リブランディングにおける理想的なチーム、共感を生むPR戦略とは?

「デザイナーに発注しても思うような成果物にならない」「動画広告で商品の価値がうまく伝わらない」などと悩む広報担当者は多いのではないだろうか。

本記事は2024年12月に開催された「宣伝会議リージョナルサミット2024冬」から、注目セミナーをレポート。KKKKの河上 聡氏、スリーアンドコーの福森 正紀氏はクリエイティブ起点のリブランディングを、アトムストーリーの村上 賢太氏は購買行動を促すPR戦略について紹介した。

リブランディングにおけるインハウスの視点、プロダクションの視点

スターバックス コーヒー ジャパン、積水ハウスなどでインハウスのクリエイティブディレクターを務めた河上氏と、プロダクションでアートディレクターとして活躍してきた福森氏が対談し、ブランディングにおける理想的なチームの姿を紹介する。

河上氏は、スターバックスのロゴ変更やそれに伴うリブランディング、積水ハウスのリブランディングなどに携わった。「ロゴが変わるとコミュニケーションの形も変わる。お客様はブランドを五感すべてで感じるため、情緒的な価値を創るには、企業の取り組みを広告に閉じずに展開することが大事」と振り返る。

大阪のシンボル・道頓堀グリコサインのリニューアルや大関のパッケージ、あきんどスシローのロゴを手掛けた福森氏は、事例を紹介しながら「手に取る人や見る人が何を望んでいるか考えて、デザインに落とし込んでいる」と話した。

広告主とデザイナーの理想的な関係とは

デザイナーとしての経験が長い河上氏は、インハウスのアートディレクターとして入社した時にギャップを感じたという。「外部のクリエイターとの協業が出来なかった。伝えたことと成果物が全然違う」と振り返る。その結果、自分で作業をしてしまい、他のアートディレクターに比べてクリエイティブの数が少なくなった。それからデザイナーにきちんとアウトプットしてもらうために、オリエン資料をしっかり書くこと、特に広告キャンペーンに関わるクリエイティブブリーフは念入りに作成したという。

対して、福森氏は「成果物を出しても、ひっくり返されることが多々ある。ブランディングを見越したクリエイティブを作るが、その時の戦略と合わないことがある」とコメントした。

「広告主がデザイナーたちにアウトプットを指示する際、企業のミッションを整理することが大切。それぞれの担当部署でコミュニケーションのあり方が異なるので、精査できるように持ち帰る場所を創ることも大事です」と河上氏は話す。河上氏が積水ハウスを5年で退社したことに触れ、福森氏は「河上さんがいた時といなくなった時で会社が変わったのでは」と指摘。「『みんなで強くなる』を目標にクリエイティブブリーフを書く練習を全員で行った。社内の承認ルートも精査し、承認がひっくり返ることもないようにした」と河上氏。「いいアウトプットができるようになった時に担当の方がいなくなってしまう。経営に近い方とお話する機会があれば、ぶれることはない。クライアント側にデザインへの理解がある人がいるといいですね」と福森氏は話した。

広告主の立場、デザインの発注を受ける立場として、「各デザイナーに発注するときに、イメージだけでなくクリエイティブブリーフも言語化してほしい」と話す福森氏に対し、河上氏は「デザイナーが思うようなアウトプットをできないということは、伝わるオリエンができていない証拠です」と締めくくった。

共感を生むPR戦略とは

商品やサービスを物語形式で訴求する「ストーリーマーケティング」を得意とするアトムストーリーは、オリジナルのパラパラ漫画ムービーで企業のPR活動に携わってきた。村上氏は、「顧客の心に響くマーケティングを実現するには、深い顧客理解が不可欠だ」と話す。

人々の共感を得る作品を作るために、まず顧客の声を丁寧に拾い集める必要がある。村上氏はアンケートやインタビューのほか、SNSの投稿やハッシュタグから意見や感想を収集するソーシャルリスニングや競合他社の口コミも参考になると説明。また、ストーリー制作時のポイントとして、宣伝色を抑えて最後まで見やすくすること、自己投影しやすい主人公にすること、印象に残りやすい要素を加えることなどを挙げた。これらに注意することで、一方的にならないコミュニケーションとなり、受け手の感情を揺さぶることができるという。

成功事例で見る、ストーリーマーケティング

アトムストーリーは500社以上のPR動画を制作。その一つが丸富製紙のパラパラ漫画ムービーだ。丸富製紙は競合他社が類似商品を出していることから、自社商品のトイレットペーパー「5倍巻きロール」をどのように訴求すべきか、頭を悩ませていた。アトムストーリーは丸富製紙が優位に立てるセグメントを決め、長持ちという特徴から「交換頻度が少ない」「頻繁に買い替えないで済む」「家庭内でイライラすることが減る」といった新たな訴求ポイントを提案した。出来上がったムービーは、トイレペーパーを使い過ぎるうえに交換しない家族にイライラしている主人公が、5倍巻きロールのおかげでイライラしなくなるというストーリー。多くの主婦から共感を呼び、Twitterで累計1000回以上のRTと1500以上の「いいね」を獲得した。

専用庭付きマンションをPRしたい阪急阪神不動産の場合、ターゲットによりニーズが異なることから2本の動画を制作。ファミリー向け動画はコロナ禍で学校行事が大幅に減った子どもを元気づけようとする話に、シニア向けは植物が好きなパートナーを喜ばせようとする話に設定。2つの動画広告をSUUMOのWebサイトに掲載したところ、ユーザーの滞在時間が15%増加したほか、資料請求が1.2倍にアップした。

アトムストーリーはTikTokの運用やサポートサービスも展開している。園芸用肥料を扱うハイポネックスジャパンには、観葉植物の初心者にターゲットを設定し、「植物のある暮らし」や「育てやすい観葉植物の紹介」など宣伝色を抑えた動画配信を勧めたところ、4か月で100万回再生を記録した。村上氏は「顧客視点のコンテンツを作り続けることで、顧客との関係性がしっかり構築された。そのため、商品の動画をアップしても再生回数は変わらなくなった」と話す。

村上氏はSNSに生活実感が持てるエピソードを入れることで、ターゲットから共感を得て、シェアや拡散につながるという。「ブランド認知やエンゲージメントを高めるには、SNSもうまく活用することが重要」と締めくくった。

お問い合せ

アトムストーリー

住所:〒107-0062 東京都港区南青山3丁目1番36号 青山丸竹ビル6F
TEL:03-6822-2676
Mail:info-atom@atom-story.com
URL:https://atom-story.com/

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