地域のフットサルクラブが「ゼブラ企業」になった理由―経産省の実証実験を終えて

湘南ベルマーレフットサルクラブ代表取締役社長の佐藤です。

湘南ベルマーレフットサルクラブは、フットサルの国内リーグである「Fリーグ」(日本フットサルリーグ)に加盟しているクラブです。

6月7日には2025-2026シーズンのホーム開幕戦を迎え、小田原アリーナで開かれたバサジィ大分戦では6-3で勝利を収めることができました。

私たちは小田原市を拠点に神奈川県西湘地域の3市8町やパートナー企業と連携しながら、競技や事業のみならず社会課題解決にも取り組んでいます。

このアドタイでは、2024年9月から12月まで、湘南ベルマーレフットサルクラブが「ゼブラ企業」としてどのような取り組みをしてきたかを中心に記事を連載してきました。

改めてですが、「ゼブラ企業」とは、急成長や独占を追い求めるユニコーン企業とは異なり、持続可能性や共生、そして経済成長と社会性という、一見すると相反する2つの価値の両立を目指す企業群を指します。

その呼び名は、白と黒の縞模様を持つ「シマウマ(ゼブラ)」になぞらえたもので、黒=経済的リターン、白=社会的意義という2面性を併せ持つ姿を象徴しています。

この“シマシマ模様”は、どちらか一方ではなく両方を共に成立させる姿勢を表しており、近年日本でもこうした企業の在り方が注目されています。

ゼブラ企業のロールモデルの一例に

そんな中、今年5月に経済産業省から「ゼブラ企業に関する実証実験」の報告書が公開されました。この報告書では、ゼブラ的な企業の特徴や課題、そしてそれらをどう支援していくかについて、さまざまな視点からまとめられています。

湘南ベルマーレも、この実証実験に参加し報告書でも取り上げられました。報告書内では、私たちの「地域と共に成長するクラブ経営」や、「福祉・教育・防災」といった分野への取り組みが紹介されており、ゼブラ企業のロールモデルの一例として言及されています。

詳細はぜひ、経産省の報告書をご覧いただければと思いますが、本稿では、この実証実験の期間中に湘南ベルマーレとして得られた気づきや学びを、総括的にお伝えしたいと思います。

また、実証期間中の取り組みを契機に、私たちは「ゼブラ人材の養成所」という新たな取り組みをスタートさせるに至りました。そして今年度は、多様な登場人物やステークホルダー、そしてそれぞれの想いが自然と交わり、共に動き出せるようにする“合流”の仕掛けにも着手しています。

引き続きゼブラ企業としての活動を継続しており、今後はその最新の取り組みについても、数回にわたってご紹介していきたいと考えています。

「スポーツクラブが地域の未来を創る」時代に

「スポーツクラブが地域の未来を創る時代」が来ています。

湘南ベルマーレフットサルクラブが経済産業省中小企業庁の「(通称)ゼブラ企業推進 実証事業」リンクに採択されたのは、制度の理念と私たちが歩んできた道が重なった結果でした。

この制度は、単なる委託事業ではなく、「地域の未来を共に描き、試すための設計図づくり」に挑む実験の場。私たちはその“設計と実装の責任者”として、この事業に臨みました。

この実証事業に取り組んで、最も実感したのは「社会課題を他人ごとから自分ごとに変えるには、関わり方を提示する“場”が必要」ということでした。

地域には「関わりたい」という気持ちを持つ人は多くいます。けれどもその多くが、「何から始めればいいか分からない」「自分に何ができるのか分からない」という不安を抱えています。

そこで私たちはスポーツクラブとして“入り口”となるべく、地域と企業、人と人が出会い、共創を始められるきっかけを設計し、可視化し続けることを意識しました。

それまでに立ち上げた34の社会課題解決プロジェクトは、その実践の場です。各プロジェクトの「進捗状況」「収益化の有無」「リソース状況」を整理し、
● 前進している事業
● 収益が確保できている事業
● 停滞している事業
● リソース不足で動けていない事業
に分類。そこから共通する成功パターンや停滞の要因、必要な立ち位置や人材、協働体制を洗い出しました。

この作業は単なる棚卸しに留まらず、「地域で社会課題に取り組むにはどんな土壌と構成が必要か?」を言語化する重要なプロセスとなったのです。

次回はさらに詳しく、ゼブラ企業としての実証実験の内容をお伝えしていきます。

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佐藤伸也(湘南ベルマーレフットサルクラブ 代表取締役社長)
佐藤伸也(湘南ベルマーレフットサルクラブ 代表取締役社長)

1977年神奈川県藤沢市生まれ。2007年フットサル施設の運営会社起業と同時に、湘南ベルマーレフットサルクラブのGMに就任し、Fリーグ開幕初年度を迎える。2022年4月より同社代表取締役社長。スポーツ庁主催イノベーションリーグ大賞受賞。小田原市など8自治体との包括連携協定を締結しゼブラ事業を推進する。

佐藤伸也(湘南ベルマーレフットサルクラブ 代表取締役社長)

1977年神奈川県藤沢市生まれ。2007年フットサル施設の運営会社起業と同時に、湘南ベルマーレフットサルクラブのGMに就任し、Fリーグ開幕初年度を迎える。2022年4月より同社代表取締役社長。スポーツ庁主催イノベーションリーグ大賞受賞。小田原市など8自治体との包括連携協定を締結しゼブラ事業を推進する。

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