大手23社がインターナルコミュニケーション施策を探求、実践例を共有

ヤプリと宣伝会議は2月17日、インターナルコミュニケーションの推進を検討する研究会の第4回を開催した。大手企業23社の責任者が参加。組織で働く個人と企業の持続成長につながるコミュニケーション施策や課題について、活発な議論を交わした。

「インターナルコミュニケーション研究会~企業行動に変革を起こし、イキイキとした組織を~」

【趣旨】
アプリプラットフォーム「Yappli」を提供するヤプリと宣伝会議が共同で研究会を2024年4月に発足。研究会は2年目に入った。従業員一人ひとりが活躍できる状態を生み出すため、経営機能としての広報が果たすべき役割や、風通しの良い企業風土を醸成するインターナルコミュニケーションのあり方などについて議論。成果発表会も行っている。

「インターナルコミュニケーション研究会」第4回は、イオン、イトーキ、エイチ・ツー・オー リテイリング、エバラ食品工業、大阪ガス、大林組、オリエントコーポレーション、カッパ・クリエイト、コメ兵ホールディングス、JTB、島津製作所、昭和産業、住友ゴム工業、大和ハウス工業、東レ、戸田建設、西日本旅客鉄道、日本特殊陶業、堀場製作所、三井不動産、三菱UFJ信託銀行、メルカリ、ルネサンスのインターナルコミュニケーション関連部門責任者が集まった(五十音順、敬称略)。またアドバイザーとして、複数企業においてインターナルコミュニケーションで豊富な経験を持つ岡部一志氏、そしてボードメンバーとしてヤプリが参加。各社が実践するインターナルコミュニケーションの取り組みについて意見交換を行った。

グループディスカッションでは、各社の現状とありたい姿を洗い出し、そのギャップを埋める施策について話し合った。その内容は、コミュニケーション戦略から推進体制、効果測定にまで及び、各社の課題やケーススタディを受け、岡部氏がこれまでの知見をもとにアドバイスした。

組織の成長に伴い膨らむ課題

インターナルコミュニケーションは組織規模が大きくなるほど難易度も上がっていく。特にM&Aで新たに加わった企業や海外のグループ企業など、価値観の異なる組織や従業員とどのように一体感を醸成していけばよいのか、という声が参加者から多く上がった。

これに対し岡部氏は「組織が大きくなるにつれ、共通言語が持ちにくくなります。そこで大切なのが、それぞれの価値観や課題を共有し、学びや相互理解を得ようとするカルチャーをつくれるかどうかです」と指摘。例えば、人事評価の指標に統一して入っている項目があれば、共通の言葉で議論するきっかけになる。「組織間で共通する話題を生み出すこと、共感し合える環境をつくっていくこと。これをコミュニケーション部門の目標のひとつにしてはどうでしょうか」と話した。

経営陣のコミットメント

組織を取り巻く環境変化で、コミュニケーション部門の業務領域が広がり続ける中、人的リソースは不足しているという課題もある。「限られた人員でインターナルコミュニケーションを担っており、戦略や効果測定にまで手が回らない」。そうした声が参加者からも上がった。

一方で、コミュニケーション部門と現場の従業員とでは、組織に対する意識に温度差があるもの。この前提を踏まえ、施策を組み立てていく必要がある。そこで鍵となるのは、経営陣にインターナルコミュニケーションに積極的に関わってもらう環境づくりだ。

例えばタウンホールミーティングの機会を設け、社長が従業員に直接語りかける。対話の機会が増えれば意識の差を埋めていくことが期待できる。参加企業のケースでは、経営陣が各事務所に赴くタイミングにあわせ、地域メディアへのアプローチを行い、メディア露出に結び付けていた。社内で発信しているメッセージの要点が、報道を通じて客観的に発信されることが叶えば、従業員の理解もより深まっていく。

また、コミュニケーション部門のリソース不足に関して岡部氏は「デジタルテクノロジーを使って業務を効率化していくチャレンジ」を実践しているという。「ファクト情報の取りまとめに生成AIを使うなど、社内でテクノロジーの活用に本気で取り組むことで、効率化を実感できれば業務の優先順位を変えることはできます。また施策の中で、やめても経営に差し支えないものを振り返り、見極めていくことも大切です」(岡部氏)。

目的を踏まえた発信

コミュニケーションの目的を踏まえ、適したチャネルを整理している参加企業の事例も共有された。発信する内容が、業務性の高いメッセージなのか、自己研さんなど業務性が低いが共有したいメッセージなのか。それとも、社内のゆるやかなつながり、交流を促したいのか。目的に応じて情報を受け取りやすいアプリを使い分けていた。

また、社内報の従業員にフォーカスをあてた記事を、新聞のシリーズ広告として掲出しエンゲージメントを高めることを狙った参加企業の事例も紹介された。社内報の記事をアレンジし、オウンドメディアで発信している企業のケースもあり、限られた人的リソースの中でも、社内のコンテンツ、資産を活用しながらインターナルコミュニケーションに取り組んでいる様子が見られた。

社内を巻き込むチャネル選び

さまざまな環境で働く従業員に対して、情報格差が起きないよう配慮することもインターナルコミュニケーションでは求められる。特にPCやスマ-トフォンが見られない工場勤務の従業員などに対しては、紙の社内報の配布や、壁新聞の張り出しを行うなどの工夫が見られた。

情報を広く発信できたとしても、それが見られているとは限らない。読み手が自ら取りに行きたいと思う情報の選び方や、チャネルの選定が求められる。また、必要とされる情報のレベルは社員によって異なるため、見極めながらコンテンツも試行錯誤していく必要がある。例えば、「人事関連の情報や現場で働く人の顔を出すと読まれやすい」といった受け手の反応も把握しておきたいところだ。加えて、メディアを介さず直接対話の機会を持つことで、社内の温度差を縮めていく重要性も確認された。

六本木にあるヤプリのオフィスを会場に研究会を実施。2025年は参加企業数を増やし、前年に引き続き開催。

効果検証と成果の提示

効果測定に関しては、ウェブ社内報のアクセス数や、従業員エンゲージメントへの貢献度など、目的に応じて様々な指標が考えられる。なかでも重視したいのが、インターナルコミュニケーションが企業価値の向上や事業成長に貢献しているかを示していくことだ。社内の協力を得ていくためにも貢献度を示していくことが欠かせない。成果の示し方の一例として、エンゲージメント指数の高まりと、社内報のPV数の伸び、業績を一つの図にまとめて経年で追跡している参加企業もあった。

インターナルコミュニケーション活動の成果が社内で理解されづらい、という参加者の声に対して、岡部氏は「コミュニケーション活動についての社内調査をする方法もある」とアドバイス。施策に関して従業員の意見を集めることで、改善につなげていくことができるという。「インターナルコミュニケーションの反響を高める解決策を見つけるには、まずデータをとること。イベントに参加したのは本社社員が多いのか、グループ会社社員の割合はどうか。社内SNSの投稿に反応しているのはどの世代が多いのか、といった数値を見ていきます。同時にフリーコメントも重要。経営メッセージに共感しているかどうか。役職の階層によって差が出ている場合は、どこで格差が生まれているのか、データを見ながら計画を立てアプローチしてみてください」(岡部氏)。

また社内のキーパーソンと対話を重ね、インターナルコミュニケーションの意義を理解してもらう動きも取り入れたい。例えば「タウンホールミーティングの予定を年間計画で決めておき、工場勤務の社員も参加しやすい環境を調整してもらう。そういったこともコミュニケーション部門の役割です」と岡部氏。社内の協力を得ていくことで、インターナルコミュニケーションの手法・アイデアも広げやすくなる。

インターナルコミュニケーションのヒント

1 組織規模が大きくなり企業カルチャーが浸透しづらくなってきたら、「共通の話題」を見つけ、学び合う機会を設ける

2 インターナルコミュニケーションの成果を分かりやすく示す工夫で、社内の協力を得やすく

3 施策後はデータをとり、コミュニケーションのターゲット、チャネルを改善。直接対話やエクスターナル施策も柔軟に活用する

お問い合せ

株式会社ヤプリ

住所:〒106-6241 東京都港区六本木3-2-1 住友不動産六本木グランドタワー 41階
TEL:03-6866-5730
Mail:mktg@yappli.co.jp
URL:https://yapp.li/

advertimes_endmark

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ