市場を取り戻した生活者への新しいブランド価値の提供~キリン一番搾りフローズン〈生〉の開発とマーケティング戦略~
過去10年、数量ベースで横ばい、金額ベースでは縮小傾向が続いている酒類市場。なかでもビールは、発泡酒市場の伸長もあり、その傾向が顕著だ。背景には、人々にとっての「酒」の位置づけ、役割が変化してきていることもある。
若年層にとって酒は「コミュニケーションツール」の一つであり、会話を楽しみながらゆっくり飲むものと捉えられており、一杯目の酒を飲み切るまでにかかる時間は平均20分という調査結果もある。
この状況にヒントを得て開発されたのが「一番搾りフローズン〈生〉」だ。生ビールの上に、-5℃で凍らせたフローズン状の泡を、ソフトクリームのような渦巻状に盛り付ける。シャッリっとする食感・冷たさは30分キープするという。キリンビール・門田氏は、「体感型コミュニケーションを通じて、お客さまとビールを飲む喜びや楽しさを共有しようと考えた」と話す。
こうした新しい飲み方を広く認知してもらうことを目的に、期間限定の店舗「一番搾りガーデン」もオープン。“新しいビールスタイルを提案する、幸せをシェアする空間”をコンセプトに、東京、仙台、大阪、福岡などの全国主要都市で順次展開している。
女性ファッション誌をはじめ、さまざまなメディアに取り上げられたことで話題が広く拡散、若年層はもちろんのこと、来店客の6割を占める女性へのアプローチにも成功しており、期間中に約40万人の来店を見込んでいるという。この新しい飲み方は、中国、香港、台湾、韓国、アメリカ、イギリス、フランスと海外各国でも本格的に展開し、うち台湾・韓国では日本国内同様にコンセプトショップもオープンした。
取り組みの結果、「一番搾り」ブランドに対する20~30代からの評価が向上し、購入率も大きく上昇した。「ポイントは、5つのコミュニケーションツールの掛け算」と門田氏。「SNS×企業サイト×パブリシティ×宣伝・広告×店頭プロモーション。この5つを統一した文脈で設計したマーケティングプランは、商品が売れる空気をつくることができる」という。
つい人に伝えたくなる、直感に訴えかける体感型マーケティングにより、SNS上でも話題が沸騰。「やってみたい」「かわいい」というワードとともに、ツイッターでは1日で800件もの関連ワードがツイートされ、話題の拡散・浸透が加速する結果となった。
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