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ヤンマーHDの共感されるブランドづくり デジタルを通じて伝える企業ビジョン

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共感醸成に必要なのは明確なパーパスとその根拠

1912年創業のヤンマーは、ブランド認知調査の結果、「社名も聞いたことがない」と答えた人が学生間で約5割もいたという事実に衝撃を覚えた。また、2016年にブランドステートメント「A SUSTAINABLE FUTURE−テクノロジーで、新しい豊かさへ。−」を制定、サステナブルな未来の実現のために農機具に留まらず、マリンビジネスや建設機械、エネルギーシステムなど多様な事業領域でビジネスを展開しているが、調査の結果「農業」のイメージが圧倒的に強く、実際の事業活動とのイメージギャップが大きいことも明らかになった。BtoBを事業の核とはしながらも、その活動が広く認知されなければ企業として将来的な発展を望むことはできない。こうした状況を変えるべく、「共感」を大切にしながらステークホルダーとの関係性構築を続けるヤンマーの取り組みを、同社の三田村有香氏が解説した。

写真 人物 個人 ヤンマーホールディングス ブランド部 コミュニケーション部 部長 三田村有香氏
ヤンマーホールディングス ブランド部 コミュニケーション部 部長 三田村有香氏

三田村氏は、ブランディング視点で共感という言葉について「共に感じること。一方通行ではなく、ステークホルダーを巻き込みながら、共につくり上げていくこと」と考え、ブランド価値向上のために共感醸成は必須であると話した。共感を醸成するために必要なこととしては、明確なパーパスとその根拠、そして納得感だと指摘。「ビジョンは企業が達成したい目標であり、あくまで主語は企業。しかしパーパスは企業の社会における存在意義、つまり社会に向けて働きかけていくことなので、自分たちだけで達成しようとするのではなく、いろいろな方を巻き込み、共に歩んでいくことが大事。弊社は特に若年層間での認知が課題なので、どうしたら若年層を巻き込んでいけるかを重視しています」と解説した。

ヤンマーは、4つの社会(1、省エネルギーな暮らしを実現する社会。2、安心して仕事・生活ができる社会。3、食の恵みを安心して享受できる社会。4、ワクワクできる心豊かな体験に満ちた社会)の実現を通じて、ブランドステートメントである「A SUSTAINABLE FUTURE」をつくり出すことをパーパスとしている。そしてそうした活動は「HANASAKA(ハナサカ)」と呼ばれる「人の可能性を信じ、未来に向けて挑戦を後押ししていこう」、という創業以来ヤンマーが大切にしている価値観によって支えられている。「この価値観は、社内はもちろん、社外にも向けたもの。パーパス実現のためにはあらゆるステークホルダーを巻き込んでいく必要がある。共に歩んでいきたいという思いを伝えるコミュニケーション活動を通じて、共感してくださる方が増えればこれほどうれしいことはありません」(三田村氏)

写真 イベント セミナー ヤンマーHDの共感されるブランドづくり

オウンドメディア「Y Media」での取り組み

実際のコミュニケーション活動でもパーパスとHANASAKAを主軸に構成しており、三田村氏は具体的な活動内容として二つの事例を紹介。一つ目としてWebコンテンツ「Y Media」を紹介した。「Y Media」は2016年に開設したストーリー形式のオウンドメディアで、ヤンマーと同じように「A SUSTAINABLE FUTURE」を目指す企業への取材も行い、これまでに約200本の記事を制作・公開している。近年では「A SUSTAINABLE FUTURE」の主体をヤンマーだけではなく、「私たち」と拡大し、様々なステークホルダーを巻き込み、共につくっていきたい、という思いを込めた。

「Y Media」を活用した具体的な共創アプローチ事例を3ステップで紹介。ステップ1では食とエネルギーに関する社会課題と日本の一次産業の課題を調査し、Y Medeiaでの取り組みをワークショップによって明らかにした。ステップ2では明らかにした課題領域で先進的な取り組みをする団体を抽出し、共にフィールドワークをすることを提案。この事例ではSDGs未来都市にも選定されている京都府の京丹後地区と共に活動することを決定。ステップ3でフィールドワークやその過程をストーリーとしてY Mediaで公開、その後振り返りのワークショップも実施し、読者が一連の活動を疑似体験し、持続可能な食糧生産について自ら考えるきっかけとなることを目指した。

これらの活動を3本の記事としてまとめ、公開した結果、通常は8割ほどという満足度が9割以上という高い満足度を記録したという。また、社内でもモチベーションの向上が見られたとのこと。「記事を見た社内の他部門から、自分たちの取り組みも紹介してほしいという依頼や一緒に取り組みをしないかという提案もあり、社内共創の場としても活用が進んでいます」(三田村氏)。さらには採用活動においても、就活生の多くが「Y Media」を見ていることもわかったという。

現在進行中、オリジナルアニメプロジェクトで目指すこと

二つ目の事例が現在進行中のアニメプロジェクト。ヤンマーが主体となって「未ル」というアニメが制作進行中だ。三田村氏はその目的を「アニメといえば日本文化を代表するもの。このアニメからグローバルなキャラクターアセットを創出し、認知度の回復と長期的なブランド価値向上を目指したい」と説明した。また、アニメを通じてパーパスへの共感者増加にも期待をしていると話した。

三田村氏は「未ル」について「ブランドPRムービーやコマーシャル的なものではなく、商業アニメとして本気で作ります。テーマはパーパスとも通じる『人と自然の対峙と調和』であり、主人公たちが自分の力で挑戦し、より良い未来をつくっていこうとするストーリーは「HANASAKA」とも重なります」と語った。

7月にはアメリカ、ロサンゼルスで開催され約35万人が来場した「Anime Expo 2023」に出展。アニメに登場するロボットのスタチューを設置し、パネルディスカッションも開催。現地で取材を受けるなど、多くの注目を集めたという。今後もプレスリリースの継続的な配信やSNSの開設などで情報発信を進めていく予定。テレビや雑誌での紹介も多数あり、「アニメ」を切り口に「ヤン坊マー坊」が再注目されという流れも生まれた。

最後に三田村氏は「私たちのブランディングは、パーパスや価値観をステークホルダーと共有し、巻き込んでいくことで、『A SUSTAINABLE FUTURE』の実現のために共に歩んでいく、ということ。そのためのブランディング・コミュニケーション活動に今後も取り組んでいきたい」と話し、セッションを締め括った。

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