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コラム

クリエイティブ・イノベーション・ファーム takram のアイデアの生み方と育て方

自らの「見えない足かせ」を外す—制約というハンデを利用する方法—Someone’s Shoes(後編)

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前回の記事「制約というハンデを利用する方法—Someone’s Shoes−前編」

一つ目の効能:普段得られないアイデアを発想する

ある企業と新規事業開発のプロジェクトに取り組んだ。医療領域での新規ビジネスを発想するプロジェクトだ。その際、敢えて「任天堂」社員になりきって発想する。「クロネコヤマト」や「ダイエー」社員のつもりで考える。これはかなり盛り上がった。

特に面白かったのは「Google」チームだ。「Google 製薬」のサービス立ち上げ。薬を全て無料で配布。新薬で「ABテスト」をマス向けに実施! 自社が主語では絶対に発想されない多くのアイデアを得た。

二つ目の効能:無意識に纏っている「足かせ」を脱ぎ捨てる

このエピソードには続きがある。上記のようなグループ分けの後、チームを再設定して Google、クロネコヤマト、ダイエーそれぞれのチームのメンバーをミックスした。各社を「退社」していただき、次は改めて「自社」の社員に戻ってもらったのだ。

擬似的に、異なる企業の出身者が集う特命チームとして発想を継続する(ちなみにこのグルーピングを Cross Polination 方式、アイデアの「他家受粉」を誘発する方式と名付けている)。

すると不思議なことが起こった。新たな「自社」チームでは、まったく相互刺激や新たな発想が起こらないのだ。「うちの役員を説得するにはまず…」「他の事業部との棲み分けを考えると…」「専務のこの間の発言を踏まえて、整合性を取るには…」。突然自社の「制約」を意識しすぎてしまい、新たな発想に急ブレーキが掛かった。

言うまでもなく、この制約は「足かせ」の方である。とある企業とのプロジェクトではこのような状況があったが、実はかなり多くの企業でも同様の結果につながる可能性がある。

ここから新たな果実が見えてくる。Someone’s Shoes は、自らに、またはクライアントに、「無意識的に纏っている足かせ」の存在に気づかせることができる。更に、その足かせを「脱ぎ捨てる」ことを可能にする。この抽象的な果実が意味することは大きい。

言うまでもなく、先のアイデアを実現するにあたり、Google社員であり続ける必要はない。もちろん自社だけでは到底不可能な夢物語だけを語っていては仕方がないが、良質な企画を諦めてしまうには時期尚早だ。

実現できる方法を、視野を広げながら見出すことに繋げたい。自社の足かせに存在に気づけただけでも、「何が我々の挑戦を阻んでいるか?」を客観的に意識することが容易になる。意識できていない無意識的なバイアスの存在に気づきやすくなるのだ。

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