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いま、そこにあるCookie危機 手遅れになる前にコンテキストターゲティングの利点を整理

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来年内を予定しているグーグルのWebブラウザー「Chrome」でのサードパーティCookie対応の終了。しかし、実は事態はすでに変化している。先んじて規制した米アップルによって、iOSデバイスの配信量が激減しているのだ。いつか来る未来ではなく、目の前にある危機。さまざまな代替策が打ち出されているが、中でもコンテキストターゲティングにはどんな利点があるのか(本稿は3月24日に実施されたオンラインセミナー「cookie規制に対応できていますか? 今注目のコンテキストターゲティングとその効果とは」を再構成したものです)

[講演者]

日本オラクル
Oracle Advertising
Head of Agency Sales
細川 伸夫 氏

2002年オーバーチュア(現ヤフージャパン)に1番目の営業社員として入社。サービス開始から日本初の運用広告市場を牽引した後に退社。その後は外資系企業数社、及びTwitterJapanを経て、現在はオラクルの広告事業の営業責任者として勤務。ネット広告の黎明期から約20年間ネット広告に関わる。

 

PORTO
代表取締役
吉田 大樹 氏

広告代理店や印刷会社を経て2007年にサイバー・コミュニケーションズに入社し、プレミアムアドネットワークの商品企画及びセールスの現場マネージャーとして5年間従事。その後各種DSPを活用したトレーディングデスクサービス「Performance X」のセールス、SSP事業者との商品企画、媒体社様の収益最大化サービス「IPM」などのチームを歴任し、プログラマティック領域を中心としたデマンド・サプライの2つの領域を経験。2017年2月に新規自社プロダクト事業である「BEYONDX PMP」を立ち上げ。
VOYAGE GROUPとの経営統合を機に、2020年よりブランド広告主様向け向けアドプラットフォーム事業である「PORTO」の立ち上げに従事。2021年1月より現職。

 

着々と進む「サードパーティCookie」離れ

個人データはその本人の資産であるとして保護され、その利活用は適切なものであるよう整備が進んでいるのがここ数年の潮流だ。特にEU(欧州連合)では、データプライバシー規則違反として、制裁金が課されるケースも相次いでいる。

閲覧履歴からWebサイトをまたいだ追跡などを可能にする「サードパーティCookie」も、個人のメタデータとして規制が進む。

先鞭をつけたのは2019年の米モジラ財団のWebブラウザー「Firefox(ファイアフォックス)」だ。2021年には米アップルが「アプリの追跡透明性(App Tracking Transparency/ATT)」「高度追跡妨害(Intelligent Tracking Prevention/ITP)」といった機能を、iPhoneなどの基本ソフト「iOS」や、Webブラウザー「Safari(サファリ)」に導入した。

グーグルも、新たなアドテクノロジーの開発を続けながら、23年内にはWebブラウザー「Chrome(クローム)」でサードパーティCookieを使えなくする見通しだ。リターゲティング配信や、閲覧者を絞り込むオーディエンス配信のほか、コンバージョン計測も一部制限を受ける。

 

Cookieに代わるターゲティング手法

では、ほかにどんな広告出稿方法があるのか。グーグルはWebブラウザー内で完結する広告オークションや広告配信といった次の仕組みの開発を続ける。大手DSPによる共通IDの提唱や、コンバージョンでもサーバー間インテグレーション(S2Sコンバージョントラッキング)といった対応が取られている。

 
その中でも先んじて事例が出てきはじめているのが、「コンテキストターゲティング」だ。日本オラクルの細川伸夫氏は、「共通IDは導入に自社で保有するファーストパーティデータが必須。そのIDに対しての広告配信となるので、ベースの考え方としてはワン・トゥ・ワンマーケティングになる。自社にデータがあるか、(その使用に関しては社内の確認も必要となり)それですぐに試せるかという点に加え、そもそもリーチ(到達量)にも難がある」と指摘する。

一方、コンテキストターゲティングについては、「広告配信先となるWebサイトのコンテンツを解析して、指定の文脈を持つページに広告を出す技術。逆にリーチを広く取りたいときに向く。キーワードやコンテキストを設定するだけで、自社の顧客データを必要としないので、キャンペーン単位ですぐに導入できるのがメリット。弱みがあるとすればフリーケンシー(視認頻度)を指定できない点だが、ターゲットセグメントに対してできるだけ多く広告を配信することが目的なので、複数回視認はそこまで問題にならないことが多い」と話す。

コンテキストの解析、「攻め」にも「守り」にも

コンテキストターゲティングによくある誤解は、「“コンテンツ”ターゲティングではない」という点だ。「指定したキーワードそのものが入っているページに広告を出す」のが「コンテンツターゲティング」、「指定したキーワードそのものを含まなくても、内容として関連度の高いWebサイトに広告を出す」のが「コンテキストターゲティング」だ。

 
コンテキストターゲティングにおいて、Webサイトの文脈は設定されたキーワードをもとに、人工知能(AI)技術で分析。広告配信面を設定する。その技術を担うのはオラクルが2018年に買収した、英グレープショット(Grapeshot、現オラクル・コンテクスチュアル・インテリジェンス)だ。文脈分析が可能な言語は170を超える。中国語は繁体字と簡体字に対応、英語でも、米国英語だけでなく、イギリスやオーストラリア、カナダなど各国の英語を扱えるという。グレープショットの共同創業者には、1980年代からAIによる情報探索を研究するマーティン・ポーター博士が名を連ねる。キーワード解析技術の一部は、グーグルやIBM、マイクロソフトにも提供している。

 
こうした解析技術がもたらすもうひとつの利点は、「特定のWebサイトへの配信を避けられる」という点だ。たとえば、旅行商品の広告を、海外情報を掲載しているWebサイトに出す場合、その国の情勢などについて、タイミングやWebサイトのスタンスによっては、ネガティブな情報が書かれていることもありうる。そうしたサイトで広告を見ても好感触は得られない。あるいは、スポーツアクティビティ関連のサイトに出すにしても、事故などが掲載されているサイトに配信しても効果はないだろう。

 
「避けたいキーワードを一つひとつ設定するのは現実的ではない。また、当該のキーワードが用いられていなくても、ネガティブな内容である場合もある。文脈を判断して対応することで、ブランド毀損を避けることができる」(細川氏)

コンテキストターゲティング、その効果のほどは

では、コンテキストターゲティングの効果はどうか。マツダがオラクルのコンテキストターゲティングを用いたケースで、3週間で50万インプレッション中、従来型のオーディエンスターゲティングに比して、クリック率(CTR)がPCで10ポイント、モバイルで5ポイント上回った。クリックあたりコスト(CPC)も同比9%減になったという。

 
さらに、オラクルのコンテキスト解析技術を用い広告配信を行うPORTOでは、コンテキストターゲティングを実施し、さらにその広告接触者をCookieを用いて興味・関心を分析する検証を実施した。同社代表の吉田大樹氏は「Cookieによるターゲティングと変わらず、アウトドアやグルメ、食品などのセグメントで実施したキャンペーンで、それぞれの関心層により多くリーチしていたことがわかった」と話す。

 
「加えて、Cookieによるターゲティング配信では、報じられているとおり、日本のスマホユーザーで多くを占めるiOSに対してほとんど配信できなくなっている。9割以上がAndroid OS、Webブラウザーで言えば『Chrome』だった。iOSが最も少ないケースで3%を割り込むこともあった。一方、コンテキストターゲティングでは、iOSの比率が30%〜50%超と戻り、より広範な層へリーチできていた」(吉田氏)

 

サードパーティCookie廃止前の検証チャンスを活かす

もし予定どおり23年内に「Chrome」でもサードパーティCookieが使えなくなったら――iOS比率が極めて少なくなっていることからも、従来手法ではターゲティング自体が機能しなくなる公算が高い。

「まだ1年、2年続けられる、ということではなく、iOSに限っていえば、すでに機能しなくなっているといっても過言ではない状況だ」と吉田氏。

「ある意味でcookieが活用できる2022年に試行錯誤をくり返し、検証しておけば、23年にいざ制限が敷かれた際にも、パフォーマンス高く動くことができる。コンテキストターゲティングに関しては、ユニバーサルIDと比べても挑戦のハードルが低いこともメリットだ。自社商材がどんなコンテキスト、セグメントでの相性が良いのか、先行者利益があるうちにトライしておくべき領域ではないか」(細川氏)

 



お問い合わせ
日本オラクル株式会社 odc-info_jp@oracle.com
株式会社PORTO porto_ad@voyagegroup.info