【前回コラム】デザイナーと協働するデザイナー
クライアントの判断軸を捉え、共感性の高い提案を生む
事業やブランドをデザインするにあたり最も大切だと思うことの一つは、経営者の思考や判断軸をデザインしていくことです。
一つはクリエイター自身が経営者の価値観や物事の判断軸を理解し共感すること。もう一つは経営者にプロジェクトの方向性や世界観を、共感を伴う理解が得られるように価値観や判断軸をアップデートしてもらうことです。
ここでいう経営者とは、実際の経営者の場合もあれば、事業責任者の場合もありますが、プロジェクトの最終的な決裁権を持つ人を指しています。
クライアントの仕事を外部パートナーとして手伝う限り、提案物に対する最終的な決定権は当然クライアントにあります。
クライアントの経営者がどのような価値観や思考で提案物を判断しているのか、その判断軸を捉えることができない限り、クライアントが納得する提案を行うことはできません。
また、経営者自身の感覚が世の中の流れから遅れていたとしたら、採用されたものが社会や市場に受け入れられず、結果を伴うものにはなりません。
“対話”が思考のアップデートを促す
経営者自身がどのような価値観や判断軸を持っているのか、把握する手段は繰り返し対話をしていくことです。
対話の頻度と深度が深まれば、経営者が大切にしている考え方を知ることができ、クリエイターはその考え方や価値観と同期することで、同じ方向を見ることができます。そして、共感性の高い提案をするクリエイターはクライアントの信頼を得ることができます。これは、当てに行く提案をするということではありません。
一方で、経営者とはいえ、世の中の全ての領域、あらゆる世代の人々の価値観を完璧に把握できているわけではありません。
プロジェクトが進む方向性を経営者個人の価値観に委ねすぎてしまうと、経営者が個人的に満足する形にはなるかもしれませんが、社会的に機能しない形にもなります。そうならないためにも、クリエイターはプロジェクトを取り巻く今の環境を繰り返しインプットし、経営者に思考をアップデートしてもらう必要があります。