2023年3月期の有価証券報告書から、「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が新設され、サステナビリティ情報の開示が始まった。
また、現在金融庁では、プライム市場上場企業を対象に、時価総額の大きな企業から順次、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)による基準に準拠した有価証券報告書の作成を義務付けることを検討している。時価総額3兆円以上企業は最も早く、2027年3月期からの義務付けが見込まれている。
そうした中、2025年3月期有報では「サステナビリティに関する考え方及び取組」欄が新設されてから3年目の開示を迎えた。サステナビリティ情報の中でも、気候変動と並ぶ重要テーマである「人的資本」をどう可視化し、どう伝えるか。企業ごとの工夫が少しずつ見えてきている。
森永製菓は、人的資本に関する戦略について2024年3月期有報でも図表を用いて説明していたが、2025年3月期有報では図表をアップデート。ビジョンやパーパスとのつながりをより強調した。
経営計画との連動を強調
同社の有報では、「人的資本に関する事項(人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)」中、「③戦略」で「人的資本経営の取組み」を開示している。
2024年3月期有報では「人的資本経営の取組み」として、「2030年ビジョン」を実現すべく、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の促進を経営戦略の中核に位置づけていることを記載していた。この点は2025年3月期有報も共通しているが、さらに以下の文を追加している。
このように当社グループは、多様な人材が尊重され、それぞれの違いが価値として活かされる環境こそが、変化の激しい社会においてイノベーションや課題解決を生み出す源泉であると捉えております。そのため「一人ひとりの個を活かす」というD&Iの根幹となる考え方を基に、2030経営計画と連動した形で、人的資本の価値を最大化するための投資を継続的に行ってまいります。
これにより、D&Iの推進と経営計画の連動を明示している。