この本には、コピーと、コピーに書かれなかったことが詰まっている。
名作コピーの背後にある時代性や社会背景、そして制作者たちの「書かれなかった思い」。
さながら、129本のコピーと、129本の物語。
そこにはつい人に話したくなるような逸話がある。
関わった人にしか見えなかった景色が広がっている。
中でも、書かれた本人が自ら振り返りながら語る、というのがことのほか大きい。
巨人の肩に乗った上に、根掘り葉掘り質問できちゃったような驚き。
社会の空気を言葉に変える、魔法のようなそのプロセスを本人が語ってくれているのだ。
どうしてコピーは人の心を動かすのか。
その問いに129通りの回答が示されている。
助かる。若手だった頃の自分に配達してあげたい。
最近はTCC年鑑にも審査員の選評やイチオシコメントが並ぶようになったけれど、13年前の写経を繰り返す自分には、わずかな受賞コメントだけが頼りだったのだから。
それにしても、コピーは永久不滅なのだろうか。
時代が問い、コピーで答えるというのなら、いつしか旧く映ることの方が健全な新陳代謝にも思える。と、読む前には思っていた。
先人たちの編み出した極上の回路が、次の世代の糧となり、また新たな名作を生む。
記録が破られたとたん、新記録が次から次へと生まれるというスポーツの世界にも近いのかもしれない。優れたコピーライターの足跡は、永久不滅に違いない。

『昭和・平成・令和 時代を超えていまなお心に残る 永久不滅の広告コピー』
宣伝会議書籍編集部編
定価:2750円(本体2500円+税)
ISBN:978-4-88335-625-6
「知っていたけれど、何を意味しているのか」「なぜ名作と言われるのか、わからなかった」コピーや「こういう時代だからこそ生まれた」コピーなど、本書はその広告の背景や時代について知ってもらうことを大事に編集しています。その背景や意図について、実際に制作に携わったコピーライターの方々などによる寄稿(一部取材)を129本収録。時代の流れの中でコピーライターがその商品やブランドとどう向き合い、言葉の力を発揮していったのか。それぞれのコピーにおけるライティングの技や言葉の選び方、広告としての面白さを感じてもらうと共に、一つのクリエイティブができあがるまでの物語として読むことができます。
ご購入はこちらから