【CES2023】ロレアルとSONYの事例から考える「何のためのテックか?」(玉井博久)

世界最大規模のテクノロジーカンファレンスである「CES2023」が米国・ラスベガスで開催され、1月8日に閉幕しました。江崎グリコの玉井博久氏によるレポートの最終回となる本稿では、「CES2023」の大テーマにもある、テクノロジーの在り方について考えます。

“ひっそり?”とロレアルが興味深いプロダクトを発表

今年のCESで個人的に一番面白かった展示がロレアルです。発表した複数のプロダクトがCES2023 INNOVATION AWARDSを受賞していましたが、中でもHAPITAとL’Oréal Brow Magicという2つのプロダクトに大変興味を持ちました。

HAPITAは、特殊なアタッチメントとプログラムによって自動で口紅を塗ることができるプロダクトです。手と腕の動作に制限を持つ人々も不自由を感じずに美を求められるよう、デザインされました。ロレアルによると世界には5000万人もの人々が何らかの体の動作に制限を持っており、ここで制限される行動にはメイクをするといった日常的な体の動きも含まれます。そのような人々が他者の手を借りずに、不自由を感じることなく口紅を塗ることができるよう、このスマート口紅は生まれました。

ユーザーがHAPITAを利用するイメージを描いた動画。

もうひとつ発表されたのが、スマートアイブロウと呼べるプロダクトであるL’Oréal Brow Magicです。これまで希望の眉を描くためには、複数のメイクアップ商品を揃え、さらにメイクに時間がかかるだけでなく、一定レベル以上の技術が求められてきました。しかし、L’Oréal Brow Magicを使えば、複数の商品も時間も、そして特別なスキルも必要とせずに、あこがれの眉を手に入れることができます。しかも軽いので、片手で持って簡単に使うことができるのです。

使用ステップとしては、まずL’Oréal Brow Magicのアプリを開き、アプリを通じて顔をスキャンします。このアプリにはロレアルのModiface AR technologyが使われていて、ユーザーに最適なマイクロブレーディング(3Dアートメイク)やマイクロシェーディングなどのレコメンドを受けることができます。

このレコメンドを踏まえて、アプリ上で希望する眉メイクの形や厚さ、エフェクトを選択。あとはこのL’Oréal Brow Magicを眉毛にそってなぞれば、タトゥーを入れるように眉メイクを自動でしてくれます。このL’Oréal Brow Magicによる眉メイクは一般的なメイク落としで簡単に落ちるので、これまでのアイブロウと同じように使うことができます。

このL’Oréal Brow Magicは、先のHAPITAと違い、特に手と腕の動作に制限を持つ人々に向けて開発された商品ではありません。しかし眉メイクには一定レベルの技術や経験値が求められるため、誰もが簡単にすぐ上手にできるというものではありません。そういう意味では、HAPITAもL’Oréal Brow Magicも「誰もが簡単に美を求めることができる」というニーズに応えるプロダクトだと言えます。HAPITAも見方によれば、手と腕の動作に制限を持たない人々も使うことだってあり得ます。口紅を塗ることがどうしても上手にできないという人が使いたいと思うことも考えられるでしょう。

理想の眉メイクをだれもが簡単に実現できるL’Oréal Brow Magic。

次ページ 「インクルーシブが、テック戦略のコア」へ続く

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