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グッデイをけん引する「デジタル×リアル」戦略 継続顧客・ファン獲得を実現

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企業マーケティング担当者と、デジタルを踏まえた事業やブランド成長へのヒントを共有する場として、「SIMCリージョナル2023 in 福岡」が2023年7月28日に開催された。小売り・流通業界において重要性が高まる「リテールDX」について、嘉穂無線ホールディングスの岩橋貴樹氏がホームセンター事業のグッデイの事例に講演した。デジタル領域だけでなくオフライン領域である“リアル施策”を活用した施策展開の背景とその効果を発表した。

 

ホームセンター業界で独自性を築くマーケティング戦略

セッションテーマを「デジタルへの偏重はブランド価値向上にはつながらない?~デジタル化は当たり前としながら、Afterコロナでグッデイがリアル施策を重要視する理由~」として幕を開けた本講演。「コロナ禍を経て“リアル”な施策がとても大事になっているという話をしたい」と開口一番に講演の趣旨を説明した。

岩橋貴樹氏

嘉穂無線ホールディングスの岩橋貴樹氏

マーケティング施策の舞台である『グッデイ』は1978年創業のホームセンターである。北九州エリアを中心に64店舗展開、年商は約360億円を誇る。従来のホームセンターとは一線を画すおしゃれな店舗空間への改装などのイメージチェンジ施策により、2014年度から右肩上がりで事業成長を遂げている。岩橋氏は成長の要因として、イメージチェンジ施策を起点とする中長期計画を挙げた。「ホームセンターではなくて『グッデイ』になる」というビジョンから、競合ひしめくホームセンター業界にあって独自性のあるポジションを確立するべく、中長期計画は現在まで10年近くにわたり推進されている。

「『グッデイ』は過剰な価格競争には参加しない。それは商品づくりに携わる企業・人が心血を注いだものを適正価格で販売したい、という信念があるから。商品の価値を伝えることができればしっかりと利益は得られる。ただ、その戦略は時代に合わせて変化しないといけない」(岩橋氏)

業績低迷期に「ホームセンターではなくて『グッデイ』になる」という目標を掲げ、コロナ禍にはホームセンター業界の需要の高まりに合わせて従来のホームセンター業態に比重を置いた戦略を採用するなど、時代の変化に柔軟に合わせる戦略により約6年で売上金額は20%増加している。

 

DX・CXがコロナ禍における事業成長を後押し

適正価格・価値創造を打ち出す基本的なマーケティングと、時代に合わせて戦略を変化させる事業方針で成長を実現してきた『グッデイ』。そこにはもうひとつの要因としてDXが大きく関わっている。中長期計画の第3フェーズを「DX・データ整備」と位置付け、2019年以降に店舗ごとに登録・運用していたLINEアカウントの一本化、発注業務や在庫管理の効率化を図る業務のWEB化を推進した。岩橋氏は「DXは店舗スタッフ側にも恩恵がある。以前は発注・管理業務をするには店舗バックヤードに行く必要があったが、業務をWEB化したことで店舗スタッフが作業場所を問わず作業できるようになった。さらに約20万点の商品のデータ整理も可能になった」とその効果を説明した。

2022年以降の第4フェーズは「One to One」をスローガンに、顧客一人ひとりに『グッデイ』独自のLINE IDを割り振り、POSレジと連携させることで購入店舗や来店時間、購入商品など詳細な購買データ管理を実現した。LINE IDはCRMにも活用できるという利点も紹介された。

岩橋氏が「第4フェーズで一番力を入れている」と断言したのは、『CX(顧客体験)強化』と『人材教育』の2点である。『グッデイ』がCXを重視する背景には、マーケターである岩橋氏の見立てがあった。「コロナ禍を経て『信用・信頼経済』が加速すると考えた。顧客に対して誠実に商品・サービスを提供しなければならない時代が迫っている。価格競争や類似サービスではコモディティ化しやすく、『One to One』でできることとしてCXに着目した」(岩橋氏)

『グッデイ』のCXは多層的な施策で構成される。見込み客としては、一本化した『グッデイ』公式LINEは友だち数が約39万人と九州エリア4位の規模で誇り、趣向を凝らしたキャンペーン施策により友だち登録につなげている。岩橋氏は「キャンペーンそれぞれに反響があるなか、野球に関心のあるファミリー層をターゲットにした『始球式投球権プレゼント』には1日で4,000件近い応募があった。LINEの友だちは来店間隔が短い・購買回数2回以上といった傾向があり、優良顧客を獲得できている」とその手応えを語った。その他、約3万人の子どもが来場するワークショップイベントを開催するなど、売上だけでなく“未来の顧客”となる子ども層のファン獲得に取り組んでいる。

写真 セミナーでの岩橋氏
「物理的なリソースはコモディティ化できるが、接客はそれに当てはまらない」(岩橋氏)

 

CXの重要性が高まるなか強化していく“人材力”

デジタルとリアルを掛け合わせた施策で見込み客・来店客を創出する『グッデイ』は、店舗におけるCXにより継続的な来店・購買を実現している。その原動力が『知識豊富な店員の接客』だ。「物理的なリソースはコモディティ化できるが、接客はそれに当てはまらない」という岩橋氏は、GBPの口コミ管理や研修動画配信などで接客レベルの向上を後押ししている。接客と売上の相関性は、好成績店舗の接客方法を他店舗に共有する検証で実証され、販売計画達成率は222.2%を記録した。公式LINEの友だち登録にも接客は寄与するデータもあり、100円クーポンプレゼント施策として店頭で接客勧誘したところ多くの新規友だち登録につながった。

2023年度はウェルビーイング施策として福岡県糸島の空き家をリノベーションする『GooDay House(グッデイハウス)プロジェクト』が始動するなど、『グッデイ』では新たな施策が展開されている。それでも事業発展の大元にあるのは“人”である。「日本一ITを活用できる企業を目指す」という目標のもと、社員全員ITリテラシーの向上させる教育プログラム『GooDay Date Academy』、各部署の選抜メンバーが販売力を高めるデータ分析手法を学ぶ『マーケティング講習』などに力を入れ、『グッデイ』の新たな人材を発掘し企業への愛着心を醸成するメディア『Wire-res(ワイヤレス)』というWeb社内報を作成している。

最後に岩橋氏は「CXは今後ますます重要になり、リアルを見直す時期も必ずやってくる。企業のリソースが多数あるなかでどれを強化するべきか。その日を見越していま見直してみてはいかがだろうか」と参加者にメッセージを送り本講演は幕を閉じた。

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