湘南ベルマーレフットサルクラブは、フットサルの国内リーグである「Fリーグ」(日本フットサルリーグ)に加盟しているクラブです。
前回のコラムでは、今年5月に経済産業省から「ゼブラ企業に関する実証実験」の報告書が公開され、湘南ベルマーレもこの実証実験に参加し報告書でも取り上げられた経緯や、「ゼブラ企業」として活動する意義などについてお話ししました。
繰り返しになりますが、「ゼブラ企業」とは、急成長や独占を追い求めるユニコーン企業とは異なり、持続可能性や共生、そして経済成長と社会性という、一見すると相反する2つの価値の両立を目指す企業群を指します。
その呼び名は、白と黒の縞模様を持つ「シマウマ(ゼブラ)」になぞらえたもので、黒=経済的リターン、白=社会的意義という2面性を併せ持つ姿を象徴しています。
今回はその具体的な取り組み、考え方についてさらにお伝えしていきます。
信頼が“つながり”を生む──中間支援機能としてのクラブの進化
湘南ベルマーレFCは、直接事業を担うだけでなく、「後方支援者」や「関係者のつなぎ役」の立ち位置を磨いてきました。その中で見えてきたのは、あらゆる立場や業種の相手とも横断的に関係を築き、信頼のハブとなれる「中間支援機能」という稀有な特性です。
地域に点在する多様な人々や組織に対して、まさに「横串を刺す」ように関係性を築く力を持ち合わせていることが明らかになってきました。
その上で特に感じたのは、“誰を支援するか”が事業推進の速度と質を大きく左右するということ。支援するゼブラ企業が見つからず、全てをクラブが抱えて実行してしまってリソースが枯渇し、停滞したケースもありました。
一方、明確なビジョンと役割分担のもとでゼブラ企業を主体に立て、私たちが信頼とスピードを提供する──そんな中間支援のスタンスが、最も機能することが分かってきました。
ある実証実験では、実行までに1年かかると言われた工程を1カ月で実現。その後、他クラブや大手企業との連携もできました。
私たちへの信用力を用いれば、地域外企業とのPoCマッチングも加速できます。地元自治体職員と一緒に実証実験受け入れのプレゼンを大手企業向けに行ったり、官民連携を主軸に置く専門企業との協定もスタートしたりと、受け入れ基盤はより拡張しています。
🤝株式会社官民連携事業研究所との業務提携締結についてのお知らせ🤝
~社会課題解決とビジネスの両立に資する中間支援事業の発展~
🔗https://t.co/pA2bNNs0T5… pic.twitter.com/FjSbEfo71x— 湘南ベルマーレフットサルクラブ (@SBFC_OFFICIAL) 2025年5月21日
クラブがハブになることで、自治体も企業も安心して実証実験に踏み切れる。スピードと実効力、両方を担保できる仕組みが、地域でのチャレンジを生み出し続けています。
クラブの活動が「応援される理由」になる
実証事業では、企業へのヒアリングや、来場者へのアンケートも実施しました。
● 「ベルマーレと組むことで、他企業との連携や自治体との接点が増えた」
● 「社会課題解決に向き合うクラブだからこそ、応援する気持ちが高まった」
という声が多く寄せられました。
これまでCSR活動としてクラブに関わっていた企業が、クラブと共創し本業も発展する。観客として訪れていたファンが、クラブの社会課題解決に取り組む姿勢に共感し、行動者になっていく。
私たちは、支援を受けるだけでなく、支援する立場に進化したいと思っています。クラブが地域の信頼を“回路”として共有し、次の挑戦者を送り出す──そのエコシステムを私たちは築こうとしています。
スポーツクラブは今、地域のインフラです。その立場を最大限に活かしながら、社会を前進させ、勝利にもつなげていく。そんなゼブラ型スポーツ経営の可能性を、これからも追求していきます。
「スポーツで世界を変える」は、もう夢じゃない
今、私たちは「社会性×経済性×競技性」が三位一体となるビジネスモデルの実現に手応えを感じています。
その感触は、子どもと企業と地域が“授業”を共に設計し、生活者がその成果に触れ、さらに他の企業が協業を持ちかけてくる──そんな複層的な連鎖に現れています。
もはや「いいことをしているから支援してください」という時代ではありません。 「いいことをしているからこそ、強くなれる」「社会と向き合うから、チャンスが生まれる」 そんな確信を、私たちは持ち始めています。
スポーツには人をつなぐ力があります。その力を信じ、社会のチカラを引き出し、そして勝利する──
この国で、ソーシャルビジネスをしながら優勝するスポーツクラブが現れる。 その最初の事例を、私たちが創り出したいと本気で思っています。
