NYでの実体験から見えるGUブランド、挑戦を促し多様性を楽しむ

写真 店舗・商業施設 「ジーユー ソーホー ニューヨーク店」

Photo: Niena Etsuko Hino

GUの海外初の旗艦店「ジーユー ソーホー ニューヨーク店」は、オープン当日から筆者がリサーチに出かけたオープン2日後の週末も、入店するのに列にしばらく並ぶくらいの人気。客層は、20代から30代がメイン。商品コンセプトや価格から言っても、まさにそこに当てはまるのは計算通りだろう。

その世代から外れている筆者だが、GUの商品を実際に所有している。そして、それを自分の想像以上にヘビーユースしているのだ。

一昨年、予期せぬ出来事で4ヶ月間日本に滞在することになり、その際にGUの商品を初めて購入した。もともとは短期間の出張だったため、持ってきた服が足りず、間に合わせ位の感覚で日常着の一部をGUで購入してみたのだが、驚くべきことに、その際に購入したアイテムは今でもニューヨークで着用している。

まず特筆すべき点は、リーズナブルな価格にもかかわらず、いまだに型崩れしていないこと。次に、トレンドを反映したデザインでありながら、2年経ってもそれなりに使えること。そして、筆者的にとって最も重要な点は、日本で購入したアイテムにもかかわらず、ニューヨークの街で着用しても全く違和感がないということである。

あくまでこれは、カジュアルウェアにおける基準としての分析だが、GUのデザインは、日本的な基準の作りの範囲にありながら、真面目すぎない。言葉を選ばずに表現すると、一般的な日本の製品にしては、完璧な作りではないことが、ニューヨークの多様で雑多な日常という雰囲気に見事に溶け込むのだと思っている。日本製の日本的なキチンと感とキレイさは、実は世界の国の街の中では、異様に浮き上がってしまうものなのだ。

また、筆者が購入したアイテムには、メンズサイズのMA1ジャンパー、メンズの白のワイドカーゴパンツ、スリーブレスのコンパクトなトップ、上下から開閉できるショート丈のニット、ヘビーウェイト生地の白のパーカー、白のレザーメッシュベルト、ブーツなどが含まれる。これらのアイテムは、それぞれ異なるスタイルにフィットし、筆者のワードローブに溶け込んでいる。購入する際には、どれだけ多様に着こなせるかを考慮して選んではいるが、その予想を上回る活躍を見せてくれている。

筆者の体感として、現状GUのアイテムは、ただの一時的な「トレンド商品」ではなく、シーズンを超えて長く着用できるスタイルを提供してくれている。トレンドは過ぎ去るものではなく、上手に取り入れれば次の時代背景を踏まえて着続けることができる。そして、そのシーズンのトレンドとの付き合い方は、自分の好みや自分に合うものを知るきっかけとして捉えることができる。GUのアイテムは、そのプロセスをサポートする「練習の場」として機能している。

筆者は仕事柄、服を選ぶ際の自分なりの厳しい基準を持っている。好みだけでなく、何がどのようにその人に合うのか、何の目的で選ぶのか、その人の立場はどうなのか、どのような場面で着用するのか、どのように着こなすべきかを常に瞬時に考えている。そして、その中で最もクリティカルな視点を持つのは、自分が実際に着る服に対してだ。

そんな筆者にとってもGUのアイテムは、ただの「間に合わせ」や「一時的なトレンド商品」ではなく、ニューヨークでの生活にしっかりと溶け込み、日常的に肩肘はらずに着用でき、気を使ったり遠慮したりすることなくどんどん活用する、なかなか気に入っているアイテムとして存在しているのが現状だ。

今回のGUニューヨーク旗艦店のオープンは、筆者にとって自分を一つの実験台に、2024年の現代におけるファッションやスタイルとGUとの関係を再認識する良い機会となった。GUが単なるファストファッションブランドにとどまらず、日常のスタイルを楽しむきっかけとなる存在であることを実感している。

今後の期待を述べるとしたら、サステナビリティへの働きかけをGUとしていかに表現していけるのか?だと思っている。特にグローバルブランドとして認知され、評価されるには、この点は不可欠なポイントであるためだ。

GUのグローバルな挑戦と成長

写真 店舗・商業施設 「ジーユー ソーホー ニューヨーク店」

Photo: Niena Etsuko Hino

ニューヨークのGUは、他のファストファッションブランド、H&MやZARAと比較されがちだが、商品アイテムの点数を少なくし、その限られたアイテム数で多くのコーディネートができることを提案している。店内には「MINI edit MAX」というメッセージが掲げられており、この考え方を強調している。

GUは、ファッションの入り口として、またファッションに投資してきた経験豊富な人々にも、時代のエッセンスを気軽に楽しめるブランドである。また、性別の垣根を軽やかに飛び越え、自由なスタイルを楽しめるのもGUの魅力だ。

パンデミックが明け、ニューヨークでは多様性・公平性・包括性(DEI)への意識が一層高まり、これが重要なスタンダードとなっている。約2年間のポップアップストアでの実績を経て、GUはそこで得た情報と体験を踏まえ、満を持してニューヨークに旗艦店をオープンした。この挑戦は、日本企業としてのグローバルブランド戦略において非常に興味深いものであり、GUが多様な市場でどのように成長していくのかが注目される。

GUのさらなる成長を目指して、ニューヨークと日本のグローバル本部が協働し、世界中の消費者に喜ばれるファッションと体験を提供していく。今後、DEI社会におけるGUのグローバルな挑戦を、筆者も一顧客としてのショッピングを通し、楽しみながら見守っていきたい。

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日野江都子(企業ブランディング・プロデューサー/ 国際イメージコンサルタント)
日野江都子(企業ブランディング・プロデューサー/ 国際イメージコンサルタント)

東京生まれ、ニューヨーク在住。フリーランスを経て、2004年、ニューヨークでリアル コスモポリタンを設立。日欧米亜合わせ数千人のハイプロファイリング・クライアント(日系企業や外資企業日本法人の経営層、政治家、財界人、セレブリティーなど)の包括的なブランディングを手がけてきた。施策提案など総合的なコンサルティングを実施し、高い評価を得ている。主な著書『仕事力をアップする身だしなみ 40のルール』(日本経済新聞出版社) 、『Premium Image Management for Men』DVD監修(SONY PCL)、『NY流 魅せる外見のルール』(秀和システム) など。

日野江都子(企業ブランディング・プロデューサー/ 国際イメージコンサルタント)

東京生まれ、ニューヨーク在住。フリーランスを経て、2004年、ニューヨークでリアル コスモポリタンを設立。日欧米亜合わせ数千人のハイプロファイリング・クライアント(日系企業や外資企業日本法人の経営層、政治家、財界人、セレブリティーなど)の包括的なブランディングを手がけてきた。施策提案など総合的なコンサルティングを実施し、高い評価を得ている。主な著書『仕事力をアップする身だしなみ 40のルール』(日本経済新聞出版社) 、『Premium Image Management for Men』DVD監修(SONY PCL)、『NY流 魅せる外見のルール』(秀和システム) など。

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