三井不動産は9月9日から、ポケットモンスター(以下、ポケモン)をテーマにした大規模イベント「伝説のポケモンと出会う レジェンドリサーチ in日本橋&八重洲」を開催している。同社のIP戦略を担う商業施設・スポーツ・エンターテインメント本部スポーツ・エンターテインメント事業部長の二井内宏之氏への取材に基づき、その取り組みと背景について解説する。
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「箱貸し」から「街の舞台化」へ、デベロッパーの新たな価値創出
三井不動産は、「エンターテインメントを通じた感動体験の創出」を長期経営方針で重点領域の一つに掲げている。この方針を具現化する組織として、2024年4月に従来の「商業施設本部」を「商業施設・スポーツ・エンターテインメント本部」へと発展させ、その中の一部門として「スポーツ・エンターテインメント事業部」が発足した。同事業部は、これまで同社が手掛けてきた「場所を貸す」ビジネスに加え、IPコンテンツ等と連携して街そのものを体験の「舞台」へと変えることをミッションとしている。
従来、商業施設においては人通りの多い路面などが最も価値が高いとされてきた。しかし、IPをフックにしたイベントでは、ファンは明確な目的を持って来場するため、これまで活用が難しかった裏路地や高層階のスペースにも人を呼び込むことが可能になる。
二井内氏は、IP活用の意義を「今まで収益を生まなかったような共用部や壁面、リーシングもできないような場所が、全然違う価値で使い直せる」点にあると語る。例えば、グッズ販売のポップアップストアは、行列整理のしやすさから、あえて人通りの少ない広いスペースが求められるケースもある。目的買いの顧客を施設の奥へと誘導することで、館全体の回遊性を高め、テナントの売上にも間接的に貢献する。
「伝説のポケモンと出会う レジェンドリサーチ in日本橋&八重洲」のメディア向け説明会で企画意図を語る三井不動産 スポーツ・エンターテインメント事業部長の二井内宏之氏
IPホルダーとの「直接連携」で目指すWin-Winの関係とは
同社のIP戦略の特徴は、広告代理店を介さず、IPホルダーと直接リレーションを構築している点にある。この取り組みは、2021年に東京ドームがグループに加わったことを契機に、コンサートを開催するアーティストのプロダクションやプロモーターとの関係構築から始まった。
従来、商業施設の販促はクリスマスや夏休みといった「館の都合」で企画されることが多かった。しかし、IPホルダーと直接連携することで、彼らのコンテンツ展開のタイミング、すなわち「世の中の盛り上がり」に合致した施策が打てるようになった。これこそが、両者にとってWin-Winの関係を築く上で重要だと二井内氏は強調する。
東京ドーム公演を起点に、世界的なムーブメントを街にも展開する事例は増えている。昨年のoasis(オアシス)の来日の際には、MIYASHITA PARKでコラボレーションが実現した
IPホルダーと直接接触し、彼らが抱えるリアルなニーズを把握できた。音楽プロモーターやアニメ製作委員会は、アルバムのリリースや映画公開、テレビアニメの放映開始といったタイミングで集中的なプロモーションを求めるが、その受け皿となる場は限られているのが実情であった。
三井不動産は、MIYASHITA PARKや日本橋の街全体をメディアとして提供する「街の体験型メディア化」という形で、この課題に応える。自社アセットを使ったプロモーションや物販展開を組み合わせることで、単なる会場提供ではない「街全体で熱量を受け止める」モデルを実現する。これにより、IPホルダーは最適なタイミングでファンとのエンゲージメントを深めるプロモーションが展開できる。一方で三井不動産は、施設に来場する顧客の買い回り効果や、物販ポップアップの売上に応じた歩合家賃や、施設壁面などの媒体費を収益として得る。




