思わず聞き入る、あの感覚
選曲するのが好きだ。学生の時バイト代を貯めてVestax のターンテーブルを買った。DJ とは、“その場にいる人たちの最大多数の最大幸福“を実現させること――そう誰かに教わった。同じ空間であっても、その1 曲がかかるだけでまるで別の場所に連れていかれる感覚がある。爆音でかかる音楽に、目の前の人が幸せそうに踊ってる姿を眺めるのが心地よかった。
広告会社に就職した1 年目、仕事中に友人から「いい物件があるんだけど」と急な呼び出しがあり、ノリと勢いでカフェを始めた。渋谷の公園通り沿いにあるイタリアンの居抜き物件、当然内装やインテリアにかけるお金はない。別に誰も音楽を聞きに来てるわけじゃないけど、そこでまた選曲の楽しさを知った。
年を重ねることで音楽との向き合い方も変わってきた。箱いっぱいに詰め込んだレコードを必死こいて運んでいたのは遥か昔のこと。Spotify を開けば、それこそ無限とも思える音楽が良い感じのアルゴリズムでレコメンドされてくる。流れに身を任せて浴びるように聴いているものの、その曲名もアーティスト名も知らないままということが増えた。
それでもふと手が止まる瞬間がある、思わず聞き入ってしまうような音楽。昔カフェや深夜の音楽イベントで選曲していた頃、お客さんに「この曲なんですか?」と聞かれて嬉しかったあの感覚を、今もたまに思い出す。
“この曲が流れると、空間と時間の流れが変わってしまう音楽”――そんなテーマで10 曲を選んでみました。どれも自分にとってはタイムレスな名曲ばかり。たぶん10年後に聴いても今と同じ感覚で「あっちの世界」に連れて行ってくれるんじゃないかと思います。
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