生活者が企業への信頼や公共性まで判断し、企業を選ぶようにもなっている今、商品やサービスを売るための広告表現だけではなく、企業文化やビジョンを伝えていくことの重要性が高まっている。こうしたコミュニケーションに力を入れている2社による講演を紹介する。
登壇者
- 伊藤忠商事 広報部 企画・制作室長 栗原 章 氏
- 住友生命保険 ブランドコミュニケーション部長 藤本 宏樹 氏
「伝えたいことと伝わることは別」だと心して取り組む
—それぞれの企業の“らしさ”やビジョンを生活者・顧客に伝える取り組みについてお聞かせください。
藤本:
住友生命では、“らしさ”を伝えるアウターブランディングの強化、住友生命ならではの価値づくり、インナーブランディングの3つに取り組んでいます。
その中で失敗を通じて学んだ3つの大切なことがあります。1つは「伝える」と「伝わる」は別だということ。生命保険の意義、ブランドの核である商品、住友生命の先進性など伝えたいことはたくさんありますが、絞らないと伝わりません。表現も受け手視点の「伝わる」コミュニケーションを意識しています。
2つめは心が動くこと。企業が発信するコミュニケーションは生活者の時間と空間にお邪魔するものなので、ちょっと笑えたり、ちょっと心が温かくなったりするものにしたいと思っています。
3つめは、ちょっと先行くコミュニケーションです。「この会社は思い切ったことをやるな」と感じてもらえるようなコミュニケーションに挑戦したい。その一つが「1UP(ワンアップ)」という商品CMです。商品のことを説明していないと社内で批判もありましたが、まずは「1UP」という言葉を流行らせて興味をもって頂き、その中で住友生命の新しさを感じてもらえたらいいと割り切りました。

