第108回全国高等学校野球選手権大会も大詰めを迎えている。20日の準決勝では横浜高校(神奈川)が智弁和歌山(和歌山)に敗れ、決勝進出を逃した。夏の甲子園でどれだけ勝ち進んでも、優勝する一校を除けば、最後に待つのは「悔しい夏」でもある。
そんな高校野球の光と影を「背番号」から描いた広告が、東京メトロ銀座駅・阪神甲子園駅に8月3日から9日にかけて掲出された。ABCテレビ・テレビ朝日系「熱闘甲子園」の広告だ。「あの日、この番号が託された。」をテーマに、背番号1から20までに加え、背番号のない2人を描いた計22種類を制作した。
阪神甲子園駅(兵庫県西宮市)に掲出された広告
1番には「最後の夏を、託された。」、10番には「嬉しかった。でも、悔しかった。」、11番には「控えているつもりは、ない。」、15番には「どうせなら、日本一の伝令になってやる。」。20番には「自分はもう、呼ばれないと思っていた。」という言葉が添えられている。
なぜ、これほど多くの背番号を一つひとつ描いたのか。制作担当者への取材からは、22枚を貫く細かな「人物設定」が見えてきた。
「10番」にはエースになれなかった悔しさ
制作側は22枚について、ひとつの高校チームを想定して制作した。また、背番号ごとにポジションやチーム内での役割、人物像を設定した「ペルソナ」を事前に作成。それをもとに撮影やコピー制作を進めたという。一方で、見る人が自身の経験などを重ねられるよう、「一つのチーム」に見えすぎないことにも留意した。
背番号別メッセージ。ポジションは、編集部の推測を含む
高校野球の背番号は、ファンにさまざまなストーリーを想起させる。チームによって異なるが、例えば10番は、2番手投手が背負うことが多い番号だ。制作側によると、もともとエースだったものの、怪我や不調などを理由に別の投手へ「1」を譲った選手が10番を背負うケースもあるという。
そこで広告の10番には、エースナンバーを争っていた2番手投手という人物像を設定。「嬉しかった。でも、悔しかった。」というコピーを添えた。背番号をもらえた喜びと、エースナンバー「1」を背負えなかった悔しさが同居する。
一桁と二桁でも、描く感情を変えた。レギュラーの背番号には、ポジションや役割を任された「使命感」「責任感」を中心に置いた。一方、今回の10番以降の設定では、レギュラーに入れなかった悔しさだけでなく、努力してようやく背番号を得た喜びなど、より複雑な感情を意識したという。
15番には「どうせなら、日本一の伝令になってやる。」というコピーを置いた。15という番号自体に特別な意味があるわけではないが、高校野球では二桁の背番号の選手が伝令を務めることも多い。プロ野球にはない高校野球ならではの役割であり、「試合に出ていない選手にも役割がある」ことを描くために取り入れた。

