今、多くのブランドが再評価しているのが「物理的な接点」である。その中でも、スマホ画面を越えて生活者のプライベートに収まる「ぬいぐるみ」というデバイスは、いかにして顧客との新たなエンゲージメントを形成するのか。連載「愛されぬいの履歴書」第10回は、丸善ジュンク堂書店が展開するプロジェクト「つんどくず」をピックアップ。読者の79%が抱えるという「読めていない罪悪感」を肯定的な体験へと180度反転させた企画の舞台裏と、全国の店舗・ファン(つみぬし)を巻き込む「やさしい世界」の共創戦略に迫る。
「積読は栄養だから大丈夫」―罪悪感をふっと軽くするインサイトの発想転換
2026年8月29日に全国12店舗および公式ネットストアで一般販売が開始された、丸善ジュンク堂書店オリジナルキャラクターの「つんどくず」。手のひらに乗る「ちいさい」サイズと、しっかり存在感のある「おおきい」サイズの2サイズ展開で登場すると、公式ネットストアでの予約分が即受付終了・完売となるなど大反響を記録した。
「本を買ったのに読めていない」という状態は、人々にとって少なからず焦りや罪悪感を伴うものだ。しかし、本を手に取った瞬間の「知りたい」「この物語に出会いたい」という衝動は、それ自体が尊い体験である。丸善ジュンク堂書店は、この“負の感情”を咎めるのではなく、「本を買って積読が増えるほど、つんどくずがすくすく育つ」という愛おしい物語へと見事に反転させた。この逆転の発想は、企画者自身の日常の小さな気づきから始まったという。
“つみぬし”のひとりで、企画担当の丸善ジュンク堂書店の担当者は、企画背景を次のように語る。
「『積読は栄養だから大丈夫』という、みんなの言い訳のような冗談から始まりました(笑)。自分もたくさんの積読を抱えていて『大好きな本を買うのに罪悪感なんて持たなくていいはず』と思っていたんです。そこから『もし本当に積読をパクパク食べて生きる存在がいたら可愛いよね』と本好きのスタッフで盛り上がり、設定が固まっていきました。『まだ読んでいないけれど、そこにあるだけで愛おしい』という幸せな感覚を温かく肯定してあげたかったんです」。


