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コラム

アスリートとつくる、熱量の高いファンのコミュニティ

アイデアに「翼を授ける」 レッドブル流のソーシャルイノベーター支援とは

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前回、アスリートがレッドブルブランドについてのメッセージを自然に発信したくなるような環境をどうつくってきたかについて書いたが、ブランドのインフルエンサーはアスリートに限らない。レッドブルというと、スポーツのイメージが強いと思うが、実は様々な国々でソーシャルイノベーターを輩出し、社会課題を新たな切り口で解決し明るい未来を築くための試みを行っている。知名度の低いスポーツのシーンを広げるのと同様に、ソーシャルイノベーションを小さなところから起こし、周囲へ社会全体へと広げる後押しをしている。先日「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA」というイベントで、レッドブルのソーシャルイノベーションプロジェクトを構想し主導してきた、10年来の元同僚であるラルカ・シミックと対談する機会があった。

「ソーシャルイノベーターは、アスリートやアーティストに匹敵する力を持っている。水があまりない地域に水を引いて技術的な問題を解決したり、リサイクルで循環を保てる経済を進めたり、といった取り組みはクリエイティブで、ソーシャルイノベーターは尊敬される対象になっているように感じる」と彼女は言う。まずはソーシャルイノベーションの取り組みを始めるにあたって何が重要かについて、彼女が話してくれたことを振り返りながら、ブランドがソーシャルイノベーターとともにコミュニティをつくっていくことについて、今回は考えたい。

「どうやって」実現するかを共に考え、社会課題を解決する

Social Innovation Week Shibuyaの様子
クレジット:Future Design Shibuya

「ソーシャルイノベーションとは、世界の様々な問題を解決する取り組みです。ジェンダー問題、環境問題、貧困問題などありますが、いずれも目的があり、その目的を達成するための試みです。基金などの仕組みを作って後付けで目的を決めるものではありません。昔ながらのチャリティー活動は、活動はしても考え方を広める視点が欠けていました。ソーシャルイノベーションはしっかりとストーリーを伝える活動であるのが特徴です。世界にはいろんな問題があり『自分たちは日本にいて背景や文化も違うから問題意識を共有できない』と言われがちです。しかし外国人だから理解しあえない、男性は女性より強い、貧しい人は怠け者といった意識こそが問題の原因になっています。ソーシャルイノベーションは、こういった意識の根本も解決していこうという活動です。
 
物事を変えていくための取り組み方には、二つの要素があります。一つ目は小さいことからとにかく始めてみること。二つ目は、多くの人たちに自分たちの考え方を理解してもらえるよう話し方を工夫をすることです。一つの地域で起こしたことが、世界を変えるだろうかと思うかもしれませんが、たとえ小さな取り組みでも、お手本になることを起こせば、どのような効果があったかを定量的に評価・分析でき、それが少しずつシステムを変え、信念の実現につながっていきます。規模は最初の段階ではあまり重要ではなく、ストーリーが明確で問題意識がはっきりしていれば、変化は起こせると私は信じています。

ソーシャルイノベーションの考え方はレッドブルの在り方と共鳴するものがあります。レッドブルも最初は小さな会社で、ブランドの力も弱いものでした。広告に使える費用も少なく、イノベーティブにならざるをえなかったのです。結果として、コンテンツマーケティングやイベント、インフルエンサーによるコミュニケーション活動など、今では当たり前となったものを初めてやる会社となりました。レッドブルの成功要因として『なぜ(WHY)』を常に考えながら活動してきたことが挙げられます。なぜこの商品が存在するのか、なぜこの場でみんなが情熱を持って働いているのか、そういったことを考えながら、アイデアが生まれてきました。もう一つの成功要因は、『何を(WHAT)』ではなく『どうやって(HOW)』を重視したことです。あるコミュニティで何か取り組みをするとして、単純にスポンサーとしてお金を出すだけでなく、その人たちと一緒に環境を整えてきました。インフルエンサーやシーンを中心に人間関係を構築し、多様な人々に参加してもらい、理解を広めながら活動を行ってきました。

ソーシャルイノベーションをするにあたっては、この『なぜ』『どうやって』を先に考えるのがいいでしょう。『何を』は必ず後からついてきます。やりたいことのビジョンを持ち、長い時間をかけてどんな変化につなげていきたいのか、目的・信念を持って取り組むこと、そして関係者とどうやって協力しあうかを考え、小さなことから目的に向かって邁進していくことが大切だと思います」

次ページ 「ソーシャルイノベーターのアイデアを社会全体へと広げる後押し」へ続く