舗展開しています。コロナ禍の前から当社はGoogleのビジネスツール(Google Workspace)を利用して本部と店舗の情報共有を即座にできる体制を整えてきました。われわれの店舗がある九州は自然災害を受けやすい地域です。そういう時もどういう状況か、スプレッドシートを立ち上げて、情報を全員で共有しています。

またコロナ以前は社長を中心に各店舗に頻繁に視察に行き、店舗の状況を把握していたのですが、コロナ禍ではそれはかなわなくなりました。その場合もGoogle Meetを使って各店舗とコミュニケーションを図っています。

店頭の役割はコロナ禍でも健在

—「三密を避ける」「営業時間の短縮」など、お客さまの行動が制限される中で、購買における顧客の体験価値を上げるために、どのような工夫をしていますか。

市川:コロナ禍で在宅時間が増えたことで、「DIY」や「園芸」を楽しむ傾向が見られました。そこで店舗でも園芸を含めて「DIYを学ぶ・楽しむ」ツールを準備し、お客さまに「DIY」を体験していただけるコーナーを設けました。店舗にはガーデニングに詳しいスタッフがいますので、「園芸にはこういう土を使うといい」などアドバイスを差し上げる場面も見受けられました。「学べる場」はとても大事だと思います。そういう場をもっと提供したいと思っています。

「エデュテインメント」に活路

河原畑:今までお客さまは買い物自体がレジャーのように楽しく感じられて、われわれはその場を提供するだけでよかったのですが、現在では買い物を楽しいとそもそも思っている人、思うシーンが減ってきて、逆に買い物が難しいとか、面倒だとか、そうしたネガティブな感情を持つ方が増えてきたという印象を持っています。コロナ禍以前から感じていたことですが、非常に根深い課題だと感じています。「面倒くさいものはネットで買おう、アレクサに発注してもらおう」と、そういう時代になりかねないと危惧しています。

その課題解決としてわれわれが考えているキーワードは、1つは「エンターテインメント」、もう1つは「エデュケーション」です。2番目は先ほど市川さんが「学ぶ場」と話していたことと通じるかもしれませんが、現在、商品はあふれるほどあって、情報もネットで見れば無限大にある状況で、生活者はどれが正しいかよく分からない、まるで迷子のようになっている気がしています。

そこで、お客さま自身にまずは自分のことを知っていただいて、例えば自分の体形に合う洋服はどんなのかなど、自分を知っていただくことと、商品の素材だったり、つくり手の思いとかを知っていただくというような「学ぶ場」が重要になると思います。

「エンターテインメント」は思わず参加したくなる、本能的にやってみたいということだと思いますが、われわれとしては「エンターテインメント」を提供することにより、お客さまに店舗に来ていただきたいというのが本音です。

実はあるテナントが、店頭にある「ガチャ」を回して、出てきたカプセルに書かれたソースをパスタにかけるというイベントを催したのですが、食べたいものが食べられないリスクがあるにもかかわらず、大盛況でした。オフラインにはそういう発見、非合理、何が飛び出すか分からない「エンターテインメント」の提供が可能で、お客さまはそれを求めていらっしゃるというのを再認識した事例でした。

ほかの人から聞いた言葉ですが、「エデュテインメント」という「エンターテインメント」と「エデュケーション」を合わせた造語があります。お客さまに楽しんでいただきながら、学んでいただく、そういうイメージが生まれるいい言葉だと思いました。

—本記事の続きは月刊『販促会議』6月号(5月1日発売)に掲載しています。

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グッデイ
営業本部 営業政策推進室 室長
市川峰裕(いちかわ・みねひろ)氏

1982年、伊勢丹入社。MD統括部ベビー子供用品部商品部長、海外統括部マレーシア伊勢丹営業本部長、伊勢丹浦和店営業統括部長、札幌丸井三越(出向)営業本部長などを経て、2018年退社。同年グッデイに入社し現職。売出計画の策定と、チラシからLINEクーポンなどのデジタル活用に至るまで販促施策の推進を担う。

 

JR西日本SC開発
ルクア大阪事業本部 営業部次長
河原畑俊一(かわらばた・しゅんいち)氏

2001年西日本旅客鉄道(JR西日本)入社。広島駅ビルでの勤務などを経て、2008年からルクア開業に向けたマーケティング、テナントリーシングに携わる。2011年のルクア開業後は、営業担当としてテナントの営業サポートやリニューアルに従事し、2016年からはルクアおよびルクアイーレの営業統括に。2017年から現職。