CMディレクター/映画監督 岩崎裕介さんが選ぶ10曲 頭を空っぽにして踊れないあなたへ

クリエイターの皆さんに独自のお題を設定してもらいプレイリストをつくってもらうシリーズ企画。今回はCMディレクター/映画監督であり、今年自身初となる脚本・監督長編作品『チルド』も公開された岩崎裕介さんに選曲をしてもらいました。プレイリストはSpotifyでも公開中です。

考え過ぎた頭のまま、踊ればいい

頭を空っぽにして踊れ! とよく言われるが、僕はどうもそれがうまくできない。仕事のこと、映画のこと、さっき人と交わした会話のこと。考えるのを止めようとするほど、頭の中はかえってギチギチになっていく。

だったら脳を埋めてしまえ! というのがこのプレイリストのテーマだ。脳を複雑な音で埋めてしまい、体は原始的なリズムに預ける。頭と体を別々に動かしているうちに生まれる妙な隙間において、良いアイデアは生まれたりする。

選んだのは、トライバルな手触りを持ちながら、素直には踊らせてくれない曲たちだ。

Mulatu Astatke のエチオピアン・ジャズには体を揺らす強さがあるが、聴き慣れない音階が耳を落ち着かせない。Mark Fell & Will Guthrie の『Infoldings 1』は電子音楽家と打楽器奏者による約20 分のセッションで、ガムランや南インドの古典音楽が下敷きにあるらしく、電子音と金属的な打音が即興のようでいて精密に絡み合っていて面白い。

なかでも一番好きなのが、Clap! Clap!の『Universal Modulator (Kujhmak)』。架空の島をテーマにしたアルバムの一曲で、民族的なパーカッションや声が電子音で細かく切り刻まれ、組み直されている。2 分ほどの短い曲だがまさに頭は混乱し、体が高揚する。

CM をつくるときも映画を撮るときも、わかりやすさとわからなさの配合をよく考える。全部わかるものは流れていくし、全部わからないものは届かない。その間で人は前のめりになる。このプレイリストは、その感覚を音で確かめるためのものとも言えそうだ。考え過ぎた頭のまま、踊ってみてほしい。

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いわさき・ゆうすけ

OND° CMディレクター/映画監督。1993 年生まれ。慶應義塾大学文学部卒。会話劇を中心とした、静的で異物感のある演出が持ち味。主な演出作にキントーン、東京ガス、サマージャンボ、JR SKISKI など。2026 年、映画レーベル「NOTHING NEW」から、自身初となる脚本・監督長編作品『チルド』を発表。

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