信頼できるデータ基盤を組み上げるステークホルダー全体の協業が理想

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テレビ広告の出稿において、いま様々なデータの活用が可能になっている。フジテレビで長年デジタルデータの活用に携わってきた、久保木氏に話を聞く。

フジテレビジョン
編成制作局デジタルマーケティング
センター局長職兼局次長
久保木準一氏

1990年フジテレビに入社し、音声映像エンジニアとして番組制作に従事。その後技術局・編成制作局・営業局などにおいて、データ放送・インタラクティブサービスなど主にデジタル関連の業務に長年携わる。2021年より現職。

 

Q. テレビCMの活用で、広告主企業がいま一番、課題に感じていると思うことは何でしょうか。また、その解決策は?

A. テレビとデジタルを統合したキャンペーン全体の効果測定が大きな課題です。

テレビの広告効果をどのように評価するか。特にテレビとデジタルを統合したキャンペーン全体の効果測定が大きな課題と考えます。

近年、テレビのインターネット接続率が、関東地区では半数に及ぶに至り、テレビは「オフラインメディア」から「オンラインメディア」に変貌を遂げています。インターネット同様に実数ベースのデジタルマーケティングに活用できるようになり、広告効果測定や分析、そしてプランニングの最適化を行えるようになる可能性を秘めています。

現在、データ放送を使ってネット接続しているテレビから視聴データを取得してマーケティングに役立てる研究を続けており、番組分析や番組宣伝への応用を中心に検討を進めています。この手法は、テレビCMを出稿いただいた広告主のマーケティングにも応用可能と考えています。

現時点では、個人特定をしないことを条件に、事前に同意を得ないかわりに事後に送信停止ができる「非特定視聴データ」を、系列局を含めて全国で収集しています。関東地区の視聴動向の全体像を把握するために、在京5社がそれぞれ収集している視聴データの統合も検討しているところです。

期待しているのは、広告主や広告会社が保有する顧客データや購買データと視聴データを連携させ、自社の顧客を考慮したプランニングや、CM視聴者の自社媒体への接触や購買行動への貢献を把握できるようになることです。今後は、プライバシー保護を考慮し、視聴者から同意を得て視聴データを収集し、あわせてメールアドレスも取得することで、データ連携の幅を広げたいと考えています。

データ連携には、放送局のメディアデータと広告主の1stパーティデータのプライバシー保護を確保する、いわゆるデータクリーンルームを整備することが必要不可欠と考えています。法的な課題や技術的な課題もありますが、DX時代のテレビ広告基盤として整備していく必要性を感じます。

テレビ視聴の実数データは、放送局以外の広告会社、コンサル企業や調査会社等がテレビメーカーログやパネルデータ等を利用してすでにサービス提供をされていますが、各社が利用するデータや、調査設計、分析理論はそれぞれ異なっています。まだ黎明期であることもあり、この分析手法の違いが各社の競争領域となっているのですが、各社の手法によってキャンペーン評価が異なってしまう点が大きな課題です。

米国ではMRC(MediaRatingCouncil)が視聴率調査の信頼性を監査する第三者機関として設立され、実数データの利用も含めて調査手法の信頼性を検証しています。このような先行事例を手本に、放送局のみならず、広告主、広告会社、調査会社など全てのステークホルダーの協業領域として、信頼できるテレビデータの利用基盤づくりを進めることが理想と考えます。

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