「自分らしさ」はどこにある? 魅力的な文体を育てる「文体探しの実験室」

自分らしく、魅力的な文章はどうすれば書けるようになるのか。今夏から開講する宣伝会議の新講座「文体探しの実験室」では、受講生それぞれの持ち味を引き出し、「書き心地の良い文体」を見つけるための全7回の実践的なアプローチを行います。単なるテクニックの習得にとどまらず、思考の幅を広げ、読み手を惹きつける語り口を身につけるためのポイントと、そのユニークな場づくりについて講師の瀬戸山玄氏が語ります。

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瀬戸山 玄

ドキュメンタリスト

WORKSHOP写真学校・荒木経惟教室に入塾後、1978年入社の映像制作会社を経てフリーに。編集者に恵まれて80年代から2010年頃まで、朝日新聞文化欄から「Switch」「太陽」「写真時代」「BEPAL」「ラピタ」「室内」「月刊文藝春秋」「暮しの手帖」など各誌で連載担当。2000年からドキュメンタリスト ・記録家として文筆、写真、動画を駆使した活動を開始。技術の伝承と領域横断の新しい道を探る。著書にノンフィクション『東京ゴミ袋』(ちくま文庫)『野菜の時代』(NHK出版)『里海に暮らす』『東北の生命力』「狙撃手、前へ!ある父島移民の戦争」(岩波書店)、写真絵本系に『伝統工芸の名人に会いに行く』計6巻、『見つけた!職人さんの和のカタチ』計3巻(岩崎書店)など多数。

「自分らしさ」って何だと思いますか?

からだから引き剥がそうとしても、剥がれない属性のようなもの。それでいて本人があまり気づいていないことも多いです。これを少しお手入れして味わいのある「特長」になればめっけもんですね。

自分だけの「文体」と出会う

では、本題に入りましょう。夏から開講する私の新しい講座を、「文体探しの実験室」と呼んでいます。

それぞれの人の魅力的な文体を、受講生みんなと一緒に考えながら探るクラスです。各人の提出した課題を細かく添削して、誰がどんな書き方をして、それをどう改めればより印象深い内容になるかを問います。めざす到達目標は、「着心地の良い服を着ると、心も晴れやか!その日一日が身軽で行動的になる。」のと同様に、「書き心地の良い文体を身につけることで、物事を深く自由に語れるようになり、思考力の幅も広がる。」という実感です。そのためには色々な書き方を試みて失敗も味わいつつ、「自分らしさ」をより出しやすい文体に出会うことが大切です。

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「文体」とは何か

さて文体とは何なのでしょうか。それは文章を構成するいくつもの要素、そこを細かく仕分けすると、修飾語の扱い方や句読点の打ち方、そして物語の間のとり方や話の運び、ボキャブラリーの選び出し方と増やし方、さらに臨場感を漂わす印象的な会話体のはさみ込み方など、これらの重なりあいが醸しだす雰囲気のようなものです。つまり物語としての一つの調和、一つの世界観へと読者を導いてくれる、日本語の道しるべとなるものです。

こうした文体の持ち味によって、頭の奥や心の隅に眠っていた様々な記憶を洗い直し磨き出しした文章表現。それはどのようにして他者に伝わっていくのでしょうか?たとえば、少し視点を変えて自分が好きな絵画や音楽が、なぜ魂を揺さぶるのだろうか、と考えると良い文章のイメージが掴みやすくなるかも知れません。

最終的には、そうした文体を身につけた書き手が読者に向けて発信する作り話や体験談のタッチ、スタイルにファンがつくようになり、やがて読んだ側は気になるこの書き手に会ってみたいと思うようになります。文体の魔術にはそんな力が隠されています。

自分のクセを自覚する

全7回の授業や課題を通して、まずは自分の書き方のクセや弱点や長所などを自覚し、心に届くような語り口を身につけること。本人の口癖だったり決まりきった表現や、手垢のついた日本語に陥りやすいのは、なぜなのか?とだんだん気づきを得ます。そこまで行けばゴールまであと一歩。その余分なアカを洗い流し(洗い落としすぎはNG)、自分の身体を通した鮮度の良い言葉を探しだす習慣を身につけることです。

ところで関西において絶大な人気を誇った、今は亡き中島らも氏の作品群を読んだことはありますか?関西人のユーモアのエッセンスを練りこんだようならも氏の作風には、硬軟取り混ぜた比喩法が多く登場します。難しくなりそうな話にすっと出口を示す、彼の巧みな比喩についても時間を割きます。

多様な個性を楽しむ場

あともう一つ、この講座の面白さと切り札は受講生同士が同じ目標に向かって回を重ねながら、互いの表現方法を認め合いつつ、「あの人の文章、好きだな!」とか「このひとの書き方って、ここを直したらもっと心に響くようになるよね!」と気づくことです。どんなに個人的な身の上話や内面を吐露するような告白があっても、この教室に集う小さな集団の中に互いを認めあう「表現としての安全地帯」のようなものが芽生えてきます。つまりこの小さなコミュニティの中で優劣や何かを競いあうというより、もっと鷹揚でおおらかに互いの個性の多様さを楽しんで気づきあうようなものでしょうか・・・。

夏の季語に「短夜・みじかよ」というのがあります。

夜明けが早くてあっと言う間に朝が来ることを指します。人生における学びの時間というのも、どこか儚くてまさに短夜ですね。日本語の学び直しとして自分の文体を探し求めて過ごす7回の授業、一生忘れられない短夜のつもりでカジュアルに、そしてちょっとだけ本気になって試みてください。

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編集・ライター養成講座「文体探しの実験室」瀬戸山玄クラス

開講日: 2026年8月2日(日) 13:00~15:00(または16:00)
講義回数: 全7回
開催形式: 教室(表参道)とオンラインを各回自由選択できるハイブリッド形式
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