「3日間かけて資料を一生懸命作るよりも、3日間会いに来る人の方が好感触。そういう営業手法に回帰するのではないか」と語るのは、広告代理店でコンテンツ戦略に携わり、AIの業務活用について情報発信を行う戦略プランナー・筧将英氏だ。
AIによって、誰もが短時間で一定水準の提案書をつくれるようになった。では、AI時代に営業やプランナーは何で差別化すべきなのか。筧氏に、提案のあり方と営業の価値の変化を聞いた。
営業はより「営業らしさ」を求められる時代に
AIによって、誰でも高速で資料作成ができ、メール業務も自動化できるようになった。それに伴い、提案の内容はより一層均質化が進んでいる。そうした状況で「この人から買いたい」と思わせるのは、結局のところ、その人の誠実さ、熱量、そしてどこまでも一緒にやり切るという覚悟にほかならないと筧氏は話す。
「失敗したとしても最後まで付き合います、最後までやり切りますという熱意や伴走は、やはり人間しかできない部分ですし、それを求められることは増えるだろうと思っています」と筧氏。
AIによって企画や分析の差は縮まりつつある。だからこそ、提案の内容そのものよりも、「この人と仕事がしたい」と思わせる人間としての信頼や熱量が、競合との差別化の主戦場になる。念入りな資料を作るよりも、クライアントの元に足繁く通うような、いわゆる従来の“営業らしさ”が信頼の源泉になると考える。
「最後の30点」より「最初の30%」に時間を使う
AIを使うことで、誰もが60〜70点の資料を短時間で作れる時代になった。では、残りの30点をどう埋めるか。この問いに対し、筧は「資料のクオリティを上げるのではなく、企画の根本となるコンセプト設計に時間を使うべきだ」と答える。
従来の提案フローでは、期間が2週間あったとしても、企画書作成などの作業時間が後半に集中するため、考える時間は実質1週間程度に限られていた。ところがAIの活用によって資料作成の工数が大幅に圧縮されたことで、極論「提案の前日でも資料作成ができる」状態になった。その結果、何を提案すべきかという問いそのものに、より長く、より深く向き合えるようになったのだ。
「提出の前日まで内容をじっくり考えて、これでいけると思ったら一気に企画書に落とし込んでいく、といったことができるようになった」と筧氏。AIによる効率化のメリットは「思考に注力できる時間が増える」点にある。クライアントとのさらなる接触頻度や対話の深化、企画書や提案書の軸をしっかり練ることに人間の時間を使い、その後の資料化はAIに任せる。このプロセスが、最も合理的なワークフローだ。