2023年の先行発売で即日完売してから、ヒットを続ける「KOIKEYA FARM」。湖池屋がついに、自社のじゃがいもの育成から商品化までを手掛けるようになったと話題になっている。2024年1月には一部小売で限定販売、同年10月には全国販売と順調に販路拡大を遂げ、2025年4月には「湖池屋ファーム」へのブランドリニューアルも実施。市場にポテトチップスは数多く存在する中で、同商品はなぜ売上を伸ばし続けられるのか。ヒットの裏側を、ブランド担当である矢野匠氏に取材した。
本記事は月刊『販促会議』2025年5月号に掲載されています。
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ポテトチップスと芋の価値向上プロジェクト
──「KOIKEYA FARM」は、どのように誕生したブランドなのでしょうか。
湖池屋は2016年から、「高付加価値経営」を掲げ、「高付加価値ブランド」「オリジナルロングセラー」「新市場創造」、そして「KOIKEYA FARM」が含まれる「ブランド芋戦略」の4軸で商品開発・販売を行ってきました。
「高付加価値経営」が始まった当時のポテトチップス市場は、商品のコモディティ化が進み、平均売価が低下し続けているような状況。こうなると各メーカーは、いかに安く商品を売れるかが重要になってきてしまいます。そのままでは、ポテトチップス市場が衰退してしまう危険性があったわけです。
そこで湖池屋は「品質とおいしさ」という観点で商品を選んでいただきたい、もっとおいしいポテトチップスを届けたいと考え、様々な商品を開発してきました。ちょうど、高価格帯のチョコレートが一般流通で販売されはじめるなど、各カテゴリにおいて「プレミアムライン」が成立しはじめている頃でもありました。
これは高価格帯のスナック菓子においても受け入れられる土壌が整いはじめているのではと思い、じゃがいもにこだわったプレミアムなポテトチップスを開発することにしたのが「KOIKEYA FARM」プロジェクトの始まりです。「ポテトチップスといえば子どものおやつ」という認識を変えるため、洗練されたパッケージデザインにもこだわりました。他にはないフレーバーなど、大人の方にも選んでいただける商品開発を行っています。
──「KOIKEYA FARM」プロジェクトが属している「ブランド芋戦略」は具体的に何を目指す戦略なのでしょうか。
冒頭に述べた商品開発の軸の1つである「ブランド芋戦略」は、国産じゃがいものブランド化に取り組むプロジェクトです。例えば、お米は「ななつぼし」「こしひかり」、イチゴは「あまおう」「とちおとめ」など、各銘柄のブランド化が進み、そのブランド軸で商品を購入するファンが多くいるカテゴリです。これはじゃがいもでも同様の状況を生み出すことで、「じゃがいもの市場価値向上」ができると考えました。そのような背景があり、全国各地のおいしい芋をポテトチップスとして商品化してきたという経緯があります。
そして2023年に誕生した「KOIKEYA FARM」こそ、湖池屋がポテトチップスの原料であるじゃがいもからプロデュースし開発した「湖池屋のブランド芋」を、ポテトチップスとして商品化させたものです。2023年12月の湖池屋オンラインショップ先行発売を皮切りに、みなさまに湖池屋のブランド芋ならではのおいしさをお届けしてきました。
KOIKEYA FARM(2025年4月に「湖池屋ファーム」にリニューアル)。主な販路はスーパーマーケット、コンビニエンスストア、湖池屋オンライン。
先行発売では、湖池屋のブランド芋「黄金の果肉」を使用したフレーバー「北海道産帆立と昆布とオホーツクの塩」「青のりの王様すじ青のり」の2種類を販売。続く2024年8月の限定販売では、同じく湖池屋のブランド芋「白金ダンディ」を使った「平釡の塩と九州産柚子」と、「女神のえくぼ」を使った「香る焼きあごと青のり」の2つ。
そして、同年10月の全国販売以降は、「黄金の果肉天海の焼き塩」、「白金ダンディすじ青のり」を定番として展開し、様々な試行錯誤を重ねてきました。2025年4月からはブランドをリニューアルし、新たな挑戦を行っていく方針です……
……本記事の続きは、月刊『販促会議』2025年5月号にてお読みいただけます。
