メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×

「サウナツーリズム」認知の起点に 国立公園のサウナや熱波師移住

share

『広報会議』では、2022年10月号の特集にて、地域自治体の広報担当者に向け、アピールの切り口や情報の広げ方を取りまとめた「地域・自治体の広報」特集を掲載しています。今回は、昨今トレンドとなっている「サウナ」と地域の資産を掛け合わせた発信で誘客を進めている鳥取県に、話を聞きました。
※本記事は『広報会議』2022年10月号の転載記事です。

(左)平井伸治県知事による五塔熱子氏のCEA任命式。メディアで「地域おこし協力隊の女性、最高経営アウフギーザーに任命」などととりあげられた。
(右)PRサイト「ととのうとっとり」。イベント情報や周遊モデルコースを掲載している。
※アウフギーザー:熱波師のこと

鳥取県は2021年10月、「とっとりサウナツーリズム」を掲げて新たな魅力を打ち出している。日本で初めて国立公園内に設置されたフィンランド式サウナや日本有数の熱波師(ねっぱし)の移住もあり、多数のメディアに取り上げられるなど県内外で話題を呼んでいる。

海と山の豊かな大自然に囲まれた鳥取県の魅力を、サウナを通じて伝える観光プロジェクト「ととのうとっとり」。鳥取県の観光地をサウナとかけあわせ、周遊ルートの提案やイベントの開催、情報の発信などを行い、県外からの誘客を進めている。

プロジェクトを主導するのは、鳥取県庁の観光戦略課。活動を始めたきっかけを「県内の“サウナ環境”が整ったこと」と語るのは同課の課長補佐 竹中和彦氏。「アウトドアツーリズムが全国的に広がる中、琴浦町の一向平キャンプ場では日本で初めて国立公園内にフィンランド式サウナがオープンしました。もともと鳥取は温泉地に恵まれていることもあり“サウナツーリズム”を掲げるようになりました」。

また、取り組み推進に熱心な“サウナ好き”の県議会議員の存在も大きい。「先日も、サウナを核に鳥取県の食や水、温泉といった資源を掛け合わせる横断的プロジェクトについて県議会で提案されていました」と竹中氏。

熱波師移住でメディアが注目

PRサイト「ととのうとっとり」に掲載された2泊3日の周遊モデルルート。
多数のサウナスポットを巡り、観光グルメも楽しめる。

さらに、コロナ禍の2021年春に、サウナ界の人気熱波師である五塔熱子氏が豊かな自然と新天地を求め、「地域おこし協力隊」として鳥取県琴浦町に移住。熱波師とは、高温の蒸気をあおぐ職業で、サウナブーム再燃の火付け役といわれている。竹中氏は「五塔さんには、関東圏に比べるとサウナ熱が広がっていない地方でサウナを広める活動をしたい思いもあったようです」と説明する。

サウナ業界随一の人気を誇る五塔氏の移住により、プロジェクトも本格スタート。五塔氏が2021年11月にCEA(最高経営アウフギーザー※)に任命され、直後にPRサイト「ととのうとっとり」もオープンした。

鳥取ではプロジェクトの開始以降、県外からのサウナ利用者が増加傾向にあるという。サウナブームに沸く昨今、県外でも新たなサウナ施設が続々オープンするなどライバルも少なくない中で奮闘しているようだ。竹中氏はその要因を「五塔さんのCEAの任命やサイト開設時に、メディアに取り上げていただける機会が増えその流れにうまく乗れています。またサウナに特化した誘客では愛好家の“サウナー”しか訪れないため、地元の食や観光地まで楽しんでもらおうと幅広く取り組んでいるからではないでしょうか」と振り返る。

五塔氏は、鳥取県の豊かな自然にあるアウトドアサウナや温泉地のサウナと食を満喫しながら巡る、「ととのうとっとり サウナ旅」の周遊モデルルートも企画。五塔氏と首都圏から来た5名の女性サウナーがルートを巡る様子は、PRサイトと動画投稿サイトでも閲覧できる。また、BS朝日でサウナ愛好家から熱烈な支持を得ているテレビ番組『サウナを愛でたい』で五塔氏に密着したドキュメンタリーも放送。なおドキュメンタリーに先んじ4週連続で鳥取県のサウナ施設も取り上げられ、サウナーたちから反響が寄せられた。

「モデルルートは、五塔さんがテーマの提案から訪問先の選定や調整まで担当しています」と語るのは、観光戦略課 主事の吾郷章次氏。「今までサウナは、一部のサウナ好きが行く場所と連想されがちでしたが、女性を含め幅広い人が興味を寄せるような内容にしてくれました」と話す。

プロジェクトは県外のみならず、県民が自然の魅力を再発見する効果も生んでいる。吾郷氏は「水がいいという声はよく聞きますね。一向平キャンプ場のフィンランドサウナでも、水風呂は大山の天然水をかけ流しで使っているので、外気浴も含めて自然の力が人々の“ととのい”に一役買っているようです」とコメント。プロジェクトの浸透により、現在は自治体や企業で「サウナ部」が立ち上がり自主的なベントを開催するほか、サウナ設置を検討する温泉施設が増えるなど、民間でもサウナを使ったまちおこしの動きが出てきているようだ。

県内外でサウナへの取り組みが浸透し始めている中、竹中氏は「これからはサウナを核としたワーケーションなどに本格的に取り組んでいきたいですね。その延長線上に移住やサテライトオフィスの設置といった話題もあるのではないかと思っています」と話す。実際に官民連携のプロジェクトチームが生まれ、今後の取り組みについて話し合いがはじまっているという。

今後はPRサイトの拡充やチラシの作成、都心のサウナイベントへの出展などでさらなる周知を構想している。吾郷氏も「鳥取の魅力のひとつでもある水を、単に水風呂に利用するだけでなくSDGsを基軸としたイベントなどへ発展させていきたいですね。そうすればサウナの奥深さも伝えられるのではないでしょうか」と語った。

「プロジェクトにより、鳥取のサウナツーリズムは全国的に認知され始めている段階です。サウナイベントを支援する補助金も創設したので、今後は民間事業者がサウナを核とした活動を行う流れが生まれればと考えています」と、竹中氏は期待する。

図 サウナを核とした横断型プロジェクトマップ。
温泉や食、漫画など、県の自然・文化資産と連携
(出所/鳥取県議会で提案されたプロジェクトより)

DATA
プロジェクトの広報体制
鳥取県庁観光戦略課が主導しながら、民間企業も巻き込み発信。ホームページやSNSで情報を発信するほか、イベントへの出展などで認知を広げていく予定。

広報会議2022年10月号

 
【特集1】
各地の成功事例を解析
地域・自治体の広報


CASE1 広島県福山市
官民連携でWin-Winのニュース発信
バットマンの「ゴッサム・シティ」と友好都市に
 
CASE2 鳥取県
「サウナ×ツーリズム」認知拡大の起点に
国立公園のフィンランドサウナや熱波師の移住
 
CASE3 北海道河西郡更別村
「スーパービレッジ構想」実現のキーは村民の理解
広報誌や防災無線ほか地道な周知が重要に
 
CASE4 静岡県賀茂郡西伊豆町
電子地域通貨の普及率ほぼ100%
機能の簡便性と還元施策をいかに住民へ伝えたか
 
REPORT クラファンでの支援が転機
里山に起業家を育てる高専設立へ
認可前から支援者を集める広報
神山まるごと高専(仮称・認可申請中)
 
広報担当者のための企画書のつくり方入門 特別編
シティプロモーションのための
PR企画書を書きたい! ポイントは?
片岡英彦
 
【特集2】自治体ウェブサイトの実態調査
運用人数は?リニューアル費用は? ほか


CASE
島根県益田市/奈良県生駒市/茨城県桜川市/福島県昭和村
北海道八雲町/宮崎県西都市
 
など