12月1日、広告主や広告会社、制作会社、媒体社を対象とした「子どもに影響のある広告およびマーケティングに関するガイドライン」の完成記念シンポジウムが都内で開催された。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンの共催によるもの。ガイドラインは両団体や企業、有識者ら17人からなる検討委員会によって1年かけ策定された。広告業関係者や関連団体、メディアなど約80人が聴講した。
本ガイドラインでは、広告表現や手法について配慮すべき12の事項–「執拗な商品・サービスの推奨」「おねだりの助長」「差別、仲間はずれを連想させるもの」「恐怖感・不安感を与える表現」「模倣するおそれのある行為や表現」「規則正しい食習慣を損なるような表現」などを挙げている。
さらに手法としては「過度な景品提供企画の実施」「キャラクター、専門家、有名人などが推奨する場合の留意点」「番組や記事と広告の明確な区別」なども指摘しており、子どもに限らず昨今、広告業界でも議論が続くネイティブ広告などの問題にも通じている。
委員会メンバーの林功氏(アドリーガル・オフィス、元日本広告審査機構 事務局次長)は「特に恐怖感、不安感を与える表現への配慮は重要。猟奇的な事件が起きたタイミングで流れることで連想につながることもある。仮に表現を直せないとしても、媒体変更や時間帯の変更の考慮を」と訴えた。
また、玩具や食べ物など子ども向けの商品に限らず、子どもを含む多くの人々の目に触れるコマーシャルなどについても「同様の基準で表現・手法を考えてほしい。判断力のない子供にとってはコンテンツか広告かが分からない。番組や記事と広告の明確な区別も必要」と指摘している。
このほか、シンポジウムでは「欧州では子どもに対して直接的に広告対象商品の購入を勧める行為は不当とされている」など、諸外国の規制の現状についても触れた。例えば日本では子ども向けアニメ番組の合間にキャラクターの玩具のCMなどが流れるが、このような手法は広告と番組の境目が分からない子どもに配慮し、海外では規制する動きもある。
林氏によれば現在、日本国内で子どもへの悪影響という観点での広告に関する指摘はまだ多くはないというが、「世界的基準で見ると2020年に向けて日本の動向に注目があつまるなか、グローバルスタンダードで見ると問題になる広告が増えていく可能性もある」と提言している。
今後、広告関係者向けにガイドラインに関する出張講座を開くほか、助言などを行っていく方針。登壇した消費者庁顧問の板東久美子氏も「消費者志向経営が注目されるなか、企業の社会的責任が問われている。消費者、事業者、行政が協働しながら対応していく必要がある」と話している。
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