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広告界予測2017:アウディジャパン 井上氏「人材採用・育成への投資が加速」

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広告界が長年にわたり抱えてきた課題が顕在化し、社会全体で大きな問題となった2016年。2017年は、改めてその問題に向き合い、業界全体を健全化しつつ、さらなる成長を図っていくための仕組みの再構築をスタートする年と言えそうです。『宣伝会議』3月号には、7人のアドタイ コラムニストが登場。広告主・広告会社・メディア・クリエイターと異なる立場から、2017年度の広告・マーケティング界の動向を見通し、業界に携わる一人ひとりがとるべき行動を考えました。

※本記事は、『宣伝会議』2017年3月号とアドタイとの共同企画「アドタイコラムニストはこう見る!2017年 広告界動向予測」の一部を掲載したものです。その他の記事は本誌をご覧ください。

井上大輔(いのうえ・だいすけ)氏
アウディジャパン デジタル&CRMマネージャー 

ヤフージャパンプロデューサー、 ニュージーランド航空オンラインセールス部長、 LUX・Dove・Liptonなどを手掛ける世界的消費財 メーカー ユニリーバでのデジタル&eコマースマ ネージャーを経て現職。広告主としては、ブラン ディングからダイレクトレスポンスまでを、業種をま たいで幅広く経験し、メディア企業でのサービス企 画、広告商品企画の経験も持つ。現職では全世界 から選抜されたメンバーとして、グローバル戦略の 策定にも携わる。
井上氏のコラム「マーケティングを“別名保存”する」はこちら

 

「VUCA(ブーカ)」という言葉をご存知でしょうか。

Volatility(変動性)、Uncertainty(不確かさ)、Complexity(複雑さ)、Ambiguity(曖昧さ)の頭文字を組み合わせた造語です。もともとは米国陸軍が考えた軍事用語で、冷戦後の世界情勢の不確定さを表した言葉でしたが、昨今は経営戦略やマーケティングの文脈でも頻繁に使われています。

2017年の業界予測を一言で表現するならば、このVUCAの進展です。
俯瞰して世界情勢を顧みれば、Brexitやトランプ大統領誕生など、世界史レベルの重大事で、予想外の出来事が頻発しています。広告界に目を転じると、業界の雄である電通が官憲から変革を迫られ、去年各種カンファレンスで業界にその名を轟かせたMERYが、年末には一転して閉鎖の憂き目にあったのはご存知の通りです。このような状況の中、広告界はどう変化するでしょう。

まず広告会社ですが、新卒一括採用型の日本企業も、雇用の再整理とまではいかなくても、人材の流動化を余儀なくされるでしょう。中途採用を活性化し、海外のネットワークとの人材交流なども通じて、外部からの専門人材の取り込みが進みます。硬直化した組織は何よりのリスクです。

広告主には、短期的にはそうした変化を広告会社に転嫁するというオプションがあるので、そうした流動化は広告会社ほど急速には進まないでしょう。その分、広告会社の座組みの見直しは必至ですし、その新しい座組みを社内で管理するべく、社員教育に対する投資が旺盛になるでしょう。コンサルなど新しい業態のトライアルも進みますが、人材の流動性はとはいえまだ低く、まずは社内の優秀な人材を有効活用したいことから、その座組みにコンサルを組み込むより、彼らを社内トレーナー的に使うことを好むでしょう。

メディアには当然、より一層の透明性が求められます。ただ、それはすなわちデータの開示を意味するわけではありません。大半の広告主が、データを読み解く時間的な余裕も能力も持ち合わせていないからです。特定の結果をコミットする、実績の信義に関する契約を締結する、など、広告主から見たときに不正の抑止力となるアイデアを、メディア側がむしろ提案できると、大きなアドバンテージになるはずです。

さて、最後に、このような世界に我々マーケター個人はどう挑むべきでしょうか?まさにこの原稿が私にとってそのような試みでしたが、まずは自分なりの予測を立ててみることが第一歩ではないでしょうか。自分の視座をしっかり持つことができれば、それがいわば現実の変化に対する「ものさし」となって、我々をVUCAの混沌の中から救ってくれると信じます。

本記事は、『宣伝会議』2017年3月号とアドタイとの共同企画「アドタイコラムニストはこう見る!2017年 広告界動向予測」の一部を掲載したものです。その他の記事は本誌をご覧ください。