幅広い業種・業態の企業でデジタルマーケティングに取り組む責任者・担当者が登壇した講演はもちろん、そうした企業の取り組みをサポートするツールや技術を紹介する展示にも多くの人がつめかけ、会場全体が熱気に包まれました。ここでは編集部が特に注目した講演にスポットを当て、そのレポートをご紹介します。
登壇者:岩崎浩(ファミリーマート 総合企画部 マーケティング室長)
国内外で2万2365店舗(6月現在)を展開するファミリーマート。同社は、競争が激化するコンビニ業界にあって、消費者から選ばれ続けるコンビニとなることをめざし、2005年からブランド・コミュニケーション「ファミリーマートらしさ推進活動」に取り組んできた。マーケティング室長の岩崎氏は、「コンビニとしての利便性に加え、お客さまに『気軽にこころの豊かさ』を感じていただけるような存在となることをめざしている」とし、企業そのものへの愛着を持ってもらうことを、同社のマーケティング・コミュニケーションの基本理念としている。
従来は、特に若年層からの支持が高かった同社だが、今後の消費を担う50歳以上の「おとな世代」の獲得をより強化するため、ターゲットの年代を(1)50~65歳の「フォーカスターゲット」、(2)20~30代の「絆深耕ターゲット」、(3)15歳未満の「育成ターゲット」に3分類。2010年から、各年代に合ったコミュニケーション戦略を展開している。
たとえば(1)のフォーカスターゲットに向けた取り組みとしては、おとな向けの商品・サービスの開発や、イベント・社会活動の企画などを行う「おとなコンビニ研究所」を2010年に設立。同研究所のフラッグシップショップとして、代官山T-SITE内に「ファミリーマート代官山店」を展開するほか、TBSラジオで提供番組『生島ヒロシのおはよう一直線 FamilyMartおとなコンビニ研究所』を放送、180万人にのぼるリスナーに向けて、ファミリーマートが考える「おとな文化」を発信。ターゲットの興味・関心事を通して、企業名に触れてもらう機会を設けている。
(2)の絆深耕ターゲットに向けた取り組みとしては、メディア発信力のあるコンテンツとの連携を積極的に進めている。たとえば吉本興業とは2012年に包括契約を締結、吉本興業の動画配信サイトや、所属芸人が出演するテレビ番組、芸人個人のツイッター、店舗などクロスメディアで、多様なコラボ企画を実施している。
また、ソーシャルメディアを使ったコミュニケーションにも力を入れる。フェイスブックは20万人、ツイッターは8万人、LINEは400万人ほどの会員が登録されており(5月現在)、集客・販促、または関係性構築と、目的別に使い分けている。特に2010年からは各種SNSと連携した商品開発に取り組むなど、ユーザー参加型企画を重視している。同社調査によると、フォロワーのLTV(態度変容)は非フォロワーに比べて2.4倍高く、またエンゲージメントの高いフォロワーほどLTVが高いことが明らかになったという。
(3)の育成ターゲットとは、主にCSR活動を通した関係構築を進めており、その一つに、感謝の気持ちを綴った手紙を応募してもらう「ありがとうの手紙コンテスト」がある。審査委員長にフリージャーナリストの池上彰さんを迎えた同コンテストは、4年間で約8万2700通の応募があり、応募者とそのs家族との重要な接点になっている。
こうした「ファミマらしさ」を重視したコミュニケーションを継続することはもちろん、「今後は従来の枠にとらわれない新たなサービスの提供も強化していく」と岩崎氏。買い物不便地域における移動販売車や宅配サービス、自販機コンビニ(ASD)、ドラッグストアとの一体化店舗など、新たなサービスを積極的に打ち出していくという。その背景には、2011年3月の東日本大震災以降、コンビニが人々にとっての“社会生活インフラ”としての役割を再認識いただいたということがある。同社の2013年度の企業メッセージは、「もっと笑顔に、もっとコンビに。」。「心理的にも物理的にも、よりお客さまに近づき、ファミリーマートの価値を感じてもらいたい」(岩崎氏)と締めくくった。
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