「界隈消費」って共感できる!? Z世代の学生記者が「SHIBUYA109 lab.」を突撃取材!

「界隈」と「コミュニティ」は全くの別物 長田所長に定義を訊く!

━━次に、「界隈」という現象について掘り下げていきたいと思います。「界隈」ということばの定義は何でしょうか。

「界隈」とは、ゆるいクラスタのことを指します。ファッションとか世界観とか、カルチャーとか、推しとか、何かを軸に共感でつながっているゆるいクラスタのことを「界隈」と定義しています。

━━資料(Future Evangelist Report vol.3)では、「界隈」は『「好き」や興味関心を軸に形成されるゆるい集団(コミュニティ)』という定義でした。「界隈」と「コミュニティ」ということばの違いは何でしょうか。

「界隈」と「コミュニティ」は、全く違うものだと考えています。「コミュニティ」には、中心人物やリーダーがいたりするケースが多く、また枠がしっかりとある印象です。ですから「コミュニティ」にはそこに入るか入らないかが明確であることが多いのではないでしょうか。

一方で「界隈」は入るかどうかを選択するものではありません。自分でその「界隈」との距離感を調節することができるので、今はこの界隈に超コミットしているけれど、これからはちょっとお休みしようかな、というように「界隈」との付き合い方を自分の気分などに合わせて調節できるのは、「コミュニティ」との違いだと思います。

━━「コミュニティ」にあるような軸や中心があると、そこへ向かって外枠から中へと入っていくようにして序列が形成されてくるのかもしれません。「界隈」には、それがないからこそ、その中における自己の立ち位置を調節しやすいのかなと思います。

「ゆるさ」みたいな要素が大事な気がしています。たとえば、今の若者は「コミュニティ」に入ることを嫌がるんです。縛られそうとか、自分が何かしなきゃいけないんじゃないかとか、強制感のあることばに聞こえるようです。自分で距離感を決めたいのに、「コミュニティ」の主導者から「コミュニティ」との関わり方を決められて、「貢献」しなければ…と感じることは彼らにとって大きなプレッシャーでありストレスになります。

いくつか好きなことがあって、「界隈」には重なり合いがあるし、「界隈」のあいだを回遊したいし、このときはこれをしたいけど、来月はこれをしたいというように、コミットするものをちょっとずつ移動させたりするということが「コミュニティ」に一つ入るとできなくなってしまうから、そことの関わり方をもう少し柔軟にするような「ゆるさ」を求めていたときに、「界隈」ということばが当てはまったのだと思います。

━━今の若者は、「コミュニティ」に入ったら責任を持ってそれを支えないといけないという責任感が強いのでしょうか。

責任感が強いというか、調和を大事にしているといえると思います。その「コミュニティ」を良いものにしないといけない、調和を乱さないように上手くやらないといけないというように、周りとの連帯感みたいなものへの意識が強いのかなと思います。

━━「界隈」という言葉が浸透する前は「クラスタ」ということばが使われていました。「界隈」の意味はそこから受け継がれて、さらに今も移り変わっているのでしょうか。

確かに、感覚としては「クラスタ」と「界隈」は近いものだと思います。そして、消費の仕方としての「界隈」とミームとしての「界隈」があって、今は自然界隈や回転界隈など、ミームのほうが注目されています。何でも「界隈」をつけたほうがバズるみたいなことになっている今の現象は、これまでの「界隈」の話とは切り離して考えたほうがよいと思います。
ゆるいその共感とつながってそこで消費をしたい、人とゆるくつながって自分の判断でその距離感を調節したいという消費の姿勢と、「〇〇界隈」と名づけておけばゆるい「クラスタ」が作れて、ちょっと集まってわいわいしてみるという軽めのミーム的な現象とでは、性質が違うと思います。

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