生成AIが実現する業務効率化、年間約1,500時間短縮するツールなどの活用例

少人数で、狭く深く課題を解決するような研究会を所望する声が多かったことから宣伝会議による「テーマ別研究会」が2024年12月にスタート。本研究会では、最新トレンドや実務的なノウハウを学びつつ、専門家や同業者とのディスカッションを通じて具体的な解決策を見出すことを目的として開催している。
3月までの間にAI、ネクストメディア/SNS、リテールメディア、採用ブランディング、リード獲得のテーマ、さらにはBtoBマーケター、デジタルマーケターを対象とする会が予定されている。第1回となる12月18日は「AI研究会」と題し、ZOZOで生成AI活用推進を担当する川田心氏が登壇。ZOZOで取り組んでいる生成AIによる業務効率化について実例をもとに紹介した。
参加者からは「実務における生成AIの活用事例を学ぶことが出来、大変参考になった」「少人数のイベントで、講師の方、他参加者の方々ともお話しできたことが良かった」との声が上がった。

年間で約1,500時間の業務を短縮するツールも

ファッションEC「ZOZOTOWN」をはじめ、ファッションコーディネートアプリ「WEAR by
ZOZO」、自宅で簡単に足の3D計測ができるマット「ZOZOMAT」など各種サービスを企画・展開しているZOZO。2023年から全社横断で生成AIの業務活用を進めており、さまざまなツールの開発で業務効率化を図っている。約1年半で44件のツールを社内向けにリリースし、年間で約1,500時間短縮を見込むツールもあると語った川田氏。今回は、リリースした生成AIツールから8つをピックアップして活用事例を紹介した。

写真 人物 ZOZOで生成AI活用推進を担当する川田心氏

4分野で活用、1つめは「情報収集・分析」

ZOZOでは「情報収集・分析」「文章生成」「サイト運営」「社内業務」の4分野で生成AIを活用している。「情報収集・分析」で活用しているのが「IR情報の自動取得&要約」「週次トピックスの作成」「アプリレビューの分類」の3つ。IR情報の自動取得&要約における生成AIのタスクは「テキスト要約」。指定した企業のIR情報が更新されると、自動で情報を取得。ここまではシステムを使い、取得したPDFの内容を要約する作業にGPTを活用している。週次トピックスの作成における生成AIのタスクは「文章生成」。以前は売上管理などにおいて資料の数字から人が読み解いていたが、数字をGeminiに読み込ませて言語化することにより、把握スピードを上げるのに役立てている。今週のサマリ、ショップ別売上、カテゴリ別売上など項目ごとに言語化させていると川田氏は話す。アプリレビューの分類における生成AIのタスクは「分類」。アプリストアなどに投稿されるアプリレビューのデータをスプレッドシートに蓄積させ、GPTにより検索関連、梱包関連、支払い関連など事前に設定したカテゴリに分類させて、スプレッドシートに結果をグラフなどでわかりやすく表示させている。

写真 人物 ZOZOで生成AI活用推進を担当する川田心氏

「文章生成」ではSNS文章や記事タイトル&目次生成に活用

文章生成の分野で活用しているのが「SNS用の投稿文生成」「記事タイトルと目次生成」の2つ。SNS用の投稿文生成における生成AIのタスクは「文章生成」。スプレッドシートでターゲットやテーマ、文章量などを設定して、Geminiで文章を生成。その後、担当者がチェックをして、必要に応じて修正をしてから投稿している。記事タイトルと目次生成における生成AIのタスクも「文章生成」。SEOキーワードや過去の記事構成を設定して、Geminiでタイトルや目次を生成している。

「サイト運営」ではカテゴリ分類やレビューチェックを

サイト運営の分野で活用しているのが「その他商品への最適カテゴリ提案」「商品レビューのガイドライン違反検知」の2つ。その他商品への最適カテゴリ提案における生成AIのタスクは「分類」。ZOZOTOWNの掲載商品には大カテゴリと小カテゴリがあるが、両カテゴリで「その他」となっているものでも、最適なカテゴリが他に存在するものが一定数あるという。しかしユーザーは、「その他」のカテゴリはあまり検索しないため、販売機会の損失につながってしまっている。そこで、BigQuery
から商品タイトルと商品説明文を取得し、Geminiで分類し、可能な限りで「その他」から他分野へ移行させている。商品レビューのガイドライン違反検知における生成AIのタスクも「分類」。以前は投稿されたレビューを人の目でチェックしていたが、膨大な量となるため時間を要する。そこで、BigQuery
から取得したレビューをGPT-4でチェックし、違反だと判定したものだけを人の目でチェックするようにし、作業時間を削減した。

写真 人物 ZOZOで生成AI活用推進を担当する川田心氏

「社内業務」では問い合わせに対する一次回答に活用

最後となる、社内業務の分野で活用しているのが「問い合わせ対応一次回答ボット」。生成AIのタスクは「文章生成」だ。まずは、社内の情報システム部門への問い合わせに対し、社内ルールのテキストをベクトル化してベクトルDBに保存。そして、問い合わせの内容もベクトル化し、社内ルールのベクトルDBを検索し、GPT-4で回答を作成。問い合わせ者に、社内チャットで回答を送付している。間違っていることもたまにあることから、解決&未解決ボタンを設置。未解決ボタンがクリックされた場合は、担当者にメンションが飛ぶようになっているという。

写真 人物 ZOZOで生成AI活用推進を担当する川田心氏

学習させなくても実現できるタスクから活用を

川田氏は生成AIを活用することにより2つの気づきがあったと話す。1つめは、大量の社内知識をもとにした回答の精度を高めるには、まだまだ工夫が必要だということ。元データの整備や、問い合わせ文章の整理、社内知識の保存の仕方など、工夫すべきポイントがいくつかあるそうだ。2つめは、社内知識を学習させなくても業務で使える部分はたくさんあるということ。特に、分類(アプリレビューの分類、その他商品への最適カテゴリ提案)、要約(IR情報の自動取得&要約)、文章生成(SNS投稿文の作成、記事タイトル&目次生成)においては十分に使えていると断言した。「社内知識を学習させなくても、生成AIは業務活用できるレベルにあります。社内知識を学習させるにはかなりの工夫が必要なので、まずは学習させなくても実現できるタスクから活用してみてください」と進言し、講演を締めくくった。

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【「AI研究会」~次回開催予定のイベント~】

 
◆第3回:2025年2月5日(水) 15:45~17:00(開場 15:30)
・テーマ:AIクリエイションの最前線!PARCOが描く広告の新しいカタチ
・ご登壇者:株式会社パルコ
      宣伝部 部長
      手塚 千尋 氏
 
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◆カンファレンス:2025年3月19日(水)13:30~17:10(開場 13:00)
・テーマ:楽天市場のAI活用最前線
・ご登壇者:楽天グループ株式会社
      常務執行役員 コマース&マーケティングカンパニー
      コマース&マーケティングテクノロジー統括部 ヴァイスディレクター
      小林 悠輔 氏

 

・テーマ:味の素の「未来献立」に見る、AIを活用したサービス開発の背景とは
・ご登壇者:味の素株式会社 R&B企画部
      マネージャー
      勝美 由香 氏
 
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