ITを活⽤したシステム企画・開発及び運⽤、コンサルティングなどを実施しているシンカは、全国の男女519人を対象に「2025年 カスタマーハラスメント実態調査」を行った。調査対象は、企業に勤めており過去3年間に自身、同僚、部下のいずれかが顧客対応中にカスタマーハラスメントを受けたことがある人に設定。調査期間は2025年6月9日~10日。
効果が期待できる施策、トップは専門チームの整備
過去3年間にカスハラを受けた人に、カスハラの種類を聞いたところ、「長時間の拘束や同じ内容を繰り返すクレーム」がもっとも多く46.6%、「名誉毀損・侮辱・ひどい暴言」が41.6%という結果になった。
また、カスハラを受けた後の行動を聞いたところ、「会社の上司に相談した」が50.1%ともっとも多かったが、一方で「何もしなかった」が11.4%となった。
カスハラ対策として効果が期待できる施策について尋ねたところ、「カスハラ問題に専門的に対応する部署・チーム等の整備」が54.3%、「録音・録画機器の導入」が46.6%と答えた人が多かった。
従業員保護と顧客満足の両立は可能か?
また、従業員保護と顧客満足のバランスについて両立可能かどうかを聞いたところ、154人が「両立できない」と回答。「両立できない」と回答した人に、追加の質問として、両立のために必要な施策について聞いたところ、「クレーム対応のガイドライン整備と明確化」(44.8%)と「カスハラ対応専門窓口の設置」(35.1%)の施策に期待する人が多かった。
「従業員保護と顧客満足のどちらを優先しているか」を経営層(取締役以上)と現場(部長以下)で比較したところ、経営層では「従業員保護を明確に優先しているとやや優先している」が52.8%、「状況に応じてバランスを取っている」が30.0%、「顧客満足を優先」が11.4%となった。
一方で現場は「従業員保護を優先」が27.9%、「状況に応じてバランスを取っている」が35.2%、「顧客満足を優先」が25.8%となった。この結果からは、経営層が考える「従業員保護」の意識と、現場の従業員が感じる「従業員保護(守られている実感)」との間に20%以上の乖離が見られた。
「正当なクレーム」と「カスハラ」の線引きに課題
「正当なクレーム」と「カスハラ」の線引きができているか聞いたところ、「あまり線引きされていない(29.4%)」または「まったく線引きされていない(13.4%)」と感じている組織が合計で42.8%に上ることが判明した。
これは、多くの企業が明確な判断基準を持たず、対応が個人の判断に任されることも要因であると考えられる。企業が従業員を保護する上で、「正当なクレーム」と「カスハラ」の線引きを明確にすることが、喫緊の課題であることが読み取れる。
本調査から、「正当なクレーム」と「カスハラ」の線引きに課題を感じる企業が多く、また、経営層が考える「従業員保護」の意識と、現場の従業員が抱く「守られている実感」の間に大きな隔たりがある現状が浮き彫りとなった。
シンカ 代表取締役社長CEOの江尻高宏氏は、「本調査結果は、経営層がこの現状を真摯に受け止め、自身の『つもり』で終わらせず、現場の従業員の声を深く理解し、具体的な行動に移すことの重要性を強く示唆しています」とコメント。今後も、企業と顧客、そして従業員間の円滑な対話を育む支援を通じて、誰もが安心して働ける社会の実現に貢献していくと述べている。
