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IoT化で変わる家電の製品サイクル 購入後も顧客満足度を高める戦略、パナソニック

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検査済み再生品で循環型経済を推進

パナソニックは4月10日、昨年公開した国内BtoCマーケティング「新・商売の基準」の進捗状況を発表した。顧客満足度の向上と循環型経済の実現に向けた同社の取り組みを紹介。家電の寿命伸長や利便性向上につながるIoT機能やメンテナンスサービスを充実させるほか、同社監修の高品質な再生品「リファービッシュ品」を「Panasonic Factory Refresh」として展開する戦略も明らかにした。

写真 ドラム式洗濯乾燥機のヒートポンプユニットのメンテナンスサービス
ドラム式洗濯乾燥機のヒートポンプユニットのメンテナンスサービスを5月に開始予定

同社は家電をインターネットにつなぐことで、遠隔操作や稼働状況の可視化など様々なサービスを提供している。通常の家電は経年劣化で時間とともに顧客満足度が下がっていくが、IoT家電はソフトウェアアップデートによって機能の追加や向上が可能なため、購入後も満足度を高め続けることができる。

ドラム式洗濯乾燥機では排水時間のデータなどを参考に、排水フィルターの手入れ時期を通知。冷蔵庫では使用状況などの定期レポートを使用者に届けることで、効率的な節約につなげることができる。今年5月にはエアコン「エオリア」で、クリーニング時期を通知する新サービスを試験的に開始する予定だ。

IoT家電の接続者を増やすため、2023年に「IoT延長保証サービス」を開始。専用アプリにつなぐことで保証期間を1年から3年に延長できる。対象機種は7カテゴリーで約500品番。IoT家電とつながる顧客は2023年度末で約900万人となり、2024年度末までに1000万人の達成を目標に掲げる。

蓄積したデータを活用できる点もIoT家電のメリットだ。2020年モデルのエオリアは利用者の体感の好みをAIが学習して運転を最適化する「AI快適おまかせ機能」を搭載しており、蓄積したデータを2024年モデルの新機能に還元。顧客のフィードバックや操作履歴をもとに快適な温度をエアコンが自動設定する。パナソニックは地域に根差した街の電器店「パナソニックショップ」を全国に展開しており、蓄積したデータをもとに適切なタイミングで点検活動を行うなど、同社ならでは活用も可能だ。

購入後満足度を高めるため、エアコンクリーニングなどメンテナンスサービスも充実。5月からは、ドラム式洗濯乾燥機に搭載された空気中の熱を集める「ヒートポンプユニット」のクリーニングも開始する。熱交換器や乾燥風路のほか、各種フィルターなどの洗浄を1万6500円(税込)で実施。サービス実施後は2年間のアフターサービスも行う。

循環型経済の実現に向けた取り組みとして、2020年に家電のサブスクリプション(定額利用)型サービスを開始。理美容や調理家電のほか、テレビや空気清浄機などもラインナップ。徐々にカテゴリーを拡大しており、2023年度の契約件数は前年比で約2倍に伸長した。執行役員の宮地晋治氏は「『所有』から『利用』の消費スタイルに変化している」と指摘。サブスクを通じて新しい顧客との接点拡大につなげるほか、製品を市場で循環させることで資源を有効活用する狙いだ。

写真 パナソニック検査済み再生品(補償付)
「リファービッシュ品」の再生工程では、クエン酸洗浄や高圧スチーム洗浄などを実施。テレビは部品交換も行う

環境負荷軽減の取り組みをさらに強化するため、同社はサブスク契約や店頭展示を終えた家電などを自社で再生した「リファービッシュ品」を推進している。2023年12月にドラム式洗濯乾燥機と4K有機ELテレビのリファービッシュ品を1年保証付きで販売スタート。サブスクサービスでは、ヘアドライヤー「ナノケア」や卓上型食器洗い乾燥機を提供している。

リファービッシュ品への関心と信頼性の向上を図るため、4月10日からは「Panasonic Factory Refresh」という新名称で事業を展開。新たにポータブルテレビ、ブルーレイディスクレコーダー、ミラーレス一眼カメラ、冷蔵庫をラインナップしたほか、9月には電子レンジと炊飯器も追加する予定だ。

宮地氏は「経済産業省のCE(サーキュラーエコノミー)戦略に、日本企業として参画し貢献したい」と話す。社会貢献によって価値のあるブランドとして認知してもらう狙いで、今後、トレーサビリティーやハードの状況を管理するためのガイドラインなど、国と共同で仕組みづくりを推進していきたい考えを示した。

リファービッシュ品が普及することで製品寿命が延び、新製品への買い替えサイクルも長期化するとみられる。宮地氏は「新商品を作り続けることは使命だが、毎年販売することによる負荷もある」と話す。マイナーチェンジが減ることによって、技術者がより顧客満足度の高い製品開発が可能になるメリットを強調した。

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