「顧客を中心に置く発想の転換」~『THE CUSTOMER CENTRIC COMPANY 顧客基点経営10の実践』によせて(中島広数)

『宣伝会議のこの本、どんな本?』では、弊社が刊行した書籍の、内容と性格を感じていただけるよう、本のテーマを掘り下げるような解説を掲載していきます。言うなれば、本の中身の見通しと、その本の位置づけをわかりやすくするための試みです。今回はfreebee創業者・代表取締役の中島広数さんが『THE CUSTOMER CENTRIC COMPANY 顧客基点経営10の実践』(岩井琢磨 編著)を紹介します。

本書を読む前、マーケター・事業家としての私の感覚は、「DXは効率化にはつながるだろうが、事業成長とは相性が悪いのでは?しかし、社会でここまで実装が進んでいるデジタル化に拒否反応を示すのもナンセンスだしな……」というものでした。この感覚は多くの経営者・事業家の皆さまにも共感頂けるのではないでしょうか?

本書には「デジタル活用は手段であって目的ではなく、目的はあくまでも顧客に対する価値の提供である」という一貫したメッセージがあります。私たちは置かれている環境のせいなのか、真面目な性質のせいなのか、とかく「手段の目的化」の罠に引き寄せられてしまいがちです。本書は当たり前に思えるくらいシンプルに、かつ俯瞰的に、DX推進の前に考えるべき論点が整理されています。

著者が提示するフレームワーク「Customer -Centric Management Map」(CCM Map)は、「自社が」、「自分たちの技術が」、「自分たちのサービスは」、という会社主語でDXを推進することのリスクに気づかせてくれるだけでなく、「戦術や各論の話をする前に、まず真ん中に顧客・生活者を置きましょう」という発想の転換を促してくれます。

「デジタルを活用すべきだが、何から始めるべきか?」、「うちのECサイトは使い勝手が悪い、改修が必要だ」、「売上を上げる為にグローバル展開をやってはどうか、越境ECが良いと聞いた」、事業コンサルタントである私自身もこのような話を耳にすることが多くあります。しかし、大事なのはそれ以前の、発展著しいデジタル技術を有効活用して「顧客に対して、どのような価値を提供できるか?」という論点にあるはずです。

生活者がロイヤルティプログラムやポイント制度、AI検索などのデジタル技術の恩恵を受ける一方、事業者は、価値創造に取り組む柔軟な発想と、過去からのやり方に固執する社内勢力の狭間で思うようにプロジェクトが進まない、という事もあると思います。大事なのは、現在は「売り手優位」から「顧客優位」で商品やサービスが選択される世の中に変わりつつあるということを認識することです。編著者の岩井琢磨さんを始め、本書の執筆メンバーの多くがデジタル戦略に精通しており、新価値創造・事業成長をデジタル・DXを通じて成し遂げた事例も掲載されています。経営・事業に携わる方が本書を手に取られ、CCM Mapをはじめとするフレームワークに触れることで、価値創造につながるDXに向けての気づき・ヒントが少しでも得られたら儲け物だと思います!

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中島広数

freebee創業者・代表取締役、亜細亜大学・アジア国際経営戦略研究所非常勤講師、香港貿易発展局アドバイザー、本田事務所マーケティングディレクター、トレンダーズ顧問、一財)シャンテイハウス評議員長、他複数の役割を兼任。元味の素メニュー調味料グループ長。著書に『グローバルで通用する「日本式」マーケティング』(日本能率協会マネジメントセンター)。

『THE CUSTOMER CENTRIC COMPANY 顧客基点経営10の実践』

岩井琢磨 編著/定価2,200円+税
DXを推進しても、なぜ事業成果に結びつかないのか。その要因は、本来基点となるべき「顧客体験」が描けていないことにある。本書は、編著者・岩井琢磨が共同CEOを務めるコンサルティング・ファーム「顧客時間」での数多くの変革プロジェクトを通じて培われた実践知を初めて体系化した一冊。

宣伝会議のこの本、どんな本?
宣伝会議 書籍編集部

宣伝会議書籍編集部では、広告・マーケティング・クリエイティブ分野に特化した専門書籍の企画・編集を担当。業界の第一線で活躍する実務家や研究者と連携し、実践的かつ最先端の知見を読者に届けています。

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