「界隈消費」って共感できる!? Z世代の学生記者が「SHIBUYA109 lab.」を突撃取材!

東京・渋谷は、国内のみならず、世界的にもその名が知られる若者カルチャーの発信源です。渋谷駅前のスクランブル交差点やハチ公像、SHIBUYA109やPARCOなどの商業施設は、観光スポットとしてだけではなく、アニメや映画などの創作のなかでもよく描かれ、東京の「まち」の象徴(=アイコン)として機能しています。

そんな渋谷の中心に店舗を構える「SHIBUYA109」には、「SHIBUYA109 lab.」というaround20、いわゆるZ世代に当てはまる若者たちに特化したマーケティング機関が存在します。2024年11月に発表された博報堂との共同レポートである「Future Evangelist Report vol.3」では、Z世代の動向から見えてきた「界隈」を起点とした消費=「界隈消費」に注目し、企業が今後のマーケティングで意識すべき点が提言されていました。

今回は、「SHIBUYA109 lab.」で所長を務める長田麻衣さんに学生記者が取材を敢行。本記事は、教育学を専攻する現役大学生、そしてZ世代としての筆者の視点も交えながら、お届けしたいと思います。

※本記事は情報、メディア、コミュニケーション、ジャーナリズムについて学びたい人たちのために、おもに学部レベルの教育を2年間にわたって行う教育組織である、東京大学大学院情報学環教育部の有志と『宣伝会議』編集部が連携して実施する「宣伝会議学生記者」企画によって制作されたものです。企画・取材・執筆をすべて教育部の学生が自ら行っています。
※本記事の企画・取材・執筆は教育部所属の佐藤良祐、取材は櫻井恵、平松優太、松香怜央が担当しました。

消費に恋愛、政治まで 月に200人の若者に会って話を聴く

━━「SHIBUYA109 lab.(以下、ラボ)」の活動概要について教えてください。

私たちのラボは、SHIBUYA109のマーケティング機能を担っており、若者のことを一番知っている部署になることを目標に掲げています。日々、渋谷に集まる若者たちの調査を行っていますが、そこで得た知見は、SHIBUYA109のマーケティング活動に生かしつつ、他の企業のマーケティング活動の支援もしています。

調査の方法はかなりアナログで、SHIBUYA109に来ている子たちに声をかけてアンケートや座談会を定期的に行って話を聞いています。SHIBUYA109で販売しているファッションやコスメなどの商品カテゴリーに関する話だけでなく、恋愛や政治など、広く若者世代の意識を探っていくことを目的にしています。だいたい毎月200人の若者に会っています。

━━調査の対象となるものは、消費に直接結びつくものだけではないのですね。

基本は私たちのラボのチーム、あるいは私たちがお付き合いしているクライアント企業の方たちが知りたいと思うことをメインで聴いていますが、確かにかなり幅広いテーマを扱いますね。

最近では「働く若者」というテーマに注目しています。「消費者としての若者」と「働く若者」はかなりリンクしているので、働き手としてはどうなのかということを知るための調査も行っています。

━━調査をされているのはラボの方々なのでしょうか。

そうですね。いまは私たち社員と学生インターンを併せて17名ぐらいです。SHIBUYA109で若者に声をかけて話を聴いたり、インタビューのモデレーターをしたり、そのデータをみんなで分析したりしています。

━━SHIBUYA109に来る方に声をかけるという手法にはこだわりがあるのでしょうか。インターネットでよい気もしますが。

インターネットだと、それこそ「界隈」のフィルターがかかってしまうのではないでしょうか。特定の界隈以外の人たちにもフラットに話を聞きたいので、SHIBUYA109で声をかけるスタイルを続けています。

また、リアルで話を聴くことにもこだわりがあります。私たちは座談会のような定性調査のほか、定量調査も行っています。定量調査であっても、結果をどう読み解くか、その解釈の仕方はどうしても人に依存してしまいます。こちらの解釈で結果が変わってしまうのだとするのなら、定性調査のほうが発言の背後にあるニュアンスも含めて理解できるので、リアルに会って話を聞くことが有益ではないかと考えています。

他にも若者研究の機関はありますが、毎月200人の若者と実際に会っている組織はそうそうないので、圧倒的に多くの若者にリアルに会っているところが私たちの強みだと思います。

あと、SHIBUYA109に来ている子たちはトレンドに敏感で消費の意欲も旺盛で、最先端すぎないけれどもかといって中央値でもない絶妙なライン(=アーリーアダプター)の子たちなので、彼らから話を聴けることもよいのかなと思います。

━━調査対象となるSHIBUYA109に来られる方の属性の特徴を教えてください。

SHIBUYA109の来館者に最も多いのが15歳から24歳までのaround20なので、私たちもこの年代の人たちを調査対象にしています。Z世代のなかでも高校生・大学生・新社会人に該当する年齢の人たちですね。

男女比でいうと8割が女性ですが、時々男性を対象にする調査も行っています。夏休みなど長期休みのときには地方から来てくれた方とも連絡先を交換していて、リモートでインタビューを行うこともありますが、皆さんの居住地は首都圏の1都3県が中心で、SHIBUYA109に来られるエリアに住んでいる人が多いのが特徴です。

SHIBUYA109 lab. 所長の長田麻衣氏。

次のページ
1 2 3
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ