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コラム

BtoB企業のコピーって、どう書いたらいいですか?

「宣伝会議賞」受賞作から考える、BtoB企業のコピーライティング

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初めまして、writing style代表でコピーライター/クリエイティブディレクターの蛭田瑞穂と申します。月刊『宣伝会議』11月号で宣伝会議賞向けの「BtoB企業のコピーを書くための10箇条」を寄稿したのをきっかけに、このコラムを書くことになりました。ここではBtoB企業を題材に、コピーライティングや企業ブランディングについて深く掘り下げていきたいと思います。初回のテーマは「宣伝会議賞って何だろう?」。そもそも宣伝会議賞がどのような性質を持つ賞なのかを検証することで、BtoB企業のコピーライティングについてお話ししたいと思います。

BtoB企業が「宣伝会議賞」に協賛する理由って?

僕は宣伝会議賞の審査員を20年ほど務めていますが、審査員になって間もない頃、初めて名前を目にする企業の課題を審査する時に「こういう会社もコピーライターのために賞に協賛してくれているんだ。ありがたいな」と思っていました。協賛企業とはコピーライターの新たな才能を発掘する、いわばオーディション番組のスポンサーのような存在と捉えていたのです。しかし、それがとんでもない誤解、とはいわないまでも、宣伝会議賞の一側面だけを見ていたことに、のちに気づきます。

宣伝会議賞の募集要項に「コピーライターの登竜門」と書かれているように、宣伝会議賞に新たな才能の発掘という意義があるのは事実です。

しかし、企業が賞に協賛する理由はそれだけではありません。宣伝会議賞には協賛企業向けの説明資料があり、直近の資料を見てみると、「宣伝会議賞は伝わる言葉を発掘する賞」という言葉とともに、「どうすれば伝わるのかをリサーチする機会としてご活用ください」と記されています。つまり、企業は自社が抱える課題を解決する場として、宣伝会議賞を活用しているのです。もちろん、新たな才能の発掘やコピーライターにチャンスを提供するという意識も少なからずあるでしょう。しかし、第一義は自社の課題解決です。そして、BtoB企業ほどその傾向が強いと僕は思っています。

評価されるBtoB企業のコピーとは?

BtoB企業の課題において、どのようなコピーが評価されるのか、具体例として第60回の協賛企業である、三浦工業(事業者向けにボイラの販売やメンテナンスをおこなうBtoB企業です)が協賛企業賞に選んだコピーを紹介します。

僕らを知らないってことは、僕らの仕事がうまくいってるってことだ。

三浦工業のブランド企画室室長八木宏昭氏はコピーの選定理由を「『知られていない』その事実こそが当社の強みであることに気付かせていただきました」と述べています(月刊『宣伝会議』2023年4月号)。このコメントから三浦工業が宣伝会議賞を自社の課題を解決するために活用していることがよくわかると思います。

しかし、コピーライターの僕から見ると、このコピーは企業の課題を解決しているだけでなく、言葉の表現としての巧さも備えている、と思えます。そして、その巧さは「巧いコピーを書きたい」という意図から生まれたものではなく、企業の課題解決という目的に真摯に向き合った結果生まれたものである、とも感じます。僕はそこにこそ宣伝会議賞の本質があらわれていると思うのです。

じつは、三浦工業の課題は第60回のグランプリを受賞しており、それがこのコピーです。

  • 「なんでお湯出ないんだよ」
  • 「なんでお湯出ると思うんだよ」

企業目線と生活者目線という違いはあっても、ふたつのコピーが同じ目的に向かって書かれたことは明白です。先ほどの八木氏のコメントがグランプリのコピーに向けられていたとしてもまったく違和感はありません。宣伝会議賞の本質に踏み込むコピーは名うてのコピーライターである審査員をも唸らせるのです。

三浦工業の例が示すのは、宣伝会議賞(のとりわけBtoB企業の課題)における効果的なコピーライティングとは、コピーの表層的な良し悪しを超えたものであること。それは企業の強みや存在意義を巧みに伝え、企業が抱える課題を解決する力を持っています。そして、そのコピーライティングは賞を獲るためのテクニックではなく、実際の仕事でBtoB企業を担当した時にも役に立つ、きわめて実用的な技術なのです。

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