デロイト トーマツの執行役員に聞く、広告ビジネス領域でのコンサルの価値とは?

世界的にコンサルティングファームと広告会社の境界がなくなりつつある昨今、コンサルティング会社が広告ビジネス領域にも参入し、広告会社と競合・協業することも増えてきた。プロモーション(広告・宣伝・PR)をマーケティングサービス領域のひとつとして展開している、デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員/ Deloitte Digital Japan Leaderの熊見成浩氏に話を聞いた。
※本記事は月刊『宣伝会議』7月号の特別レポート「広告ビジネスの経営層に聞く! AIが浸透した時代、広告会社のビジネスはどこに向かう?」の転載記事です。

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熊見成浩氏

デロイト トーマツ コンサルティング
執行役員
Deloitte Digital Japan Leader

20年以上Customer領域のコンサルティングサービスを提供し、特にマーケティング・セールス領域に専門性を持つ。近年は、デジタルトランスフォーメーションやグローバルマーケティングのプロジェクトを多数推進。早稲田大学大学院非常勤講師。

AIエージェントの拡大で増加する「マシンカスタマー消費」

——AIの活用が進むなかで、マーケティングおよび広告はどのように変化していくと思われますか。

デロイト デジタルでは、マーケティング、セールス、サービスの3つの顧客接点領域でコンサルティングサービスを提供しています。デロイト デジタルにおける「マーケティング」の範囲は“STP(Segmentation,Targeting,Positioning)×MM(Marketing Mix)”が主なスコープとなりますが、AIによって大きな変化が予想されます。

まず、AIの進化によりさまざまな経済活動のプロトタイピングができる「ミラーワールド」が実現すると考えています。大量の顧客情報、リアルタイムデータ、デジタルツインなどの技術により、市場や商圏の高度なシミュレーションが可能になっていくからです。

また、「ハイパーコネクテッドエコシステム」が進化し、マーケティングは組織の中枢神経系となり、顧客獲得だけでなく、製品イノベーション、従業員エンゲージメント、さらには人事をも結び付ける役割を担うようになるでしょう。その結果としてCMOは、経営全体におけるビジネスの未来を形づくるうえで極めて重要な役割を将来的に担うようになっていきます。

さらに、消費者が人間だけでなくAIエージェントを通じて商品を購入する「マシンカスタマー消費」が増加。感情に訴えるだけのマスマーケティングは通用しづらくなり、よりパーソナライズされた精緻なシミュレーションに基づくマーケティングが求められるようになります。

——マーケティング支援の領域には多様なプレイヤーがいるなかで、コンサルティング会社の役割、またデロイトが提供できる独自の価値や強みとは、どのような点にあると考えていますか。

データおよびAIの進展に伴い、マーケティング領域はプロモーションにとどまらない本来のマーケティング(STP×MM)の範囲に回帰していくと考えています。

そのような状況で、コンサルティング会社の役割としてまず挙げられるのは「統合的な戦略視点」です。特にプロモーション領域においては、広告がパーソナライズされていく状況で、一つひとつの広告ではなく、メタ的な視点でそれらを統制するマーケ戦略・広告戦略を立案できることが求められていると思います。

2つ目は、「マーケティングオーケストレーション」です。五感を震わせるマーケティング・プロモーションのためには、マルチモーダルな情報の収集を多角的に実施する必要があります。

広告領域だけでないさまざまなステークホルダーとのコラボレーション/エコシステムが必須な状況で、コンサルティング会社はビジネス上フラットな立ち位置でエコシステムのカタリストになり、課題解決に貢献できると考えています。

さらに、マシンカスタマーの世界では、AI同士で会話することとなり、そこでは入出力フォーマットやプロトコルの整合がカギになるため、「AI同士がやり取りしやすいインフラ」の整備が欠かせません。デロイト デジタルでは、グローバルネットワークを活かした世界の先行事例を取り込むことも含め、誰よりも早くクライアント実装できるよう進めています。

そして、「AI時代のCreativeと顧客体験設計」や「ビジネス・クリエイティブ・テクノロジーの伴走」もコンサルティングファームの重要な役割といえるでしょう。

…この続きは5月30日発売の月刊『宣伝会議』7月号で読むことができます。

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