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伊藤園が新商品のCMにAIタレント起用 「素敵な未来の自分」加齢の表現に

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伊藤園は9月4日、「お~いお茶」ブランドのカテキン緑茶シリーズの発売に合わせテレビCM「未来を変えるのは、今!」篇の放映を開始した。CM の冒頭、軽快にスキップをしながら歩いてくる女性は、AI を活用して生成された「AI タレント」だ。

 

購買層の拡大に向けた挑戦

9 月4 日に特定保健用食品の新商品「お~いお茶 カテキン緑茶」を発売した伊藤園。発売に合わせ、新CM「未来を変えるのは、今!」篇を公開した。近未来的な世界を年配の女性がスキップしながら向かってくる。手にはカテキン緑茶を持っており、画面にカテキン緑茶を近付けると、シーンは現在へ。最後は若い現在の女性がお茶を飲むシーンで幕を閉じる、といった内容だ。違和感なく馴染んで見えるため気付きづらいが、このCMのイメージキャラクターは、AIで生成されている。

今回のクリエイティブを担当した、伊藤園 広告宣伝部の上條裕介さんは、新CMについてこう語る。

「トクホのお茶は50 ~ 60 代向けの商品というイメージを持たれがちですが、この商品は、自身の健康が気になり始める30~40代にこそ愛飲してほしいと考えています。一方で事前の調査では、30 ~ 40 代はカテキン緑茶をまだまだ自分には遠いものと思っている人が多いことがわかりました。そこで、カテキン緑茶を『自分の未来のためのお茶』として認知してもらい、より若い層にも買ってもらえるようなCM にできないかと考えました」。

AI の使用については「あらかじめ決めていたわけではなく、現在と30 年後の自分を登場させ、『未来の自分が現在の自分にお茶を手渡しする』というCMの演出上、実在のタレントの方の顔を、加工して老けさせるという演出では共感を得られないと考えました。そこから議論を重ねた結果、AIを使うことが望ましいのではという話になりました」と話す。

AI 生成はAI model 社が担い、タレントの生成にはファッションやアパレル業界での活用がメインの、同社のツールを使用した。タレント生成から動画への適合、タレントを老化させる工程など、全てこのツールで実施した。

 

いかに未来感を出すかが制作の鍵に

生成するタレントのコンセプトは、CMを見た誰もが「健康的・活動的・進歩的・意志の強さ」を感じる人物像に設定。まずはAI タレントの画像を大量に生成し、そこからイメージと合った顔を選定するという流れで進行した。画像の選定時には、セクシャリティによらない、健康的で活動的な美しさを体現するため、顔の各パーツの造形を、制作チームの中で徐々に定義付けていった。その上で、AI で出力された数多の顔からその定義に近しい顔を選定。最初に若い状態の容姿を決定してから、それをベースにAI で加齢させた未来の姿を生成した。

生成の過程で特に気を遣ったのは、「AIタレントの現在と未来が同一人物に見えるようにする」「素敵な歳の重ね方の表現にする」という2 点だ。

商品の魅力を伝えるためには、「素敵な未来の自分」から渡されたお茶だと理解してもらう必要がある。そのため、限られた尺の中で「1 カット目が未来であること」と「その後に現れる女性が老年の女性と同一人物であること」が認識できるかが鍵に。まずは舞台が未来の世界であることを認識させるため、背景に使う画像もAIで数百枚ほど生成し、流線形で植物がのぞく建物などで「誰が見てもひと目で未来とわかるような背景」をつくった。さらに文字以外の要素でも未来から現在への切り替わりを伝えるために、高層ビルが立ち並ぶ現代的な風景を映すことで未来とのギャップをつくり出した。

現在の女性と未来の女性が同一人物だと伝えるため、目元のホクロなど共通点となる要素も追加。そのほか、生成したAI タレントが年を重ねた時に、どのような髪型をしていそうかなど人物像を考えながら、イメージを形成していった。

 

未来を意識して“ 今” 飲んでもらうために

老年の状態に対して、ユーザーに素敵な歳のとり方だという印象を持ってもらうために、乗り越えなければならない課題もあった。

老年の顔は若年の顔を元に生成したものの、当初は「目鼻立ちのはっきりした欧米系の顔になる傾向がある」「皺などが深く刻まれやすく、動画になった際に険しい顔の印象が残る」という、今回の企画主旨とマッチしないツールの特性があった。そこで、より日本人が素敵と感じる姿に近付けるために、制作スタッフ間で憧れる老年女性のイメージを挙げ、「笑顔が素敵」「グレーヘアが似合う」などの共通点を抽出。そのイメージに合わせてAI 生成で微調整を加え、さらにCM の本編集の段階でも、一部修正を加えていった。

今回のCM は全てをAI で生成したわけではなく、顔以外の部分は実在のモデルを起用して撮影。そこに生成したAI タレントの顔を当て込む、という方法で制作されている。これは、後ろを向いた人間の画像を生成することが苦手という、現在のAIの特性に起因する。

こうしてコンセプトに則って作成された、AI タレントのテレビCM。反響について上條さんは「SNS で多くの反応があった」と話す。

「公開時にはAI タレントを立たせるつもりではなかったのですが、SNS での反響をみると、『あの女性は誰?』といったような声や、AIのリアルさに驚くような反応が多くありました。今回は手法としてAIを採用したので、名前や今後の使用については決まっていませんが、今回AIを使うことでお客さまによりわかりやすく、カテキン緑茶の訴求ポイントを伝えることができました。これを機により多くのお客さまに『お~いお茶 カテキン緑茶』を手に取っていただくきっかけになればと思います」。

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