約1億IDにのぼる国内最大級の顧客基盤データを保有するドコモとの協業による手応えについて、ポプラの営業本部商品部部長・長崎良彦氏と、ドコモの中国支社スマートライフ部カスタマーサクセス担当課長・長野茂氏に聞いた。
ドコモとの協業で「キャッシュレス決済比率」向上
━━小売業界を取り巻く環境をどう見ていますか。
長崎:昨今の原材料費や物流費の高騰による商品の値上げは深刻な課題です。その中で、いかに「お得感」を提供し、来店頻度や顧客単価を維持・向上させるかが重要になっています。
そうした中、キャンペーンは「お得感」を生み出す一つの有効な手段です。しかし従来はキャンペーンを実施しても、「何がどれだけ売れたか」という表面的な結果しか把握できず、誰が購入したのか、その後の購買行動にどうつながったのかといった詳細な分析は困難でした。そのため効果的な販促施策を打てているのか、手応えを感じにくい状況でした。
ポプラ 営業本部商品部部長 長崎良彦氏
━━そうした背景もあって、ドコモとの協業につながったということですね。
長崎:店舗で「dポイント」を2020年から導入していますが、本格的に協業を開始したのは2022年からです。当時、コロナ禍もあってキャッシュレス決済が急速に普及しており、キャッシュレス比率を向上させたいという意向がありました。そこで「d払いくじ」「dポイント配布キャンペーン」、「レシートクーポンキャンペーン」など、「d払い」と「dポイント」を活用した様々な施策を展開してきました。
2023年からはID-POSデータ※(購買日時、店舗、顧客ID、商品などの情報が含まれる販売時点情報管理データ)の常時連携を開始。これにより、施策の検証や改善がより高度に行えるようになりました。他のキャッシュレスサービスの中には決済情報の取得にとどまり、個々の購買内容までは把握が難しいケースが多くあります。ドコモはID-POSを通じて、ユーザーの同意のもと購買データを継続的に連携しているため、「どのような人が」「何を」購入したかという粒度の高い情報を把握することができます。
※ID-POSデータは、許諾を得たお客様の購買データを個人が特定できない形でドコモに連携される
現在は、dポイントを中心とした施策を展開しており、特定カテゴリーの商品購入でボーナスポイントを付与するキャンペーンでは、対象商品の売上が前週比で110%を超えるなど安定した効果が出ています。
2022年度と2023年度に実施したd払いくじの施策では、未実施月と比較して売上が4%上昇した
さらに、各MD(マーチャンダイジング)担当が「店舗で特に販売を促進したい商品」を選定し、期間限定でポイントを付与するキャンペーンを実施しています。キャンペーンを実施したお菓子が前週比170%という高い売上を記録するなど、より大きな成果につながっています。
長野:ドコモがクライアント様を支援する立場で目指しているのは、単なる「施策提案」ではなく、お客様のLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)最大化を視野に入れた持続的な関係づくりです。短期的な売上向上に終始することなく、「2年後、3年後を見据えていま何をすべきか」をポプラ様と継続的に議論し、データをもとにPDCAを回しています。
導入いただいた施策がどのような成果を生み、次にどうつなげるかという検証と実行の繰り返しこそが、本質的なマーケティング支援だと考えています。
NTTドコモ中国支社 スマートライフ部 カスタマーサクセス担当課長 長野茂 氏
顧客の行動を促すアプリ完結型クーポン
━━来店促進や顧客単価の向上といった観点で、特に手応えを感じた取り組みはありますか。
長崎:2023年から開始した「レシートクーポン」は、非常に手応えを感じています。当社ではキャンペーンを2カ月に1度ほどのペースで実施しているのですが、それ以外の空白期間にもお客様に継続して来店していただくためのフックとすべく導入しました。
レシートクーポン利用のユーザー体験イメージ
この施策は700円以上購入し、dポイントを提示したお客様に対して、アプリ内に50ポイント還元のクーポンが自動で表示される仕組みです。期間中は常にアプリにクーポンが表示されるため、アプリを開けば自然と目に入る設計になっています。開始当初はd払いユーザーへ配布していましたが、会員数の多さや「ポイ活」ユーザーとの親和性を考慮し、現在はdポイントユーザーを中心に展開しています。
加えて、店舗でオペレーションの負荷が少ない点も評価しています。特に当社は無人決済システムを導入している店舗も多いため、アプリで完結できるクーポンは現場にも優しく、運用しやすい施策といえます。
時間帯によってdポイントを追加で付与する施策で来店促進
長野:クーポン発行後ポプラ様と一緒に様々な角度から効果検証を行っています。例えば、来店されてクーポンを使った方と使わなかった方の比較分析を行い、購買行動の差異やそこから得られるお客様の潜在的なニーズを探るためにポプラ様と密な話し合いを重ねています。
クーポンを利用されたお客様の購買データを見ると、利用されなかったお客様と比較して、客単価が上昇する傾向が見られました。また、クーポンに有効期限を設けることで、自然と再来店を促す設計になっており、顧客定着にもつながっているのではと感じます。
レシートクーポンによる施策の流れ
長崎:当社ではあらゆる販促活動において、ROAS(広告費用対効果)を重視しています。原則として、投下した販促費用に対して10倍以上の売上(ROAS1000%以上)が見込めなければ継続しません。そのために継続に至らなかった施策も少なくない中で、ドコモと取り組んでいる施策はすべてその基準を超えています。効果が数値でしっかりと証明されているからこそ、継続して取り組めています。クーポン施策も、ROAS1000%以上という高い成果を維持できています。
「顧客が何を買ったか」までを見える化
━━キャンペーンでの売上のほかに、協業における販促活動への効果や変化があれば教えてください。
長崎:施策の効果検証を精緻に行えるようになったと感じます。多くのキャッシュレスサービスで取得できる「どのような人が・いつ・どこで」という購買データに加え、ドコモデータとのID-POS連携で「何を買ったか」まで詳細に把握できます。そのためより深い分析が可能です。
例えば、キャンペーン参加者の履歴を追い、非参加者との違いを比較することで「この施策がどれだけ新しい売上を生み出したか」を明確に数値化できるようになりました。また、1人のお客様の購買行動の変化を追うこともできるため、前月と今月で購買行動が大きく異なるお客様がいた場合、その理由を深掘りし、次の施策に活かすといったことが可能です。成功も失敗もすべて数値で把握できるので、社内での報告や営業現場への説明もスムーズです。定量的に根拠を持って「この施策を推進すべきだ」と言えるのは大きな利点ですね。
長野:コンビニエンスストアは基本的に定価販売なので、価格による購買行動の変化が起きづらいという特性があります。そのため、施策の効果がダイレクトに購買行動に表れやすく、分析を行う上でも非常に有効な環境だと感じます。
“ひと手間”の体験を可視化する新たなデータ活用
━━現在注力している取り組みや、今後の展望について教えてください。
長崎:直近では、飲料に首掛けPOPを取り付け、そこに記載されたQRコードを読み込むとdポイントが当たるというキャンペーンを実施しました。これは単なる購買促進だけでなく、「ポイントを得るためにひと手間かける体験」がその後の購買行動やロイヤルティにどう影響するかを検証するものです。ポイントを獲得したお客様のIDと購買データを紐付け、長期的な視点でポプラとのエンゲージメントの変化を追っていきたいと考えています。
またドコモデータを活用すれば、広告を見た人が店舗に来店し、商品を購入したかどうかまで追跡可能です。こうした正確なROAS測定により、媒体選定やクリエイティブの判断もデータドリブンに進められます。ポプラだけではなく、どの業態でもマーケティングにおける効果の可視化は必要不可欠であり、逆にいえばマーケティングにおいて「効果測定できない施策には投資しない」時代に入っていると思います。
飲料につけたPOP。QRコードにアクセスするとdポイントが当たる
長野:今後は販促にとどまらず、棚割りの最適化や、天候データとID-POSを組み合わせた需要予測などにも取り組んでいきたいと考えています。例えば、気温の上昇とアイスクリームの売上増加の相関関係を分析し、最適なタイミングで発注指示を出すといった活用も考えられます。現場起点の課題にデータで応える“伴走型の支援”を通じて、これからもLTV最大化を一緒に目指していければと考えています。
ポプラ×ドコモ 協業による施策のポイント
・2022年から協業を本格化。キャッシュレス決済の普及を背景に、ドコモのd払いやdポイントを活用した販促施策に着手。2023年からはID-POSデータの常時連携を実施
・dポイントユーザーを対象に、来店促進を目的とした「レシートクーポン」や、再訪を促す決済直後でのアプリでのクーポン表示などお客様のLTV向上を図る施策で継続的にアプローチを行い成果につなげている。店舗スタッフの負荷が少ないことで施策実施のハードルを下げる
・クーポン施策後の効果検証、利用顧客の分析をポプラとドコモが一緒に行い、次の施策につなげている。そのため、ROAS(広告費用対効果)1000%以上という、ポプラが掲げる販促施策に求める基準をクリアし続けている
・ドコモデータとのID-POS連携による粒度の高い情報をもとに、施策の比較・効果検証・顧客理解が可能になることで、定量的根拠に基づいた改善・施策推進を実施することができる
・今後は天候データとID-POSを組み合わせた需要予測、ドコモのマーケティングソリューショ「Tanagram」を使った棚割りの最適化など、次なる施策を視野に入れている
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