Q1:現在の仕事内容について教えてください。
熊本県菊池市役所で広報業務全般を担当している三代烈也と申します。
世界最大の半導体生産メーカー「台湾積体電路製造」(TSMC)の進出で近年、話題の熊本県。その北東部に位置する菊池市は、最盛期には九州一円に影響を及ぼす勢力だった菊池一族の歴史や伝統文化の他、菊池渓谷をはじめとする多くの水資源や温泉に恵まれた自然豊かな「癒しの里」です。
美しい水と土壌で育った「菊池米」は食味ランキングで最高位の特Aを14回も獲得。米作りの歴史は近隣4市町にまたがる日本遺産にも認定されています。県内有数の生産量を誇る「七城メロン」や「旭志牛」などもブランド化され県内外へ出荷。企業誘致にも力を入れ、企業立地が進んでいます。
具体的な仕事内容は、毎月1回発行する「広報きくち」の企画・取材・編集作業。他にも市公式SNSの更新や市ホームページの管理、報道機関へ向けたプレスリリースの作成などを行っています。
Q2:貴組織における広報部門が管轄する仕事の領域について教えてください。
広報部門が管轄する主な業務は、次のとおりです。
●広報紙作成…担当職員3人で分担して作成。取材や写真撮影、原稿作成、レイアウト、デザインなどを職員自ら実施。
●報道対応…取材申し込みの対応、市長定例記者会見など
●プレスリリース…市政情報のマスコミへの発信
●ホームページ運用…管理、運用業務
●SNS運用…インスタグラム、エックス、フェイスブック、ユーチューブでの情報発信
●広報研修…プレスリリースの作成方法や報道対応などについての職員向けの研修会の実施
Q3:ご自身が大事にしている「自治体広報における実践の哲学」をおしえて下さい。
常に意識していることはより良い紙面をつくること。その思いは代々、菊池市の広報担当者に受け継がれています。
広報きくちは過去に8年連続で全国広報コンクールに入賞するなど、クオリティの高い広報紙を作成してきました。正直な話ですが、担当になって間もない頃は「こんなにこだわって広報紙をつくる必要があるのか」と思っていました。しかし、前任の担当者から「広報紙に掲載されたページは一生残る。だから毎月力を尽くすし、面倒でもまちに出て取材に行くんだ」という言葉を受け、自身の行動が少しずつ変わっていったように思います。
そもそも広報紙は読まれないと意味がありません。実際に見に来てもらう必要があるホームページやSNSと違い、各世帯に毎月、確実に直接配布できる広報紙の方がしっかり情報を届けることができるのではないかと考え、読んでもらえるような紙面にするべく、特に広報紙作成に力を入れています。
読んでもらう工夫としてはできるだけ多くの市民に登場してもらうこと。「菊池人」というコーナーを設け、市内で新しいことに取り組んでいる人、伝統を受け継いでいる人などを紹介。表紙は毎月、読者の印象に残るような「人物」「風景」などの写真を掲載市内事業者から募集したクーポンも毎月とじ込んでいます。特集記事では市民の活動や生の声を取り上げ、市民目線で分かりやすく親しみやすい内容になるようこだわっています。
表紙写真は広報紙にとっての「顔」。思わず手に取ってページをめくりたくなるような写真を目指している。
「菊池人」というコーナーを設け市民を紹介。メディア関係者から「登場した人を取材したい」と依頼されることも多い。
令和5年12月号では地域と大学生との取り組みを特集。半年以上にわたって集落に通い、記事を作成した。
自分の撮影した写真や、企画した記事が掲載された広報紙が全世帯に配布される。すごく責任の重い仕事だと思います。でも、それを見た人から「表紙の人の笑顔が良かった」「私の思いを形にしてくれてありがとう」「特集記事のような取り組みをうちの集落でもしたい」などと言われると、とてもうれしいですし、もっと頑張らないといけないと思うようになりました。
ですので、より良い紙面をつくるために自分にできる努力は全てやっておきたいと考えています。おこがましいかもしれませんが、菊池のことならプロのカメラマンやライター、編集者などにも負けないものをつくれるように、掲載された人が喜ぶものをつくっていきたいです。
Q4:自治体ならではの広報の苦労する点、逆に自治体広報ならではのやりがいや可能性についてお聞かせください。
広報の仕事は、まちのために活動する人とのつながりが多い仕事です。やればやるだけレスポンスがあります。たまには煩わしく思う時もちょっとだけ、ほんのちょっとだけありますが、やっぱりそれが一番のやりがいなんじゃないかなと感じています。
令和7年1月号に紙面に登場してもらった伝統料理を作り続けるおばあちゃん。広報発刊後にお会いすると「広報を見た人からいっぱい電話がきたよ。もっと頑張らなきゃいかんね」とうれしそうに話してくれました。電話や声掛けは100人を超えたそうで、手書きで作った名前一覧も見せてくれました。
取材した人が広報紙をきっかけに前へ進もうとする姿を見られること、これ以上の喜びはないなと思いました。
自治体広報担当職員は「地域を知り、地域とつながり、地域に貢献する“ローカリスト”」になることが必要だと考えています。
自分の働くまちでの小さな出来事やイベントにもフォーカスを当て、課題を発見し、どのように解決していくのか住民と一緒に考えていく。これは自治体広報しかできないことで、特権でもあり醍醐味でもあると思っています。
菊池市には埋もれた魅力や課題がまだまだたくさんあると思います。それらを掘り起こし、市民と地域、行政をつなぐために、これからも現場に出て、汗を流していきたいです。
【次回のコラムの担当は?】
次回は福島県川俣町総務課文書広報係 佐藤耀さんです。
