“社外向け”に情報を発信するだけがオウンドメディアの役割ではない。グループ内のインターナルコミュニケーションにおいて抱えていた課題を解決すべく、セブン&アイ・ホールディングスが立ち上げた「アスプレッソ」について聞いた。
※本記事では5月30日発売、『広報会議』2025年7月号の特集企画「オウンドメディア&コーポレートサイトリニューアル 徹底活用」に掲載している記事の一部をお届けします。
セブン&アイ・ホールディングスは2025年1月30日、オウンドメディア「アスプレッソ」の運営を開始した。「news(リアルタイムニュース)」「people(働く人々の想い)」「group(グループ会社の魅力)」の3つのカテゴリを中心に、グループの情報をタイムリーかつ分かりやすく発信している。
読まれていない社内報から脱却
「アスプレッソ」の主なターゲットはグループの従業員とその家族。同社が新しくオウンドメディアをはじめた背景について、立ち上げ時のプロジェクトマネージャーを務めたセブン&アイ・ホールディングス コーポレートコミュニケーション本部ブランドコミュニケーション部の髙木麻利子氏は次のように話す。
「当社にはグループ連結で約15万人の従業員が所属しています。ブランドコミュニケーション部では以前から、グループ従業員に向けてグループ報を制作し、冊子とイントラネットで発信していましたが、閲覧数の伸び悩みに課題を感じていました」。
同社では毎年グループ従業員に向けたアンケート調査を実施しており、その中には「グループ報を読んでいない理由」を聞く項目もある。この調査結果をもとに髙木氏らは閲覧数が伸びない要因を分析。そこから、2つの理由が見えてきたという。
「ひとつはコンテンツの内容の問題です。アンケートの回答から、従来のグループ報で発信している情報が従業員に『自分にプラスになる』と感じてもらえていないのではないか、自分ごと化できるようなコンテンツになっていないのではないかという仮説を立てました。また、コンテンツ量についても、一つひとつの記事が長く、読みづらくなっていたことから、コンテンツを抜本的に見直す必要があると考えました」と髙木氏。
また、もうひとつの課題はユーザビリティの観点だった。セブン&アイグループには、小売事業を展開する企業が多く、店舗で働く従業員が多いため紙の冊子を読む時間が取りにくい。また、イントラネットについては、セキュリティを担保するため、アクセスするためには毎月変更になるログインパスワードとIDを入力する必要があった。そのため、アクセスすることにハードルを感じる従業員が多い傾向がみられていた。
この2つの課題を解決するため、新しいオウンドメディアを設立するプロジェクトが始動した。
グループ報を社外公開した理由
グループ報の刷新として始動した「アスプレッソ」だが、サイトは一般に公開され誰もが読める状態になっており、記事の内容も従業員以外の人にとっても興味深い内容となっている。
「課題であったユーザビリティの向上も、このような形式にした理由のひとつです。また、グループ各社のニュースや取り組みを従業員の間で共有するだけではなく、家族や社外の人に知っていただくことは、従業員のモチベーション向上につながると考え、一般公開しています。まずは従業員とそのご家族に読んでもらえるメディアとして確立し、その後、取引先やお客さまなど、さまざまなステークホルダーへと読者を広げていければと思います」(髙木氏)。
また、サイトの企画・開発時には、「アスプレッソ」をひとつのブランドととらえ、「ブランドカラー」「ブランドシンボル」を設定。オリジナルキャラクターの「めざメー」も制作した。グループ内には多くの企業、事業が存在しているため、既存のものとは異なる新しいブランドの世界観を構築することで、グループ従業員に幅広く浸透させることを狙っている。
「アスプレッソ」のブランドアイデンティティとオリジナルキャラクター。ブランドカラーには、セブン&アイグループのシンボルマークカラーとはあえて異なる色を選択。「進化的」「刷新」「オープンなコミュニケーション」などをイメージするティールをベースに、オリジナルカラー「アスプレッソ
ティール」をつくった。
ブランドアイデンティティについては「アスプレッソ」内の「アスプレッソとは」というページで紹介しており、デザインやカラーに込められた思い、「アスプレッソ」という名前の由来や記事カテゴリの分類なども説明している。
グループ企業と連携して運営
立ち上げ時から現在の記事公開まで、「アスプレッソ」はコーポレートコミュニケーション本部のプロジェクトメンバーを中心に外部パートナーと連携をしながら運営している。運営の方針としてもっとも重要視しているのは「働く仲間の顔が見える」メディアであることだ。
――本記事の続きは5月30日発売の『広報会議』2025年7月号に掲載しています。
広報会議2025年7月号
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