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コラム

社会とアイデアの補助線

「ギブ&テイク」の行く末は、幸福か疲弊か。 — #4 give&givenの法則

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【前回の記事】「フィルム写真が“インスタ映え”する本当のワケ。 — #3懐かしい未来の法則」はこちら

ビジネスは、ギブ&テイク。お互いの利害関係を一致させてメイクマネーするのが仕事だし、大人の関係だよね。そんなの当たり前でしょ?と思うかもしれません。でも本当に、当たり前なのでしょうか?とも思うのです。

今回はそんな疑問を、僕が参加した「郡上カンパニー」という取り組みで実際に起きていたことを出発点にお話できたらと思います。

移住する前に“移住者のように深く関わる”郡上カンパニーって?

プロジェクトサイトはこちら

郡上カンパニーとは「根っこのある生きかたを、つくる。」をコンセプトに、岐阜県・郡上(ぐじょう)市が2017年からはじめた移住促進プロジェクト。政府が掲げる地方創生のもと、いま地方では様々な移住促進施策が実施されていますが、ここ郡上市では“現地の人がパートナーとなって都市部の人と事業を一緒につくる”という、雇用創出と移住促進が一体となった取り組みにチャレンジしています。

僕はその中の共創ワークショップというものに第一期生として参加しました。というと、えっ移住するの?となりますが、そうではなく。面白いことに、郡上市はこの取り組みを本格化させる前身として「参加費無料、さらに移住しなくてもいいから現地の人と一緒に事業つくれるか考えてみない?」という、“現地を知る”と“現地に移り住む”の間に“移住者のように現地へ深く関わる”というステップを用意してくれたんですね。

そこからもし事業アイデアが生まれればチャレンジを、ということだったので、良い経験にもなるし、正直オイシイ話だなあと思いながら参加してみたのでした(なお現在は、そんな過程を経て生まれた12の事業が、移住を前提とした3年間の創業プロジェクトへの参加メンバーを絶賛募集中です)。

とにかく“ギブ”されまくる関係から生じた、戸惑いと変化。

(郡上市内の桜守の方々。僕は「桜」をテーマに事業を考えるチームに)

第一期生の参加メンバーは30人弱、男女比はほぼ均等ですが年齢層は20代から60代までとかなり幅広め。そんなデコボコのメンバーが、2017年9〜12月までの約3ヶ月間の土日をつかって計12日間、郡上と東京を行ったり来たりしながら事業を考える、というかなり密度の濃いプログラム。

まず驚きだったのが、プログラムの初回で郡上を訪れた際のスケジュール。最初から事業にアサインされたり考えたりするのかなあと思ったら…

水や自然とともに暮らす郡上八幡市内の街並みをみんなで散策したり、

石徹白という山奥に連れて行かれて厳かな神社やその近くで営む洋品店を覗かせてもらったり、

和良という地域では美味しい鮎や緑美しい自然に触れさせてもらったり、

とにかく郡上の人・自然・文化の魅力にただ触れて浸る、2泊3日の弾丸ツアーが敢行されたのでした。その過程で、現地で事業化を目論むパートナーの方々ともお話させていただきながら、最後に満を持して自分がどのプロジェクトに関わりたいかを名乗り上げるという流れで進んでいきました。

そこから計8つのプロジェクトが動き出すことになるのですが、初っ端から敢行されたツアーの濃さ、行く先々で受けるおもてなしの数々には驚きました(僕は風邪で参加できなかったですが、後日夜の川に入って魚を獲り、川辺でドラム缶風呂に入るだなんてオマケも)。

その後も至れり尽くせりで現地の方々にフォローいただき、事業化に悩んでいるときには「ワークショップでは“人生を変える出会いをつくる”ことを一番大切にしたいから、無理して事業にしなくていいよ」とまで言われてしまい、正直なところ「えっ、大丈夫?」と戸惑いの連続…。

言い換えるならば、とにかく篤い信頼と居心地の良い環境をまず与えられまくる(ギブされまくる)ことから始まった関係、とでもいいましょうか。僕を含めた都心部からの参加者には、最初は少なからず「この機会を利用(テイク)して良い事業をつくってやろう」といった下心もあったかもしれません。でもギブされまくるうちに、そんな姿勢でいるのは恥ずかしいと思うようになり、やがて自らが差し出せる精一杯で何か貢献したいという気持ちに変化していきました。

次ページ 「「take&taken」は疲弊を生み、「give&given」は幸福を生む」へ続く