“知る人ぞ知る”から“新定番”へ 氷彩1984、発売2カ月で1000万本突破の理由

avatar
森田隆文氏

サッポロビール
ビール&RTD事業部 RTDグループ
アシスタントマネージャー

10年間流通営業を経験した後、2021年に商品のブランディングや広告戦略の立案等を行うマーケティング本部に異動。ワイン&スピリッツ事業部で国産スピリッツ商品を担当した後、2024年からはビール&RTD事業部で「サッポロサワー氷彩1984」ブランドを担当。

飲食店で約40年愛されてきた「氷彩」が、缶チューハイとして登場。発売からわずか2カ月で1000万本を突破するヒット商品となった。なぜ、知名度の低かったブランドが、一般市場でここまでの成果を上げられたのか?背景には、食中酒としての価値訴求、ファンの熱量、そして生活動線に溶け込むプロモーション戦略があった。

写真 商品・製品 サッポロホワイトブランデー氷彩

1984年に発売した「サッポロホワイトブランデー氷彩」をルーツとした商品。2025年2月に発売し、約2カ月で1000万本を突破した。年間目標は200万ケース。“知る人ぞ知る”から、家庭で楽しむ“新定番”としての定着を目指す。

店の味が家でも飲めるファン待望の商品発売

━━「氷彩」は飲食店で飲むイメージが強いですが、RTD(開けて直接飲める飲料)としても2025年2月に販売を開始しました。

「サッポロサワー氷彩1984」は1984年に発売した「サッポロホワイトブランデー氷彩」をルーツとし、長年愛されてきたプレーンサワーです。飲食店を中心に長い間親しまれているブランドなので、普段からお酒をたしなむ方々の中には「氷彩」の文字が刻まれたグラスでお酒を飲んだ経験がある人もいるかもしれませんが、正直なところ、一般的な「氷彩」の認知は、あまり高くありませんでした。

ただ、その一方で、根強いファンがいてくださったことも事実です。実際、飲食店のメニューでは「生ビール」や「レモンサワー」など、一般名称で記載されていることも多いですが、「氷彩サワー」とブランド名を表現していただいている飲食店が多くみられるのも、このブランドの特徴です。飲食店様やファンの方のご支持があらわれているものと捉えています。

なので今回、缶チューハイとして初めて一般発売されたことで、「あの味が家で飲める」と、既存ファンがSNSで反応してくれることもありました。このように「知る人ぞ知る」ブランドである「氷彩」ですが、RTDでの販売を始めたことで、これまでよりも愛飲者の裾野を広げることができるのではないかと期待しています。

売上実績も順調に積み重なっていますね。2025年2月に発売し、同年4月には累計で1000万本を達成しました。年間目標としては200万ケースを掲げているので、今はその目標達成に向けて努めているところです。

━━ファンにとっては待望の商品ということですが、RTDとなると対象顧客が飲食店から一般顧客へ拡がることになります。戦う市場が異なりそうですが、なぜ缶での発売を決断できたのでしょうか。

先ほども述べたとおり、たしかに「氷彩」の認知度はそこまで高くありませんでした。それに加えて、飲食店向けの樽販売ではなく、一般消費者へ届けることも「氷彩」としては新たな試みです。これまでとフィールドは異なりますが、近年のRTD市場の傾向を鑑みると、「氷彩」がそこで戦える余地は十分にあると思っていました。

というのも昨今のRTD市場には、レモンサワーや無糖チューハイ、ハイボール、最近ではジンに至るまで、食中シーンに楽しめる多くの選択肢が提示されています。そんな環境のなかに、長年飲食店で提供されてきた事実を持つ「氷彩」が参入することで、市場全体の成長に貢献しながら、ブランドの成長にも繋げられる可能性があると考えました。

さらに、発売前に調査を実施してみてわかったのは、お酒を飲む生活者が持っている、普段から家庭で飲むRTDへの評価や想いです。この調査では、いつも飲んでいる商品に不満を感じているわけではいないけれど、“これだ”というブランドに出会えていないと回答する人も多い傾向にありました。

この結果から、ご家庭で飲むお酒には、ユーザー自身にとってよりよい“定番”が求められているのではないかという仮説が浮かんだんです。「特に不満はないが、もっと愛着を持てるお酒があれば嬉しい」と思っている生活者に向けて、長年飲食店で支持されてきた実績と、生活者がお酒を楽しむシーンとして最も多い食事との相性の良さという「氷彩」ならではの価値は響くのではないかと考えていました。

発売2カ月で1000万本 何を仕掛けたのか?

━━発売後2カ月で1000万本突破という話がありました。好調に推移している理由は、どのように考えていますか。

(改ページ)
やはり、飲食店で長年愛されてきて、ファンがすでに存在していたことは大きなアドバンテージになったと考えています。新商品であることは確かなのですが、発売前からある程度の信頼度とロイヤル顧客がいる状態にあったのが「氷彩」でした。

前述のように、すでに味を知っているファンからは、発売と同時にSNSなどを通じてその熱量が伝わってきました。このようなファンの方々からの拡散によって、これまで「氷彩」を飲んだことがある方だけでなく、初めて「氷彩」を知った方の興味に繋がり、多くのお客さまに試していただけたことがヒットの要因だと捉えています。

実データ 中吊り広告
実データ 梅田ツインビジョンに掲出したティザービジュアル※

(上)中吊り広告。(下)梅田ツインビジョンに掲出したティザービジュアル。生活動線上で「氷彩」を目にするタイミングを増やし、「最近よく見かける商品」として印象に残すことを、狙った。

━━飲食店で飲まれるお酒が缶になると、少し味が変わってしまうことについてネガティブな反応も多い気がします。味については、ファンの皆さんからどのような評価がありましたか。

ファンがいるということは同時に、味への信用が強い人が多いということだと思っています。これまで飲食店で飲んでいた味とギャップがあると、期待に応えられないということにもなってしまいますので、「氷彩」らしさは守りつつ缶に適した中味設計にすることに努めました。

従来の樽サワーとはあえて全く同じにはせず、缶のまま飲むことを想定した中味仕様の調整を行っています。発売に至るまで、複数回の試作を繰り返した結果、缶を実際に飲んだお客さまからも、「店で飲んでいた味」とご評価いただいています。

「最近よく見かける」をつくるメディアプランニング

━━まだ試したことのない新規顧客にはどのようなプロモーションを仕掛けたのでしょうか。

意識したのは、生活動線上のどこかで「氷彩」に触れるタイミングをつくることができるようなメディアプランニングでした。

RTDの認知経路はテレビCMと店頭が二大巨頭と言えるところもあると思っているので、CMはもちろん、お店に足を運んでもらうまでの時間にも「氷彩」の情報に触れてもらえる方法は考えていました。

写真 CM カット
写真 CM カット
写真 CM カット

テレビCM。店頭での露出や初速の売れ行きが、その後の取り扱い拡大に直結するため、テレビCMなどのコミュケーション施策は発売初週に集中させた。

━━流通にはどのような提案を行ったのでしょうか。飲食店では、長く愛されているとはいえ、流通での販売は初めてだと思うので、どうアプローチしたか気になります。

たしかに今回は、流通への提案においても、「認知の壁」を越えることが不可欠でした。飲食店で長く愛されているとはいえ、「氷彩サワー」を飲んだことがない方にとっては、“まったく新しい商品”として映るため、店頭での露出や初速の売れ行きが、その後の取り扱い拡大に直結することになります。

そのため、テレビCMをはじめとしたコミュニケーション施策は発売初週に集中させました。生活動線上で「氷彩」を目にするタイミングを増やし、「最近よく見かける商品」として印象に残してもらうことを狙いました――

本記事の全文は、月刊『販促会議』6月号本誌、もしくはデジタル版(ご購読が必要です)にてお読みいただけます。

advertimes_endmark

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ