「なんでこれが名作なんだろう」
大きな声では言えないが、コピーを学ぶ若手であれば、正直一度は、疑問に思ったことがあるだろう。
でも安心して欲しい。その良さがわからないのは、きっとあなただけのせいじゃない。
もちろん、コピーを見る目が養われていない可能性もゼロではないが、どこまでいっても広告は、その時代の人にしか本当の良さはわからないものなのだと思う。
それはなぜか。そのいちばんの要因は、私たちが発見を感じられないことにある。
ここで誤解してほしくないのが、名作コピーに発見がないのではない。むしろ、発見が強烈なあまり、後続の広告だけでなく、世の中にすら影響を与えて、あたりまえなものになってしまっているということなのだ。
こんなことを言うと「広告なんて業界の人しか知らないでしょ…」と思うかもしれないが、その概念が、その表現が、その言い回しが、形を変えてあなたの暮らしの中にも、きっと染み込んでいるはずだ。しかも気づかないうちに。(それが名作のおそろしいところだ)
つまり、そのコピーが生まれた以後の世界を生きる私たちは、以前を知る人と同じ衝撃を共有することはできない。極端に言えば、地球が動いていることをあたりまえだと思う時代に、地球が動いていると言われても、その価値がわからないようなものなのだ。
しかし、だからと言って、過去を学ぶことを諦めてはいけない。実感はできなくても想像はできる。再現はできなくて応用はできる。次の名作にまでは辿り着けないとしても、巨人の肩の上にのるために、名作が名作たる由縁を知らなくてはいけない。
その意味で、この本の価値は、左ページの解説にあると言える。コピーだけではわからない、時代の手がかりがそこにはあるはずだ。

『昭和・平成・令和 時代を超えていまなお心に残る 永久不滅の広告コピー』
宣伝会議書籍編集部編
定価:2750円(本体2500円+税)
ISBN:978-4-88335-625-6
「知っていたけれど、何を意味しているのか」「なぜ名作と言われるのか、わからなかった」コピーや「こういう時代だからこそ生まれた」コピーなど、本書はその広告の背景や時代について知ってもらうことを大事に編集しています。その背景や意図について、実際に制作に携わったコピーライターの方々などによる寄稿(一部取材)を129本収録。時代の流れの中でコピーライターがその商品やブランドとどう向き合い、言葉の力を発揮していったのか。それぞれのコピーにおけるライティングの技や言葉の選び方、広告としての面白さを感じてもらうと共に、一つのクリエイティブができあがるまでの物語として読むことができます。
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