ナレーションは「わたしにはできないことが、わたしたちにはできる。人の可能性を信じる。」。制作の裏側では、約1000人が海上で巨大な図形を成立させるという、極めて難度の高いオペレーションが組まれていた。
取材に応じたのは、電通のクリエイティブディレクター・アートディレクターの今井祐介氏、プランナーの真子千絵美氏、平田航聖氏、13Inc.のプロデューサーの田中尚樹氏、Moon Studiosの映像プロデューサーの中村広美氏ら。企画の発端から実現までの舞台裏を聞いた。
「次のステージ」を目指すブランドの新たな挑戦
ポカリスエットは長く、若者や青春をテーマにしたコミュニケーションを展開し、ブランドイメージを確立してきた。しかし2026年はブランドとして「さらに次のステージに行く」という大きな方針があった。この課題に対し、クリエイティブディレクターを務める電通の今井祐介氏を中心としたチームがアサインされた。
大きなヒントとなったのは、2025年に大塚製薬が初めてスポンサーとなった東京2025世界陸上での出来事であった。ポカリスエットが販売されていない国や地域の海外のアスリートたちも、大会を通じポカリスエットを知り、評価した上で積極的に飲んでいたという事実だ。グローバルブランドとして近年成長を加速させているポカリスエットだが、海外のアスリートがゴクゴクと飲み干す様子を目の当たりにし、ブランドの次なる展開を、よりグローバルな、大きな視点で構想するようになった。
そこで、クリエイティブチームはポカリスエットを国や地域を越え、「“人類”にとって必要な飲料」という視点で捉え直した。今井氏は、ポカリスエットが46年間、スポーツシーンだけでなく、熱中症対策や体調がすぐれない時なども含め、多様な場面で人の体を前に向かせてきた事実に着目し、その普遍的な価値を「人類の飲料」という言葉で表現できると考えた。
「人がわざわざやる」ことから逆算
さらにチームは、あらゆる表現が容易に生成できる現代社会の状況を洞察。プランナーの平田氏らが持ち寄ったアイデアを基に、このような時代だからこそ、非効率であっても「人がわざわざやること」にこそ価値があり、人はそこに心を動かされるのではないか、というコンセプトを構築した。この思想が、「人の可能性を信じる。」というコピーと共に、企画全体の核となっていった。
企画チームでは、人間ならではのパフォーマンスや挑戦の案を出し合った。具体的なアイデアとして浮上したのが「海の上で地球を描く」という壮大なプランであった。プランナーの平田氏が「海で人がパフォーマンスをする」というアイデアを提示し、同じくプランナーの真子氏が「地球を作ろう」と展開した。ポカリスエットのブランドカラーである青との親和性に加え、電解質や水分補給という製品の機能とも結びつく。さらに、海の上で地球を描くことは、ブランドのグローバルな広がりも象徴できる。
