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渋沢栄一起用の「タレント広告」? あえてジャストでないタイミングを狙った元日広告の舞台裏

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2月14日から放送が開始した、NHKの大河ドラマ『青天を衝け』の主人公である渋沢栄一。「近代日本経済の父」と呼ばれる渋沢は大河ドラマのモデル、さらに2024年からは新・1万円札の図柄にも起用されるなど、注目が高まっています。
そんな歴史上の人物が、2021年の正月広告に登場。この広告の狙いや背景を、コピーライターの谷山雅計さん、アートディレクターの水口克夫さんに伺います。

1月1日の日本経済新聞、朝日新聞、読売新聞の全30段、西日本新聞、中日新聞の全15段広告に、2021年注目の人、渋沢栄一が登場しました。広告主は学校法人先端教育機構で、同法人が開講する2つの大学院「事業構想大学院大学」「社会情報大学院大学」の姿勢を示す、ブランド広告です。

この広告を手掛けたのが、コピーライターの谷山雅計さん、アートディレクターの水口克夫さんです。なぜ、いま渋沢栄一を起用した広告を企画したのでしょうか。お二人に話を聞きました(本文中・敬称略)。

—渋沢栄一を起用した広告の企画の狙いを教えてください。

谷山:これまでも事業構想大学院大学の広告には携わってきましたが、今回は正月広告。しかも全15段という大きな枠。水口さんと正月らしい特別なことができないだろうか?という話をしていました。そこで水口さんから提案してもらったのが、「渋沢栄一アンドロイド」を起用した広告の案です。

2021年は渋沢栄一さんをモデルにした大河ドラマが始まることになっていたので注目度は高い。でもコロナの影響で前の大河ドラマの終了が遅れ、1月1日のタイミングでは、まだ『青天を衝け』は放送開始前。お札の顔としての話題も、発行されるのは3年先なので、そこまで盛り上がっているわけではない。あえて、ジャストすぎないタイミングがよいのでは、という話になりました。

話題性ということだけでなく、変化の時代の中で数多くの発想を生み出し、形にしてきた渋沢栄一さんは、自分の頭を使ってモノを考え、そして動く。事業構想の大切さを語るシンボルとしても合っていると思いました。

水口:広告のコンセプトは、谷山さんにお話をいただいた通りなのですが、実はこの広告にはいろいろと撮影裏話があるんです。今回、起用したビジュアルは渋沢栄一さんのアンドロイドです。渋沢さんの出身地である埼玉県・深谷市にある「渋沢栄一記念館」に、このアンドロイドが設置されています。見学に行ってみたら、ひっきりなしに来場者が来ていて、大変な人気。そこで撮影のためと言えども、アンドロイドは動かすことができず、1日の最後の見学が終了し、記念館が閉館になるまでの1時間で撮影を終わらせるという条件付きで許可をいただけることになったのです。

僕は、“アンドロイドをアンドロイドとして”撮るのではなくて、現代に甦った渋沢栄一というイメージの写真にしたかった。そこで撮影をお願いした高柳悟さんにもまるで人間のように見えるライティングでお願いしていたのですが、撮影できる時間も含め、現場に行ってみるとなかなか厳しい状況でした。

谷山:ところが、ここで思わぬつながりがあったんですよね。

水口:高柳さんは、深谷市の隣の本庄市の出身。話していたら、「そういえば、高校の同級生に渋澤君という子がいたな…」と言い出すんです。館長さんは渋沢栄一の承継者で、お名前は渋澤さん。話してみると、高柳さんと館長の渋澤さんが高校時代の同級生だったことが判明して…。そこから話が弾みました。結果的に、当初の予定以外の時間帯にも撮影を許可していただき。高柳さん、渋澤さんともに郷土の名士の魅力を世の中に発信したいという情熱で意気投合したようです。

谷山:僕の事務所のテラスからは国際的な会議場が見えるのですが、実はこの敷地は渋沢栄一さんの都内に6つあった私邸のうちのひとつだそうで。なんだが、縁がありますよね。

—お二人は2つの大学院について、どんな印象をお持ちですか。

谷山:僕は事業構想大学院大学で過去に2回、ゲスト講師として講義をしたことがあるんです。そこでお話したことは、僕が普段、講師をしている「宣伝会議コピーライター養成講座」とそう変わらなかったのですが、実際に自分でビジネスを興そうとしている人たちが書くコピーは面白みがありましたね。そのときに、事業構想を学ぼうとする人たちが集まっている場自体が非常にユニークだなと思いました。こういう社会人のための学びの場って本当はもっと一般的にあってもいいんじゃないかな、と思います。

水口:僕もHotchkissで「Issue Creator」を世に送り出すための講座を開講していますが、昨年9月からオンラインに移行。オンラインになったらラオスから参加をする人も出てきて、今の社会の状況を変えたいと志を持っている人はたくさんいますよね。

—学校法人、大学院のコピーを考える際の難しさはありましたか。一歩間違えると、上から目線になりすぎたり、逆に迎合しすぎてしまったり。バランスが難しいな、と思ってみていたのですが。今回のコピーは、渋沢栄一を話者として想定したのでしょうか。

谷山:話者になるというのとは、違います。基本的には、事業構想大学院大学、社会情報大学院大学からのメッセージとしてコピーを考えています。ただ、広告で語られていることは、渋沢栄一さんの考えに近しいものがあるのではないか、と思います。そこで、ある種のシンボルとして起用させてもらいました。

最近の大学の広告には、よくできているものも多いと思うのですが、あえて従来の大学の広告のイメージから外したクリエイティブが多いように思っていました。そこで今回の正月広告では、あえて全然外さない。両大学院の姿勢をストレートに表現しています。

コピーは、王道なのだけど「渋沢栄一アンドロイド」というけれんみが加わったことで、存在感を高めることができたのではないかな、と。

水口:これは一種のタレント広告ですよね。しかも一番よいタイミングで、起用できた。

谷山:タレントさんと違って、あまりお金もかかりませんから。ナイスキャスティングでしたね。

スタッフリスト

CD+C
谷山雅計
AD
水口克夫
D
モリユウスケ
C
水野百合江
P
高柳悟
レタッチ
foton

ECD:エグゼクティブクリエイティブディレクター/CD:クリエイティブディレクター/AD:アートディレクター/企画:プランナー/C:コピーライター/STPL:ストラテジックプランナー/D:デザイナー/I:イラストレーター/CPr:クリエイティブプロデューサー/Pr:プロデューサー/PM:プロダクションマネージャー/演出:ディレクター/TD:テクニカルディレクター/PGR:プログラマー/FE:フロントエンドエンジニア/SE:音響効果/ST:スタイリスト/HM:ヘアメイク/CRD:コーディネーター/CAS:キャスティング/AE:アカウントエグゼクティブ(営業)/NA:ナレーター